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茶番劇どころか延長にもつれる熱闘! イングランドがサヨナラPGでフランス下しオータム制覇

2020.12.07

サヨナラPGで死闘を制し、歓喜のイングランド代表(Photo: Getty Images)


 ラグビーワールドカップ2023・組分け抽選の1週間前におこなわれた「オータム・ネーションズカップ」の決勝は、“茶番劇”になるどころか、延長にもつれる熱闘となった。

 現地時間12月6日にロンドンのトゥイッケナムスタジアムでおこなわれ、イングランド代表が22-19でフランス代表を下した。イングランドは今年のシックスネーションズ(欧州6か国対抗戦)も制しており、2冠達成である。

■オータム・ネーションズカップの優勝トロフィーを掲げるイングランド代表のファレル主将

 戦う前から、フランス代表は勝てるわけがないと思われていた。
 2023年の自国開催ワールドカップへ向けて強化に力を入れ、今年2月のシックスネーションズ開幕節でイングランド代表を破っていたが、そのときのスターター15人のうち、オータム・ネーションズカップ決勝の登録メンバーに入っていた選手はひとりもいなかった。

 新型コロナウイルスの影響で今年はラグビー界も混乱し、例年のように南半球・北半球の国代表が交流する国際マッチシリーズをおこなえず、臨時的に設けられた「オータム・ネーションズカップ」。
 優勝決定戦に、イングランド代表はけが人を除いたほぼベストな布陣で臨み、先発15人のキャップ数が合計「772」だったのに対し、フランス代表スタメンのトータルキャップ数はわずか「68」だった。10キャップ以上持っていたのはFBブリス・デュラン(30キャップ)だけで、極めて経験が少ない選手たちが名を連ねていた。

 試合登録メンバーが発表されると、そんなチームが欧州王者に勝てるわけがない、「茶番だ」とフランス代表を非難する声があがっていた。

 フランス代表がベストメンバーを組めなかったのは事情があり、現在開催中のクラブリーグ側とフランスラグビー協会との合意により、フランス代表選手はこの秋にあった6つのテストマッチのうち、3試合までしか出場できないことになっていた。コアプレーヤーたちは、コロナ禍で春から秋に延期となっていたシックスネーションズの最終戦を戦い、オータム・ネーションズカップのグループリーグで出番を終えていたから、優勝決定戦には出られなかったのだ。

 それでも、若いフランス代表は奮闘した。

ファーストトライを決めたフランス代表のブリス・デュラン(Photo: Getty Images)

 前半14分、SOマチュー・ジャリベルが突破してFBブリス・デュランにつなぎ、両チーム通じて最初のトライを挙げた。

 ハーフタイム前、ゴールに迫ったイングランドのFWが激しく肉弾戦を仕掛けたが、フランスは鉄壁のディフェンスでゴールラインを割らせず、白いジャージーの男は落球。“レ・ブルー”はピンチを脱出した。

 13-6と、フランスがリードして前半を終えた。

 イングランドは後半もフランスの堅守に苦しみ、キャプテンのCTBオーウェン・ファレルはゴールキック不調で、なかなか波に乗れない。

 対するフランスは、SHバティスト・クイユ、WTBギャバン・ヴィリエールなど、小柄な選手たちも果敢にブレイクダウンでファイトし、チームを活気づけた。

 だが、19-12とフランス7点リードで迎えた後半39分、土壇場で必死のイングランドがラインアウトからドライビングモールでゴールに迫り、止められたが、HOルーク・カウワン=ディッキーが体を半転させてインゴールにねじ込んだ。そして、コンバージョンも決まり、同点となって延長戦に突入した。

 延長は10分ハーフで、どちらかが得点したら終了となるサドンデス。

 延長前半早々、フランスが反則を犯し、イングランドのファレルが敵陣10メートルラインの内側、ほぼポスト正面からPGを狙ったが、失敗。イングランドにいやなムードが流れた。

 互いに死力を尽くし、熱闘はトータルで90分を超えた。

 そして、延長後半4分、イングランドのSOジョージ・フォードが敵陣左奥にボールを蹴りこみ、確保にいったフランスのWTBアリヴェレティ・ラカに対し、チェイスした白いジャージーのランナーたちがプレッシャーをかけた。まもなく、LOマロ・イトジェがブレイクダウンでからみ、フランスの反則を引き出した。

 PGチャンス。

 この試合それまで、ゴールキック8本のうち半分を外していたファレルだが、約45度の角度から放ったショットは、決まり、サヨナラPGとなって決着がついた。

 苦しい戦いを勝ち切ったイングランド代表と、多くの若い選手たちが貴重な経験を積んだフランス代表。2023年のワールドカップへ向け、両チームにとって大きな一戦となった。

オータム・ネーションズカップの優勝トロフィーを掲げるオーウェン・ファレル(Photo: Getty Images)
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