ラグビーリパブリック

ラグマガで振り返る。トップリーグはこうして始まった(2)-スーパーリーグ構想-

2021.02.11

トップリーグ初年度のジャージー。写真はヤマハ発動機(ジュビロ)FB四宮洋平(撮影:桜井ひとし)

 18シーズン続いたトップリーグは2月20日に開幕するトップリーグ2021で幕を下ろす。2003年から始まったトップリーグ。その始まりをラグビーマガジンの掲載の記事から振り返りたい。第2回は「2003年度」からの開始が決まったニュース。当時は「スーパーリーグ」という仮称が定着していた…。

◆第1回(初めて明るみに出た「日本リーグ構想」)

ラグビーマガジン2002年7月号掲載
文◎編集部

国内でも「スーパーリーグ」構想を発表
トップ12チームの総当たり戦に。
詳細は後日も2003年開始決定!

 これまでの地域別のリーグと全国社会人大会に代わって、国内の社会人トップチームを集めた全国規模のリーグ戦が、来年度からスタートすることになった。5月17日に開かれた日本ラグビー協会の定例理事会で決まった。

 理事会後の記者会見で、坪井孝頼・専務理事から発表された「スーパーリーグ」(仮称)の内容は次の通り。

(1)12チーム総当たりのリーグ戦と、上位チームによる決勝トーナメントを合わせて年間が70試合を行う。
(2)参加チームの決定は、今年度の成績に基づいて行う。
(3)参加費用はチームから徴収せず、移動・宿泊費は日本協会が負担する。
(4)坪井専務理事を委員長に、設立準備委員会を設立する。
(5)リーグの詳細は7月末までに決定し、改めて発表する。

 長年の懸案がようやく実現したことで、町井徹郎・会長は「魅力ある試合が増え、強化につながり、そして収益も上がってくれれば」と期待する。確かに、強いチーム、人気のあるチーム同士の試合が多くなるのだから、トップリーグに強化や観客増、普及の面で大きなメリットがあるのは明らか。それだけに、記者会見ではむしろリーグ構造の再編に伴う問題点についての質問が多く出された。

 現行制度では、東日本、関西A、西日本Aの3地域の最上位リーグには計24チームが所属する。このうち「スーパーリーグ」に入れるのは半分だけで、各地域リーグ所属となる残りの12チームは実質2部に落ちる形になる。他の競技では、過去の実績や最近の成績にかかわらず企業チームの休廃部が続いている状況だけに、今回の再編で地域リーグになったチームの休廃部が進むのではないか、という危惧は大きい。これに対して、坪井専務理事は「現在の制度でも、チームは少なくなっている」と、その点は踏まえた上で、現状維持ではなく改革を求めたことを明らかにした。

 また、現在は3地域間の実力に差があり、特に西日本所属チームにとっては、東日本や関西のチームと同じ土俵に上がってのトップリーグ生き残り競争はかなり厳しいことが予想される。しかし、東日本リーグにかつて存在した東北枠のような地域枠を設定する可能性については、坪井専務理事は「それではトップから12チームを集めることにならない」 と否定。あくまで「トップ」リーグを作る姿勢を示した。

 初年度の2チーム選定の具体的な基準は「チームにとって最も大切なことなので、チームへの説明を優先したい」(坪井専務理事)との理由で説明されなかったが、「1年目から特定の地域のチームが入らないことはない」と話していることなどから、議論のたたき台として策定された「スーパーリーグ構想案」にあるように、各地域リーグの成績と、全国社会人大会の成績を合わせて考える方式になりそうだ。入れ替え戦の方式についても、同様の理由から明らかにされなかった。

 2003年度か2004年度か「スーパーリーグの開始時期については理事会でも意見が分かれたが、「どうせやるなら早く」という考えから、来年度のスタートが決定した。リーグ運営の詳細は、これから設立準備委員会で決めることになっているが、解決しなくてはいけない実務的な課題は少なくない。

 例えば競技会場の問題。通常のリーグ戦66試合中約半数は東京圏での実施を予定しているが、秩父宮ラグビー場で現在行われている東日本リーグの試合数は10試合ほど。大学との兼ね合いでこの数字を一方的に増やすわけにもいかず、かといって、地方開催となると「全国社会人大会並みの動員を目指したい」(町井会長)という目標達成は難しくなる。このため、芝の保護のために現在は原則1試合となっている秩父宮の1日の試合数を増やすなどの対策が必要だ。

 日本協会では、こちらも懸案となっている日本選手権改革について、引き続き検討することにしている。記者会見で坪井専務理事は「スーパーリーグ」から漏れたチームも参加できる大会実施の可能性を示唆しており、日本選手権に代わってサッカーの天皇杯のようなカップ戦が導入されることになるかも知れない。

 「トップリーグの後にカップ戦ということになれば国内シーズンが今よりも長くなる。日本代表のシーズンは短くなるかも知れないが、その方が強化につながる」と宿沢広朗強化委員長。まだまだ大きな変化が待ちかまえているようだ。

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