◆オータム・ネーションズカップ2020
○グループA
イングランド
アイルランド
ウェールズ
ジョージア
○グループB
フランス
スコットランド
イタリア
フィジー
ウェールズは名将の「影」を払拭できるか
2007年から昨年のワールドカップまで代表を率いた名将ウォーレン・ガットランドの後任、ウェイン・ピバック監督率いるチームは、不調に苦しんでいる。
昨年のワールドカップで準決勝進出を果たしたチームは、今年のシックス・ネーションズでは万年最下位のイタリア相手の1勝に終わり、屈辱の5位に終わっている。大会前の準備試合のフランス戦も含めると、現在5連敗中。昨年からそれほど大きな選手の入れ替えも行っておらず、「新チーム」というよりは、「新監督」が叩かれる声が多く聞かれる。
主将を務めるのは、この秋150キャップ(連合チームである、ブリティシュ・アイリッシュ・ライオンズのテスト対象試合を含む)超えが確実である、アラン=ウィン・ジョーンズ(LO)。35歳のベテランは、「まだまだこれから」と言わんばかりに、クラブ、代表の試合で激しく肉弾戦を支配し、チームを引っ張り続ける。グランド上でのプレースタイルだけではなく、チームメイトたちとの人間関係でも精神的な柱。名キャプテンの動きには注目の価値がある。
中堅どころでは、闘争心むき出しのプレーが売りの“熱き司令塔”、SOダン・ビガー。そしてラン、パスプレーの上手さが光る“技巧派FW”、FLジャスティン・ティプリックらが健在。ガットランド監督時代にFW第3列で多くの名選手が生み出され、このポジションは現在も熾烈なスタメン争いが繰り広げられる。
オータム・ネーションズカップでは、アイルランド、イングランド、ジョージアと同組。万が一ジョージアに敗れ、最下位決定戦に出場するような事態になると、ピバック監督の解任論は止まらないだろう。
そんなプレッシャーのなか、選手たちはどのような戦いを見せるだろうか。選手たちの、プレッシャーをはねのける力に注目だ。
ジョージアが受ける世界のテスト
レロス(ジョージア代表の愛称。ラグビーに似た、同国古来の民族スポーツ「Lelo」に似ていることが由来)が、欧州6か国対抗シックス・ネーションズの面々とともにオータム・ネーションズカップに参戦する。
これは輝かしい機会、というよりはジョージアにとって一つのテスト、洗礼となるのだろう。かねてからシックス・ネーションズのドアを叩いてきたレロスに、それだけの力があるのか。北半球のファンが注目する中、戦いが始まろうとしている。
チームの若さは、武器でもある。「ジュニア・レロス」と呼ばれるU20代表はジュニアワールドチャンピオンシップ(ジュニアワールドカップとも呼ばれるU20大会。世界上位12か国がエントリー)に参戦し、伝統的なパワー重視のスタイルとともに、ワイドでスピーディな魅せるラグビーで、スコットランド、アイルランド、イタリア、日本、アルゼンチンといったチームを倒してきた実績がある。こうした選手が成長していく中で、フル代表は新たな自信と飛び道具的な力を加えている。
PRグラム・ゴギチャシヴィリ、LO/FL オタール・ギオルガゼ、FLベカ・ゴルガゼ、ベカ・サギナゼ、SHヴァシル・ロブジャニゼ、ゲラ・アブラシゼ、SOテド・アブジャンダゼ。彼らはすでにフランスリーグのトップ14で名の知られた選手たちだ。
そのプレースタイルは対戦相手には驚きかもしれない。ジョージアは比較的新しい、改善されたチームで遠征をスタートさせる。ヘッドコーチのレバン・マイサシビリは、オータム・ネーションズカップに、国際経験のない選手も招集している。
レロスは献身的なディフェンスとパワー重視の強い接点を前面に出したプレースタイルが有名だ。そのスクラムは世界的に尊敬を集めており、エディー・ジョーンズがイングランドのスクラム改善のため2回合同練習に招いたほどだ。近年のコーチ陣の目標は、その実績のあるFWと、BKのプレーのバランスをとることだった。
マイサシビリHCは、2020年の欧州で、これまでの戦術を捨てたアタックを見せている。チームは重点的に攻撃の強化に力を注いできた。オータム・ネーションズでの力関係を考えれば、ディフェンス場面はどうしても多くなる。それでも指揮官は攻めのスタイル構築を貫こうとしている。いわく、「ディフェンスだけで成功することは不可能だ。大胆に攻め、試合をコントロールする必要がある」
そして、すでに仕事に当たっている経験豊富なスタッフたちは、イングランド、アイルランド、ウェールズに対し、驚きに満ちた魅力的なプレーを見せる助けになるだろう。
カルバン・モーリス(ハイパフォーマンスアドバイザー)、セバスチャン・ブルーノ(FWコーチ、2019年大会はフランス代表スクラムコーチ)、 デーヴィッド・ハンフリーズ(ハイパフォーマンスコンサルタント)、ネイル・ドーク(アタック&B Kコーチ)らは名うてのスペシャリストたち。ジョージアのリニューアルを加速させようとしている。元ジョージア代表のベシク・カラシュリゼ(BKコーチ)やギオルギ・キハイゼ(FWコーチ)、S&Cのトップであるイラクリ・キコニアの経験を後押しすることになるだろう。
新型コロナウイルスは、ジョージアに強豪と戦う大きな舞台を与えたが、一方でその感染拡大はこの大会への準備に問題を引き起こした。選手たちの半数は3月以降ゲームの機会を失った。シックス・ネーションズへの参入チャンスとなるこの大会、特に順位決定戦では、勝つためにあらゆる手を打つだろう。12月5日のその相手はフィジーか、イタリアか。イタリアはジョージアのシックス・ネーションズへの道で超えるべき壁だ。フィジーは2019年ワールドカップでの大勝(フィジー45-10ジョージア)で、ジョージアの評判を大きく揺さぶった相手だ。
レロスは10月23日にマレーフィールドでスコットランドと大会前の準備試合を戦い7-48で敗れた。残念ながら、明らかに期待された内容のプレーではなかった。とりわけ、スコットランドがセットプレー、スクラムでもジョージアを上回ったことはショックだった。感染拡大のため8か月近くプレーできず、これが活動再開後、最初のゲームだったとはいえ、あの試合のペース(速さ)への適応には今後も苦労するだろう。高いレベルのラグビーではこれは不可欠だ。長い期間、試合や練習ができなかった影響を思い知らされる結果となった。
ジョージアは、もう1試合準備試合を予定していたが、ヨーロッパ大陸での感染拡大の状況によりトビリシ(ホーム)で11月1日に予定されていたロシア戦は中止となった。コーチ陣は残されたわずか3週間でプレーの質を向上させなければならない。
チームは国内のパフォーマンスセンターに戻り、隔離された環境でオータム・ネーションズカップの準備を続ける。残念ながら欧州各クラブは国際的な門戸が開くまでは選手をリリースせず、海外ベースの選手たち抜きで行わなければならない。
レロスは最善を尽くし良い結果を願いながら、自らの力を試すべく、歴史的なチャンスとなる遠征をスタートさせようとしている。
【WOWOW番組情報】
ラグビー8カ国対抗戦 オータム・ネーションズカップ
11/13(金)~12/6(日) WOWOWで独占放送&配信!
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第1節
グループA
11/13(金)深夜3:45 アイルランドvsウェールズ
11/14(土)夜11:55 イングランドvsジョージア
グループB
11/14(土)夜9:30 イタリアvsスコットランド
11/15(日)深夜0:00 フランスvsフィジー