今年4月にシアトル・シーウルヴズへの移籍発表をした山田章仁(NTTコミュニケーションズ)が、6月6日、ユタ・ウォーリアーズ戦に初めて出場した。北米リーグMLR(メジャー・リーグ・ラグビー)では3人目の日本人選手となった山田は、FBとしてフル出場。チームは終了前に逆転を喫し、28-29で敗れた。
「ホーム、シアトルでの試合。向こうはスポーツが生活の一部になっていて、その中でラグビーで街の人たちを喜ばせられる。選手の側の満足度は高いように感じます」
ユタ戦はレギュラーシーズン18節のうちの第12節だった(*)。MLRはその後、東西のカンファレンスでのファイナル、チャンピオンシップ・ファイナルと上っていく。試合後にオンラインで日本メディアとのセッションを行った山田は、朗らかに心境を語った。
うれしかった。
久しぶりに選手として試合のピッチに立ったのはNTTコム所属の2020年2月以来(トップリーグ2020・第5節)。MLR独特のショーアップされた演出の中、「緊張して、マスコットとハイタッチするのを忘れてしまいました!」。
悔しかった。
シアトルは12チーム中、現在11位。山田は契約から入国までに時間がかかり、5月27日に渡米、5日後にはチーム練習に参加して、そのわずか5日後に早速出場、状況が許す限りにおいて最速のデビューとなった。しかし、チームは、後半13点差から終了前に大逆転を食らっての敗北。対戦相手のユタはリーグ3位(試合後順位)の上位陣だった。
新天地、MLRについて、山田はおおむね好感触を得ている模様。
「皆さんが思うよりも多分、レベルは高いと思います。パワーはトップリーグに引けを取らない。演出も華やか。入場から音楽やマイクパフォーマンスのレベルがすごく、観客もBOOとかGOとか、反応がいい」
クラブのオーナーとは、マーケティングやスポーツビジネスについても意見交換をする間柄である山田は、選手という立場を満喫しながら見聞を広めている。選手としてのキャリアについて尋ねられると、前向きに今後を語った。
「選手という立場に賞味期限があることは分かっていますが、今はまだ引退のことはまったく考えていない。昔から、グローバルに活動できる人になりたいという夢があって、今、ラグビーは少しずつそういうスポーツに変わってきました。自分にとっては、ここがスタートぐらいの気持ちでいます。会社で言うなら、研修も下積みも終わって、ようやく一人前に仕事ができるのが、これからです」
MLRチャンピオンシップ・ファイナルは8月1日。メジャーの舞台で、山田がまた走り始めた。
profile
やまだ・あきひと/NTTコミュニケーションズシャイニングアークスWTB。1985年7月26日生まれ、35歳。182㌢、88㌔。鞘ヶ谷RS(5歳-)→小倉→慶大→Honda HEAT(’08-’09)→パナソニック ワイルドナイツ(’10-’18)→NTTコミュニケーションズシャイニングアークス(’19-)→MLRシアトル・シーウルヴズ(’21-)/SRフォース(’15)、サンウルブズ(’16、’18-’19)、リヨン(FRA/’19)。日本代表キャップ25
*ユタ戦の節を訂正いたしました(6/7)