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フランスラグビー徒然。mars(3月) レ・ブルー、イングランド戦メンバー発表。ケガ癒えたンタマックが初のリザーブに

2021.03.12

顎のケガが癒えて、リザーブ入りのロマン・ンタマック (Photo: Getty Images)

 チーム内のクラスター発生により、2月28日のスコットランド戦が中止になったフランス代表。選手たちに厳しい行動制限を強いながら、ファビアン・ガルティエ監督自らが外出していたことが問題になったが、結果的にフランス政府の「お咎めなし」を勝ち取り、チーム練習を再開。3月11日には、イングランド戦のメンバーが発表された。

◆「お咎めなし」を勝ち取ったファビアン・ガルティエ監督

 フランスの最近のコロナウイルス感染状況は、急激に悪化しているわけではないが、1日の新規感染者数が2万人を下回ることはない。従来型のウイルスより感染力の強い英国型の変異ウイルスが拡大、新規感染の65%を占めている。集中治療室の占有率もニース周辺の地中海沿岸地域と、北部地域では100%を超えており、すでに週末ロックダウンが導入されている。パリとその周辺地域でも80%を超え、政府は危機感を募らせている。

 トップ14の運営母体であるLNRもリーグの感染対策要綱を強化した。陽性になった選手の隔離期間は7日から10日に。チーム内の3人が「従来型」のウイルスで陽性の場合、7日間は6人以下の小グループでの練習になるが、「英国型」で2人陽性の場合は4人以下のグループで7日間練習。「南アフリカ型・ブラジル型」の陽性が1人でも出たら、7日間全ての活動を休止し、チーム全員隔離と、ウイルスの種類に応じた対策をとるようになっている。

 3月5日、ジャン=ミシェル・ブランケール国民教育・青少年・スポーツ大臣、ロクサナ・マラシネアヌ スポーツ担当大臣、そしてベルナール・ラポルト フランス協会会長の三者会談が行われた。その2日前にクラスター発生の経緯に関する内部調査の報告書が、フランス協会から大臣に提出され「ウイルスをチーム内に持ち込んだのは7人制の選手であり、ガルティエ監督に過失はない」と報告された。

 会談後の会見でブランケール大臣は、「感染症対策要綱はしっかり作成されており、きっちり守られていた」と言いつつも、「リスクゼロはないのだから、決して用心しすぎると言うことはない。チーム内での感染対策の徹底を管理する担当者をさらにチームに帯同させる」と付け加えた。ラポルト会長は、「誰も規則を破っていないが、今後はさらに厳しくする」と続けた。

 国内の危機感が強まっている状況の中、最終的に「お咎めなし」を勝ち取ったことは、W杯開催国が南アフリカへ渡りかけた2023年大会を勝ち取ったのと同様、ラポルト会長の功績と言えるだろう。W杯成功=優勝に向けて、政府のバックアップを得たのだ。ブランケール大臣も「ぜひ6か国対抗戦でグランドスラムを達成してもらいたい。今朝の会談はその意図のもと行われた」と述べている。

 イングランド戦のメンバー発表会見、ガルティエ監督が公の場に姿を表したのはアイルランド戦以来のこと。30分の会見のうち、半分はクラスターに関する質問だった。「息子の試合を観に行ったのは本当か」「こういう結果を引き起こし、外出したことを後悔しているか」という質問には、「全ての行動は、ルールを守った中でとられているが、リスクはゼロではない。スポーツ大臣に提出した報告書に全て記載され、内容は承認されている」と繰り返すだけ。「批判されるのも、我々が注目されているから。この2年ポジティブなことを言われてきたのと同じように、批判も受け入れる。それも我々の使命だ」と答えた。

 主力のFLシャルル・オリヴォン、SHアントワーヌ・デュポンら8名は、2月14日のアイルランド戦の後、試合から遠ざかっている。また、スターティングメンバーに定着していたLOベルナール・ルルー、WTBギャバン・ヴィリエールが負傷した。CTBアルチュール・ヴァンサンはコロナの症状が残っており、最後に陽性になったPRウイニ・アトニオはまだ陰性になっていない。しかし、HOカミーユ・シャ、CTBヴィリミ・ヴァカタワ、SOロマン・ンタマックが先週末のトップ14の試合で復帰を果たし、今週代表にも復帰した。

 負傷のルルーに代わってLOで先発するロマン・タオフィフェヌアは、「このチームがスタートした時から全ての練習に参加していて、チームのシステムもよく知っている。グループ内での経験値は大切」とガルティエ監督。
 FLディラン・クルタンについては、「ラインアウトだけではなく、運動量が多く、フィールドプレーも良い。全体で補完できるようにバランスを考えた」と述べた。

 ンタマックが顎の怪我から復帰したことで、誰が10番を背負うのか注目されていたが、イタリア戦、アイルランド戦でも10番を背負ったマチュー・ジャリベールが選ばれた。ガルティエ監督は「彼はオータム・ネーションズカップからずっと先発で、勢いがありパフォーマンスもいい。我々がこのチームのSOに求めていることをしてくれる」と説明した。

「フィニッシャー(リザーブ)で、初めてFWを6人、BKを2人にした。BKにはユーティリティープレーヤーがいる。試合の流れによって、FWをどのように使うかが大切になるだろう」

 FBブリス・デュランは、「日曜日の最初のミーティングで今回のクラスターについての話があったが、その後すぐに切り替えてイングランド戦にフォーカスしている。オータム・ネーションズカップの決勝で、ゲームコントロールの大切さを学んだ。今大会では、レフリーのジェローム・ガルセスに練習に入ってもらい、プレーの中での注意点や、レフリーとのコミュニケーションについてのアドバイスをもらった。大会が始まった時から、イングランド戦がこの大会の節目になると考えていた」と話す。

 イングランド戦は、今回のシックスネーションズだけでなく、2023年W杯フランス大会に向けても、ガルチエ・ブルーが試される、まさに節目の試合になりそうだ。

 今回のフランスチームの平均年齢は25歳、平均キャップ数は19。

シックス・ネーションズ2021
フランス代表/3月13日・イングランド戦メンバー


1. シリル・バイユ(トゥールーズ)
2. ジュリアン・マルシャン(トゥールーズ)
3. モアメド・アウアス(モンペリエ)
4. ロマン・タオフィフェヌア(トゥーロン)
5. ポール・ウィレムセ(モンペリエ)
6. ディラン・クルタン(リヨン)
7. シャルル・オリヴォン(トゥーロン)
8. グレゴリー・アルドリットゥ(ラロシェル)
9. アントワーヌ・デュポン(トゥールーズ)
10. マチュー・ジャリベール(ボルドー)
11. ダミアン・プノー(クレルモン)
12. ガエル・フィクー(スタッド・フランセ)
13. ヴィリミ・ヴァカタワ(ラシン92)
14. テディー・トマ(ラシン92)
15. ブリス・デュラン(ラロシェル)

16. カミーユ・シャ(ラシン92)
17. ジャン=バティスト・グロ(トゥーロン)
18. ドリアン・アルデゲリ(トゥールーズ)
19. シリル・カゾ(ボルドー)
20. カメロン・ウォキ(ボルドー)
21. アントニー・ジュロン(カストル)
22. バティスト・スラン(トゥーロン)
23. ロマン・ンタマック(トゥールーズ)

「お咎めなし」を勝ち取ったファビアン・ガルティエ監督(Photo: Getty Images)