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偏愛・食い込み系記者の出場国プレビュー! ラグビー8カ国対抗戦 オータム・ネーションズカップ【イタリア/フィジー】

2020.11.20

ウェールズから代表入りしたSHバーニー(Getty Images)

フレッシュなイタリア。結束を高めて

 2019年W杯後、オコナーヘッドコーチの後釜に据えられたのは、南アフリカ出身のフランコ・スミス。2020年シックス・ネーションズのイタリア代表HCに任命された。図らずもコロナの感染拡大で大会は中断になり、その価値を示すのに許された機会は3試合のみ。スコットランド戦の無得点での敗戦も含めイタリアは全敗したが、スミスヘッドコーチは6月に、2023年までの新ヘッドコーチの座を確約された。

 7月にようやく南アフリカのロックダウンから戻ると、すぐにフィットネスの向上、より激しい練習、より高い集中力を目指して動き出した。彼は言う。

「より多くボールを持ち、激しいタックルをし、ラックからいち早く立ち上がり、ボールを長くキープしなければならない。より集中力高く、より当たり強くならなければ」

 イタリアはこの秋、ダブリンでアイルランド(50-17)、ローマでイングランドと対戦(5-34)。シックスネーションズの残り試合である。そして新しいネーションズ・カップのスコットランド戦、フィジー戦、フランス戦、そして最後に他プールとの順位決定戦を戦う。

 7週で6試合を戦う大きな試練となる。イタリアが過去に経験しなかったことだ。ただ、新ヘッドコーチにとっては長い期間国際舞台の選手たちと活動をともにする貴重な機会となる。

 チームには多くの新顔がいる。グロスターのステファン・バーニーは20歳、イタリアの祖先を持つウェールズ人。ローマでのキャンプ初日の10月12日にコロナ陽性になっていなければ、アイルランド戦でSHの先発間違いなしだった。11月に代表デビューする可能性が高い。指揮官が求めるリズムと継続性をチームにもたらす、俊敏でスピードあふれる選手だ。

 同じく20歳、ベネトン・トレヴィソのパブロ・ガルビシは新しい名前だ。U20イタリア代表SOは、2020-21シーズン最初のプロ14の2試合で観る者を魅了した。10番のジャージを着て、ベルファストでアルスターを向こうにトライを挙げ、翌週はリーグ王者レンスターと堂々渡り合った。バーニーとガルビシは、イタリアの新しい司令塔になろうとしている。

 彼らの他、21歳のフェデリコ・モリはパワーあふれるCTBで、スピードとパワーを兼ね備える。叔父ファブリシオは1999年にセビリアで世界チャンピオンに輝いた400㍍ハードラーだ。

 プレミアシップはワスプスのスター、マッテオ・ミノッツィもBKに加わり、イタリアの攻撃は期待に満ちている。FWの課題はその攻撃力をお膳立てできるかだ。NO8でこちらもグロスターのジェイク・ポレドリは、24歳の新しいFWリーダー。若いイタリア代表は、経験を積みながら将来を見据えている。

次世代フィジー、NZ出身指揮官のリレー

 私が同行した2019年W杯のフィジーは、釜石でウルグアイにアップセット負けを喫するなど、決勝トーナメント進出を逃し大きな失望に包まれた。再起を図るフィジーは今年1月、新指揮官を招へい。2015年大会のスコットランド代表ヘッドコーチ(HC)のニュージーランダー、ヴァーン・コッターがタクトを振る。やはりNZ人の前指揮官、ジョン・マッキーが6年をかけて構築した「トータルラグビー」の文化を生かし、次なる名将が「フライング・フィジアン」のポテンシャルを引き出そうとしている。

NZ代表の次期ヘッドコーチ候補にも名前が挙がっていた。フィジーのヘッドコーチ、ヴァーン・コッター(Getty Images)

 10月中旬発表の32人スコッドは9人が国内、他はフランスなど欧州ベースの選手たち。2019年大会メンバーは13人と、大きく入れ替わった。10月29日からフランスのリモージュでキャンプを張り、本格的な新チームのスタートを迎えた。

「国内の9人は能力が高く、周囲のアドバイスでより力を伸ばすだろう。経験ある選手たちには、そうしたチームへの働きかけを促している」とコッターHC。

 しかし、走り始めたばかりのスコッドにはさっそく、試練が。

 チーム内に新型コロナウイルス検査で陽性者が出て、11月6日に予定されていた準備試合のポルトガル戦に続き、10月15日の大会初戦、フランス戦、そして21日のイタリア戦が中止となってしまった。

