まだまだ男のスポーツのイメージが強いラグビーだけれど、日本のラグビー女子にも、もちろん競技に求める「かっこよさ」があり、目標がある。そしてフィールド外では可愛らしさや、意外な一面も。いつも、なりたい自分に向かって歩を進めているラグビー女子たち。そのオンとオフのギャップを、元ラグビー選手で美容師の木村あおがヘアメイクで引き出します。
協力◎あおさん、みほさん 構成◎編集部
Story 1 角川穂乃花 [横浜TKM・WTB]
「介護の仕事は私の夢でした」
ON:空手の日本トップランカー、楕円球の世界へ
選手プロフィール
つのかわ・ほのか。横浜TKM所属。WTB。164㌢、60㌔。2001年9月10日生まれ、20歳。群馬県出身。東毛ラグビースクール→大泉高校/群馬プライムス→横浜TKM2年目。6月の太陽生命カップ・セブンズシリーズ熊谷大会では、6トライの活躍で大会トライランキング3位に。スピードと強い体幹を生かしたランを最大の武器とするランナー。
私の兄が空手もラグビーもやっていた流れで、私も両方をやるようになりました。空手は5歳から15歳まで続けて、ラグビーは小学校4年生から。中学1年には空手で全国大会で5位に入ることができました。ずっと、自分は空手をやっていくものだと思っていました。それが、中学時代に背が伸びたりでバランスを崩してしまって、思うように動けなくなった。私は、型(かた)競技の選手だったので、それがすごくストレスでした。中3の時、県立大泉高校の練習に参加して、すごく楽しくてまたラグビーをしたいと思い、入学、入部しました。
大泉高校はもともと女子校で女子が多く、農業教育をしている学校でした。椎名雄大先生という監督がいて、女子ラグビーが盛ん。群馬プライムスという連携チームでもプレー、大学生と一緒にできる環境がありました。
高校時代は本当に楽しかった。仲間、先生、周りに恵まれました。同級生のラグビー経験者は、私を含めて2人しかいないチームだったけど、部活が休みの日も一緒に遊んだり、仲よかったんです。
高校では、まず関東代表になってコベルコカップ(高2で出場)に出て、冬の花園でプレーする(U18花園女子15人制で東軍に選出)のが一つの目標でした。それは叶えることができました。ただ、そこですごく緊張してしまって。思うようにプレーできなくて、悔しくて。それが次のステージにつながったかなと思います。その時は自分が思っているよりも落ち込んで見えたのか、試合のあと父(真也さん)が「ここで終わりじゃないから」と、声をかけてくれたのを覚えています。
OFF:おばあちゃん、おじいちゃんに励ましてもらえる!
大学じゃなくて社会人チームを選んだのは、ラグビーだけの理由ではなくて、介護の仕事にずっと憧れがあったから。昔からお年寄りのそばにいるのが好きで、(高齢者施設の)利用者さんの役に立てる今の仕事は、すごく興味がありました。
利用者さんは施設で生活されているので、私たち職員がそこへ通って色々なお世話や、一緒に作業をしたりします。例えば月曜は朝7時15分には「One for All」(建物の名前です)に入って、朝ごはんから一日が始まります。午前仕事、午後が練習。火曜日はその逆……。
職場の皆さんも応援してくれていて、プレーを見てもらえるのはうれしいし、結果を出したい、と改めて思います。あと、利用者の皆さんも私がラグビーをやっているのは知っていて、「試合はどうだった」とか、「がんばってね」とか、声をかけて励ましてくださいます。そういう時に、おばあちゃん、おじいちゃんが笑顔になってくれるのが、すごくありがたいです。
休みは、先輩と一緒に遊んだり、あと映画も好きで横浜でよく観ます。今おすすめは『東京リベンジャーズ』(監督・英勉)です。すごく面白かったので原作も読んでみたいと思いました。
ON/OFF:恩師に「TKMでよかった」と言ってもらえて
今、横浜TKMに所属して2年目です。日本代表選手もいる高いレベルで、ラグビーについてたくさん教わります。高校時代との違いは、トレーニングが充実していること。フィットネス、めっちゃきついです。でも、ずっと続けてきたら、試合で「まだ走れる」と感じることがあります。
この間、高校の先生が熊谷(太陽生命ウィメンズセブンズ・6月)に、わざわざ見にきてくれました。試合の後に、「TKMは穂乃花に合ってる。このチームを勧めてよかった」と言ってもらえて、私も、がんばってきてよかったなーと思えました。
今、仕事でもラグビーでも目標にする人達がいます。ラグビーでは同じチームだった平野恵里子さん(現アザレア・セブン)。WTBで、試合でも練習でも存在感がある。ボールを持ったら、絶対にゲインする。自分の場合は、持ち味はスピードだと思うので、それをもっと生かせるようにしたい。
ラグビーでも仕事でも、学ぶことは本当に多いです。周りの方は立派な大人だなと思う。もう私も二十歳なので、早く皆さんに少しでも追いついて、周りの方、これまでお世話になってきた人に、自分からお返しできるようになりたい。
ヘアメイクを終えて
[美容師・木村 碧]
スポーツをしている女性は、とても美しいと思います。筋力をつけて、食べる物に気をつけて、汗を流してデトックスをしています。そんな女性の魅力を、最大限に引き出せたらいいな、と思っています。
今回、角川さんからは、ピュアな印象を受けました。
その中でも、凛々しさを生かしつつ、ピュアな印象を引き出せるようにヘアメイクしました。
ヘアは、空気を含んだようなエアリーな雰囲気で、柔らかさを出し、その分メイクでメリハリが出るように、ストレートな眉と、長めのアイラインで締めました。
メイクのワンポイントアドバイス
日焼けしている肌に合うように、チークはオレンジ色で馴染むように、高めの位置に入れます。内側からほてったような印象になります。
そして、眉は、とても大事です。
スポーツ女子の「あるある」ですが、まず、眉毛の上の方は剃ってはいけません。シュッとしすぎて高校球児のようになってしまいます、眉山(まゆやま)は残して、眉毛の下の方を適度に整えましょう。
きれいな眉のメイクには基本の目安があります。
眉頭=「小鼻の外側」と「目頭」を結んだ延長に。
眉尻=「小鼻の外側」と「目尻」を、
眉山=「小鼻の外側」と「黒目」を、それぞれ結んだ延長に。
以上の点を結んで眉を描くとよいです!
PROFILE
あおさん
木村碧(きむら・あお)。23歳。横浜・石川町の『FACE。』所属の美容師。ポジションはFL、WTB。高校時代から美容やヘアメイク、メイクへの関心を体現し、ラグビー道と女子道を両立(!)させてきた。高校卒業後も社会人チームでプレー。その後は、かねて目標だった美容師を目指し邁進、プロとなり5年目を迎える。お店には、多くの女子選手が訪れるみほさん
舘林美帆(たてばやし・みほ)。あおさんと高校同期のラグビー部員。東海大ラグビー部でプレーし、バーニーズ・ニューヨーク勤務。ポジションはSH、SO、WTB