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サントリーは、1トライ6PG1DGも「快勝」! ディフェンスだけじゃない、見せたアタックの圧力。

2021.05.16

要所で攻守に活躍したサントリー中村亮土主将。新旧選手が協働するチーム力には磨きがかかった(撮影:高塩隆)

「後半はプレッシャーを相手にかけていい結果が最終的に得られた」

 サントリーのミルトン・ヘイグ監督は会心、というよりも安堵の表情。しかし雨がちな天候の中でも、サントリーは「らしさ」を発揮した。サントリーがクボタを押さえ込み、26-9で決勝へ駒を進めた。

 5月16日、東大阪市花園ラグビー場でトップリーグ及び日本選手権の準決勝が行われ、初めて準決勝の舞台を踏んだクボタを、サントリーが後半4PG無失点で突き放した。

 序盤から、テストマッチのような重厚なやりとり。序盤はスクラム、ラインアウトで駆け引きと力勝負のやり合いになった。PG、 DGでしのぎを削り、前半33分まではサントリー9-6クボタ。3点を奪い合う接戦だった。

 まず主導権を握ったのはサントリー。前半33分、相手ゴール前の右ラインアウトから、スペースに左へ左へとボールを運んで、最後はWTB江見翔太が両チーム通じて初のトライを決めた(14-6。結果的に両チーム通じて唯一のトライになった)。キックとランを織り交ぜた巧みなアタックが、クボタディフェンスに着実にプレッシャーを与えていた。

「キックかパスは状況の中での判断。クボタ、いいディフェンスのチーム。簡単にゲインできないと思ったのでキックを蹴ってアンストラクチャーを作って自分たちのゲームにもっていった」

 SOボーデン・バレットの多彩なキックでクボタディフェンスの勢いを削ぎながら、機を見てランを仕掛けるチームの判断とスキルはさすが。粘りを見せた守りだけではなく、編み上げたアタックの圧力が、相手を次第に後手に回らせ、サントリーに勢いをもたらした。33分のトライは、たった一つだが、この日勝つのには十分なカンフル剤となり、サントリーのアタッキングマインドに筋を通した。

 14-6で折り返した後半は、じわじわとスコア差を広げたサントリー。スコアは17-6、17-9、20-9、23-9と移り変わった。後半19分、サントリーがさらに3点を加えて26-9で17点差としたところからは、時間と、スコアを睨みながらの勝負となった。2T2Gでもひっくり返らない点差。クボタはまず1トライを目指して必死に攻めてきた。

 しかし、26-9のまま試合は終わった。

 大きくて重いクボタFWを向こうに、サントリーが1対1で決して引かず立ち向かったディフェンス、後半30分過ぎからゴール前で粘られたスクラムで後退しなかったことも、チームの大きな自信になったはずだ。

 指揮官も手応えを掴んでいる。

「最後の20分はハッピーではなかったが。3週間の準備期間がある中で1対1のタックルはフォーカスして取り組んできたところ。キャプテンがしっかりディフェンスで引っ張ってくれた」(サントリー・ヘイグ監督)

 後半35分、クボタは力をふり絞ってインゴールに飛び込むが、グラウンディングが認められず。サントリーのディフェンダーの腕が2本、3本とクボタの持ち込んだボールをくるんでいた。

 磨きのかかったディフェンスに、本来のアタッキングマインド。両方に自信を得たサントリーは3季ぶり王座をかけて、パナソニックの待つ決勝の舞台に臨む。