この夏、フランス代表は3年ぶりに南半球へ飛び立った。ファビアン・ガルティエHC体制になってからは、南半球の国との初めての対戦になる。対戦相手はオーストラリア。テニスの全豪オープンで話題になったように、ガルティエ・ブルーも2週間の隔離期間を経て、7月7日、11日、17日と10日間で3試合というタフなスケジュールが組まれている。
チームは第1戦目までに隔離期間を終了できるよう、6月21日にフランスを出発。トップ14準決勝の2日後である。決勝に残ったラ・ロシェルとトゥールーズの選手を外して、遠征メンバーの選考が行われた。
「『ランキング1』の選手のうち、13人が休養(ヴァカタワ、ジャリベールのほか、ファイナリストのデュポン、ンタマック、アルドリットゥ、デュランら)、いつもの代表メンバーのうち22人が負傷(オリヴォン、スラン、フィクーなど)。そのため『ランキング2~4』、さらには、これまでのリストに入っていなかった選手まで招集することになった」とガルティエHCは述べた。
招集されたのは42名、うちノンキャップの選手が21名。このメンバーで2チームを作って、1つが1戦目と3戦目、もう一つのチームが2戦目を戦う。「アタックもディフェンスもシンプルに、そこに選手のエネルギーが加わる。エネルギーは今回の大きな選考基準だった」とガルティエHCは続けた。
「この遠征は成功しなければならない」として、25名のスタッフが帯同しており、2019年ラグビーワールドカップの決勝戦を最後に現役を引退した、レフリーのジェローム・ガルセス氏も参加している。「レフリングの進化に適応することが、テストマッチレベルでは不可欠だ」と言う。
隔離期間中の過ごし方については、事前に心理学の専門家とも話し合い、周到に準備をしてきた。グラウンドで練習できるのは1日1度に限られているため、ホテルの敷地内にテントを設置して仮設のウェイトトレーニング室を準備し、駐車場も練習場として使うなど、与えられた状況を最大限に活用。
「通常なら1週間しか準備期間がないが、隔離の2週間のおかげで、しっかりと準備ができた」とラファエル・イバネスGMは話す。
第1戦のメンバーが予定より2日早く発表されたのも「若く経験の浅いチームだから、早く試合モードに切り替えさせたかった」とガルティエHCは付け加えた。
スターティングの15人中、HOガエタン・バルロとFBメルヴィン・ジャミネが初キャップになる。バルロについては「今季カストルでとても素晴らしい活躍だった。この2週間の練習でも、今回メンバーに入っている3人の中で彼が秀でていた。彼は冬にもすでに代表合宿で1週間過ごしているが、その時からポテンシャルを感じていた」と説明した。
今回の選考で最も注目を浴びているのが、もう1人の初キャップのFBジャミネだ。彼は今季2部リーグで優勝したペルピニャンで大活躍して脚光を浴びた。27試合出場、296得点、9トライ、キック成功率84%。スピード、敵のディフェンスを翻弄するラン、正確なキックが特徴とされている。そんなジャミネのプレーに「惹きつけられた」とガルティエ監督は大抜擢の理由を明かした。
フィニッシャー(リザーブ)には初キャップが4人だが、特にガルティエHCが言及したのはラシン92のSHテディー・イリバレンで、「勇敢でスピードがあり、アーティストだ」と評した。
初キャップではないが、デュポン、ンタマック、ジャリベールという絶対的な存在がポジションにいるため、なかなか出場機会が得られない、SHバティスト・クイユとSOルイ・カルボネルにとってもこの遠征は大きなチャンスだ。
「多くの主力を欠いた経験の浅いチームで、惨敗の不安はないのか」という質問に、「試合結果を予想することは難しいが、楽観的でありたい。スターティングのダミアン・プノー、ギャバン・ヴィリエールはランキング1の選手だ。キャプテンのアントニー・ジュロン、アルチュール・ヴァンサン、ディラン・クルタン、ロマン・タオフィフェヌアも遠くはない。選手のキャリアというものは、時には驚くような飛躍を見せる。僕自身、1999年のワールドカップで最初は代表メンバーに入っていなかった。でも負傷者が出て途中招集され、準決勝でニュージーランドに勝ち、決勝で負けた。その後、僕は4年間キャプテンだった。この例を新しく加わった選手たちと共有したい」とガルティエHCは自らの成功体験を交えて答えた。
昨年のオータム・ネーションズカップの決勝戦でも、主力を欠いた若いブルーたちが、予想に反してイングランドを延長戦にまで追い詰めたことは記憶に新しい。フランス出発前日にパリの国立ラグビーセンターに集合し、この代表チームの過去2年間の歴史をショートムービーにして見せ、チームのプロジェクトについて新しく加わった選手たちに説明したという。
選手たちはこの遠征のスローガンをつくっている。「この遠征は証明し、成長するチャンスだから、全力を出す。僕たちの強さは恐れることを知らない挑戦者の心だから、得るものしかない!」
確かに、勝っても負けても、彼らの今後の成長を助けてくれる経験となるだろう。
「ワラビーズは、フィジカルで経験の浅いフランスチームを圧倒しにくるだろう」とガルティエHCは予測する。初めて経験するテストレベルのフィジカルの激しさに、新しいブルーたちがどう応えるのか、今夜の初戦が楽しみだ。