ラグビーリパブリック

フランスの名レフリー、ポワット氏が国際試合から引退。

2021.11.19

2019年のラグビーワールドカップでもレフリーを務めたロマン・ポワット氏(Photo: Getty Images)


 フランスのレフリーのロマン・ポワット氏が、11月7日のスコットランド対オーストラリアの試合を最後に、国際試合のレフリーから引退した。2007年のモロッコ対ナミビアにスタートして以来、3度のワールドカップ(2011、2015、2019)に参加し、さばいた国際試合は72を数える。

 ポワット氏は現在46歳。フランスラグビー協会のレフリーの年齢制限は45歳だが、ワールドラグビーから国際試合のレフリーに選ばれている間は特例が認められる。2019年にワールドラグビーと年齢についての話し合いがあり、定められた基準を満たすことができればという条件で2023年ワールドカップ自国大会を目指していたが、かなわぬこととなった。「残念だが受け入れなければ。退くことを知らなければならない」とポワット氏。

 最後の試合を終えた後、レフリーのロッカールームを訪れたオーストラリア代表のマイケル・フーパー主将から、アボリジニの民族楽器のディジュリドゥが贈呈された。「とても感動した。スコットランドの選手も温かい言葉をかけにきてくれた。こんなに多くの人から労いの言葉をかけてもらえると思っていなかった。僕たちの仕事も嫌われてはいないんだね」と喜ぶポワット氏。

 長いキャリアの中で最も辛かったことは? と聞かれると、「2013年のラグビーチャンピオンシップのニュージーランド対南アフリカで、南アフリカのHOビスマルク・デュプレッシーのイエローカードが2枚になり退場させたことだ」と言う。「最初のイエローカードのジャッジは正しくなかった」と自身の過ちを認める。その後、国際試合から数か月外れた。

 また、2017年のニュージーランド対ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズの最終戦で、77分にライオンズがPGで同点に追いついた後、ニュージーランドがキックオフしたボールをライオンズの選手がオフサイドで触ってしまった。TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)で協議の結果、アクシデンタルオフサイドと判定、ニュージーランドにペナルティを与えなかったことも物議を醸した。「レフリーチームを80分間正しくリードすることができなかった。責任を感じ、自分に腹が立った」

「しかし大切なのは、そこから立ち直ること。ミスを認め、原因を究明し、学び、成長し、より正しいジャッジができるようになっていかなくてはならない。各試合のパフォーマンスが、レフリーを続けている間ずっと付いて回る。各ハーフで見直す箇所が10見つけられないようなら、レフリーをするべきではない。常に問い続け、向上していかなくてはならない。おかげで人間としても成長できた」と自身の歩んできた道のりを振り返る。

 いい思い出もたくさんある。
「フィールドの内外で築かれるレフリー間のチームワークと友情はかけがえのないもの。またゲームのど真ん中で、数々のハイレベルな対戦に立ち会えたのは一種の特権だ。アシスタントレフリーだったが、2019年の決勝も素晴らしい思い出。また、2011年のハイネケンカップ決勝のレンスター対ノーサンプトンも歴史に残る名勝負だった。まるでフェラーリに乗っているような感覚だった」

「トップ14の試合も大切にしてきた。そこが自分のベースなのだから。今季いっぱいはフランス協会との契約が残っている。トップ14をきれいなパフォーマンスで終わりたい」

 ポワット氏の自己研鑽の日は続く。

2021年11月7日のスコットランド対オーストラリア戦が最後の国際試合となった
(Photo: Getty Images)
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