 15日に、初戦に向けて発表されていたメンバーをここに残しておきたい。

★印は2019年W杯メンバー
【FW】
ペニ・ラヴァイ(クレルモン・オーヴェルニュ)★、サム・マタヴェシ(ノーサンプトン)★、メサケ・ドンゲ(ブリーヴ)、テヴィタ・ラトゥヴァ(スカーレッツ)★、アルバート・トゥイスエ(ロンドン・アイリッシュ)、メスラメ・クナヴラ(エディンバラ)、キティオネ・カミカミザ(ブリーヴ)、ジョニー・ダイアー(ビアリッツ) 

【HB】
フランク・ロマニ(レベルズ)★、ベン・ヴォラヴォラ(ペルピニャン)★

【TB】
ネマニ・ナンドロ(レスター)、レヴァニ・ボティア(ラ・ロシェル)★、ワイセア・ナヤザレヴ(スタッド・フランス)★、チョスア・トゥイソヴァ(リヨン)★

【FB】
キニ・ムリムリヴァル(レスター)★

【リザーブ】
ハエレイティ・ヘテット(ワイカト)、サムエラ・タワケ(ナイタシリ)、テモ・マヤナヴァヌア(ノースランド)、マヌエリ・ラトゥニヤラワ(ナドロンガ)、シミオネ・クルヴォリ(タイレヴ)、セルペペリ・ヴラリカ(スバ)、セタレキ・トゥイズヴ(クレルモン・オーヴェルニュ)

 発表されたスコッドで目を引くのはBK陣。経験も豊富で破壊力がある。その筆頭は日本のラグビーファンにもおなじみのWTB/CTBネマニ・ナドロ(195㌢、123㌔)だ。「フライング・フィジアン」こと同代表の象徴的存在。かつてNECにも所属し、トライ王を2度獲得している。コッター HCとは、フランス・モンペリエ所属時(昨季まで)の師弟関係があり、信頼し合う間柄。フィジー代表への復帰は、2019年大会直前の代表リタイア以来だ。

 2019年大会でも活躍した欧州注目のCTB/WTBセミ・ランドランドラもスコッド入りし、主将に任命された。遠征ではギターを持参し、美声も披露する。ストイックな姿勢も印象的だ。ガーデンアイランドと呼ばれる美しい島、タベウニ島の出身で、10代に時給100円で本島にある金鉱山で働き、家族を支えた。U20代表での活躍で、豪州ラグビー・リーグ(13人制)のパラマタ・イールズにスカウトされ、ブレイクしリーグの大スターに駆け上がった。2017年に15人制へ転向し、鳴り物入りでフランス・トゥーロンに移籍。ボルドー・ベグルを経て、W杯後にブリストルへ移籍し期待に応えた。フランスの報道ではコロナウイルス検査での陽性者の一人とされ、初戦のメンバーからも漏れた。

 代わりにゲームキャプテンに指名されたCTBのレヴァニ・ボティア、チョスア・トゥイソヴァはともに相手を吹っ飛ばしながらの突進が見物。

2020年、欧州クラブの最優秀選手にもノミネートされたCTBランドランドラ(Getty Images)

 FWはほとんどが入れ替わった。大黒柱のLOレオネ・ナカラワは負傷で合流が遅れ、テストマッチ経験の浅いメンバーで強豪との連戦はまさに試練となる。

 新人のうちPRハエレイティ・ヘテットはかつてのフィジー代表の大型PRチョエリ・ヴェイタヤキの息子で、今後が期待される。

 またコッターHCは国内リーグもしっかりと見て回り、この国のラグビーの、もつポテンシャルを最大に発揮させようとしている。

 ラグマガ編集部で話題となっている新鋭は、NO8で出場予定だったジョニー・ダイアー(ビアリッツ)だ。ステップ、ランはもちろんだが、最大の特徴はタックル後のボールゲット。巨大なお尻と野太い下半身で相手の動きを封じ、上に乗り、瞬く間にボールに仕掛けて攻撃権を奪う。そのハードワークぶりは、中学生や高校生のお手本にもなりそうだ。

 若手の潜在能力を、経験ある選手たちがサポートし、ともに存在感を発揮していきそうな新しいフィジー。中止となる試合がこれ以上増えないことは、多くのラグビーファン共通の祈りだろう。


【WOWOW番組情報】
ラグビー8カ国対抗戦 オータム・ネーションズカップ
11/13(金)~12/6(日) WOWOWで独占放送&配信!

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【第2節】
グループA

11/21(土)夜11:50   イングランドvsアイルランド
11/21(土)深夜2:00 ウェールズvsジョージア ※WOWOWメンバーズオンデマンド先行ライブ配信
11/22(日)朝7:05             ウェールズvsジョージア ※ディレイ放送

グループB
11/22(日)深夜12:00(23日の0:00)       スコットランドvsフランス

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