南半球で開催されてきた2021年のザ・ラグビーチャンピオンシップは、これまで数々の名勝負を繰り広げてきた世界最高峰の二大巨頭、ニュージーランド代表“オールブラックス”と南アフリカ代表“スプリングボックス”の死闘で幕を閉じた。
10月2日、ゴールドコースト(オーストラリア)のシーバス・スーパー・スタジアムでおこなわれた最終戦。勝ったのは、スプリングボックスだった。
グリーン&ゴールドジャージーを誇る2019年のワールドカップ王者は、今大会で3敗を喫し3位が確定していたが、5連勝で最終節を前に優勝を決めていたライバルのニュージーランド代表相手に闘志を燃やし、土壇場の逆転劇を見せ、31-29で制した。
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1週間前におこなわれた両チーム100回目の対戦も歴史的な名勝負(19-17でニュージーランドが逆転勝利)だったが、この日も最後まで手に汗握る、最高峰のクラシックマッチとなった。
先制したのは南アフリカだった。前半6分、ニュージーランドがブレイクダウンでターンオーバーしたものの、自陣深くで展開したところ、HOコーディー・テイラーがパスをキャッチミスし、南アフリカがプレッシャーをかけてボール奪取、つないでCTBダミアン・デアレンディがトライを挙げた。
その後、互いにペナルティゴール(PG)でスコアを動かし、8-3で迎えた13分、リスタートのキックオフボールを南アフリカのFBウィリー・ルルーが落球、ニュージーランドのチャンスとなり、SOボーデン・バレットのクロスキックを右外で捕球したWTBセヴ・リースがタックラーを振り切ってインゴール隅に押さえ、同点となった。
序盤から激しくぶつかり合ったシーソーゲームは、24分に南アフリカがPGで勝ち越すも、ニュージーランドは28分、ラインアウトからのムーブでボールをもらったSOボーデン・バレットが鋭い走りでハーフウェイから中央突破、粘り腰でWTBリーコ・イオアネにつなぎ、大きくゲインした背番号11をサポートした主将のFLアーディー・サヴェアがフィニッシュし、逆転した。
スーパープレーは32分にもあり、ニュージーランドのFBジョーディー・バレットが鮮やかなカウンターアタックを見せ、パスをもらったCTBアントン・レイナートブラウンがゴール左に迫ったが、南アフリカはWTBスブ・ンコシが懸命のタックルでタッチライン外に押し出し、トライを許さなかった。
しかし直後、南アフリカは自陣深くのラインアウトを失敗し、こぼれ球を手にした黒衣のSHブラッド・ウェバーがゴール左隅に突っ込み、ニュージーランドが貴重な追加点を獲得する。
流れを変えたい南アフリカは、ハーフタイム前にPGで得点し14-20で折り返すと、45分(後半5分)にもSOハンドレ・ポラードが確実にショットを決め、3点差に詰めた。
そして52分、南アフリカは途中から出場していたベテランBKフランソワ・ステインの50:22キック(自陣から蹴ったボールが敵陣22メートルライン内でバウンドして外に出たため、マイボールラインアウトで再開)で敵陣深くに入り、何度かタテを突いたあとボールを動かし、WTBマカゾレ・マピンピがインゴール左隅に飛び込み、22-20とゲームをひっくり返した。
南アフリカは58分にもPGで加点。
ライバルを倒して全勝で優勝を祝いたいニュージーランドは、67分と76分にFBジョーディー・バレットがPGで得点し、再びリードを奪ったが、77分、今度はニュージーランドに反則があり、南アフリカにアドバンテージが出ると、途中出場のSOエルトン・ヤンキース(ヤンチース)が敵陣10メートルラインからドロップゴールを決め、再逆転。28-26となった。
しかし、ドラマは終わらない。
リスタート後まもなく、ボールを確保したニュージーランドに対して南アフリカの反則があり、黒衣の15番、ジョーディー・バレットが冷静にPGを決めて再びニュージーランドが1点リードとなる。
これが決勝点になるかと思われた。
だが、残り時間1分を切ってボールキープで逃げ切りを図ったニュージーランドに対し、南アフリカはNO8ドウェイン・フェルミューレンがブレイクダウンで奮闘して相手の反則を引き出し、ラストアタックを得る。
そして、80分経過を知らせるブザーが鳴ったあと、ラインアウトからドライビングモールで敵陣深くに入り、さらにボールを動かし攻め続けた南アフリカに対し、ニュージーランドがオフサイドの反則を犯し、南アフリカはポストほぼ正面でPGチャンスを獲得。これをSOエルトン・ヤンキースが確実に決め、劇的な逆転ゲームとなった。
南半球強豪4か国のレベルの高さを改めて示したザ・ラグビーチャンピオンシップ2021。最終順位は、1位:ニュージーランド代表(5勝1敗)、2位:オーストラリア代表(4勝2敗)、3位:南アフリカ代表(3勝3敗)、4位:アルゼンチン代表(0勝6敗)となった。
激闘を終えたこの4チームは、短い休養をはさみ、数週間後からは北半球での戦いに臨む。