ラグビーリパブリック

スティーブ小林のシビアな展望。ラグビー8カ国対抗戦 オータム・ネーションズカップ

2020.11.10

英国サラセンズ、イングランド代表の一員として数々のタイトルに恵まれてきたイトジェ。万能LOにしてリーダーでもある

 国際統括機関ワールドラグビーの提案で開催される「ラグビー8カ国対抗戦 オータム・ネーションズカップ」は、これまで11月に行なわれてきた南・北半球のテストマッチ(国代表試合)が中止されるなか、欧州諸国に価値ある代替試合をもたらそうとしている。

◆オータム・ネーションズカップ2020
○グループA
イングランド
アイルランド
ウェールズ
ジョージア

○グループB
フランス
スコットランド
イタリア
フィジー

 全16試合は、11月13日(金)~12月6日(日)間での4回の週末に行なわれ、欧州シックス・ネーションズの6カ国に、ジョージアとフィジーを加えた8か国が参加する。これらの国々をイングランド、アイルランド、ウェールズ、ジョージアのプールと、フランス、スコットランド、イタリア、フィジーのプールに分けて、それぞれのプール内で3試合ずつの総当たり戦を行ない1~4位を決める。そして最終節に、2組のプールの同じ順位同士が対戦し、順位を決める。つまり、両プールの1位同士の対戦が決勝戦となる。

 最初のプールで有力な1位候補はイングランドだ。10月31日のシックス・ネーションズ最終節でイタリアに勝ち、勝点で並んだフランスに総得失点差で優り、優勝を決めたばかりである。エディー・ジョーンズ監督は大きなサイズのFWによる強いスクラムを目指す。特色は当たりの強さだが、その代表格のCTBマヌ・トゥイランギを負傷で欠くのは痛い。LOイトジェ、FLトム・カリー、WTBジョニー・メイが柱となる選手である。

 シックス・ネーションズ最終戦でフランスに競り負け、優勝を逃したアイルランドは、SOセクストン主将、WTB ストックデールが頼り。現状、2~3年前の圧倒的な前進力を欠くが、ニュージーランド出身のWTBジェームズ・ロウが代表資格を得て出場濃厚だ。

 ラグビーワールドカップ(RWC)日本大会のベスト4のウェールズは、ピヴァック新監督体制で5連敗の不調にある。ほぼ同じメンバーなのに失トライ数が増えた。総キャップ数149の世界最多、LOアラン・ウィン・ジョーンズ主将の奮起を期待したい。

 スクラム最強国と呼ばれることもあるジョージアだが、チームとしての練習量が足らず、勝利に向けて状況は苦しい。

 別プールの1位候補フランスはシックス・ネーションズで復調。FW1列のバイユ、マルシャン、アウアによる強力なスクラムを誇り、SHデュポンとSOンタマックのハーフコンビがトライを生む。FLオリヴォン主将とNO8アルドリットのコンタクトも強烈だ。

シックスネーションズでのアイルランド。左からSOジョナサン・セクストン、FLピーター・オマーニー、LOジェームズ・ライアン、PRタイグ・ファーロン(Getty Images)

 上昇中のスコットランドは、サザーランド、ブラウン、ファーガソンのFW1列目が組むスクラムの強化が進んだ。FLリッチーは手強い存在。ディフェンスコーチのスティーヴ・タンディは、豪州ワラターズ時代にジャージーの色から「ブルーウォール(青い壁)」と呼ばれた堅守の再現を模索中。

 イタリア代表とフランコ・スミス監督は好相性。激しく前に出る相手ディフェンスには、大きくボールを下げてから攻め返す攻撃が機能し、再三守備を突破している。20歳の新SO パオロ・ガルビジの判断力も見事。

フィジーに復帰の爆烈ウインガー、ナンドロは、英国プレミアシップのレスターでプレー(写真)。かつてはNECに所属し、日本でもインパクトを残した(Getty Images)

 フィジー・チームはコロナ感染者が発生し、CTBのランドランドラが負傷の不運。良い話はWTBネマニ・ナドロの復帰。コッター監督とはモンペリエ時代の知り合いだ。

 順当なら決勝戦はイングラド対フランスとみる。そして、試合はアタック力で勝るフランスが優位とみる。イングランドが勝利するには、足首負傷中のFBエリオット・デイリーの復帰が待たれるところである。

フランスの司令塔、ンタマック(中央)はまだ21歳。父エミール、叔父フランシスもフランス代表(Getty Images)

【WOWOW番組情報】
ラグビー8カ国対抗戦 オータム・ネーションズカップ
11/13(金)~12/6(日) WOWOWで独占放送&配信!

第1節
グループA
11/13(金)深夜3:45 アイルランドvsウェールズ
11/14(土)夜11:55 イングランドvsジョージア
グループB
11/14(土)夜9:30 イタリアvsスコットランド
11/15(日)深夜0:00 フランスvsフィジー

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