ヨーロッパの強豪6か国が戦う2020年の「シックスネーションズ」は、新型コロナウイルスの影響による中断をはさみ、現地時間10月31日に最終節の全3試合がおこなわれ、3チームに優勝の可能性があったなか、イングランドが逆転でトップとなり、3年ぶりに王座を奪還した。
前節終了時点で首位に立っていたのは総勝点14のアイルランドだった。それを勝点1ポイント差でイングランドとフランスが追っていた。
【勝点】
勝利=勝点4、引き分け=勝点2、負け=勝点0
勝敗に関係なく4トライ以上/7点差以内の負け=ボーナスポイント勝点1
アイルランドとフランスが直接対決する前に、ローマでイタリアとぶつかることになっていたイングランドは、4トライ以上すれば得られるボーナスポイント(勝点1)が必要で、最後は得失点差で決着がつく可能性もあったため、大勝を狙っていた。
イタリアは6か国のなかで唯一ワールドランキングのトップ10に入っておらず(14位)、シックスネーションズでは2015年2月に勝ったのを最後に26連敗中だった。
だが、この日のイタリアは楽な相手ではなかった。
前半、イングランドは1トライしか挙げられず、10-5とわずか5点リードで最初の40分間を終えた。ホームで挑んだイタリアの気迫に押され気味だった。
しかしハーフタイム後、この試合がイングランド代表として100キャップ目だったSHベン・ヤングズがチームに活を入れた。前半にもトライを挙げていたヤングズは、後半早々、ダミーからラックサイドを抜けてゴールへ走り切り、加点した。
これでリズムが良くなったイングランドは、さらに50分(後半10分)、ラインアウトからモールで押し込みリードを拡大。66分にも敵陣深くに入ると、ブレイクダウン後、ボールを持ち出したFLトム・カリーがブラインドサイドを抜けてゴールに持ち込み、4トライ目でボーナスポイントを獲得した。
71分にはアドバンテージをもらうと、キャプテンのSOオーウェン・ファレルがグラバーキックを使って仲間を走らせ、CTBヘンリー・スレイドが5点を追加。
イングランドは34-5で制し、総勝点18、得失点差+44としてライバルたちの結果を待った。
ローマの熱闘から約1時間半が経ち、注目はパリ郊外にあるスタッド・ドゥ・フランスに集まった。
暫定首位に立ったイングランドを勝点4ポイント差で追う立場になったアイルランドは、4トライ以上挙げて(ボーナスポイント付きで)勝利するか、7点差以上つけて勝てば、優勝できるという条件だった。
一方、勝点5ポイント差のフランスが逆転優勝するには、4トライ以上挙げ31点差以上つけて勝たなければならないという厳しい条件だった。
結果、35-27で、勝ったのはフランス。ボーナスポイントを獲得したフランスは総勝点18でイングランドに並んだものの、得失点差で遠く及ばず、栄冠に輝いたのはイングランドだった。
前半はフランスが17-13とリード。アイルランドは7点ビハインドから一時逆転したものの、29分、トライチャンスだったフランスの選手に対してアイルランドのFLカエラン・ドリスがノーボールタックルの反則を犯し、レフリーはペナルティトライを宣告した。ドリスにはイエローカードが出てアイルランドは14人となり、流れを悪くした。
リードしたフランスは後半早々、自陣からカウンターでキックも使いチャンスとなり、ボールを確保したSHアントワーヌ・デュポンからSOロマン・ンタマックとつなぎ、トライが生まれた。47分(後半7分)と51分にはPGで得点を重ね、28-13となった。
アイルランドは59分にCTBロビー・ヘンショウが個人技でトライを挙げ、点差を詰めたが、その後、敵陣深くに入りながらラインアウト失敗が続いて、傾きかけた流れを止めた。
逆にフランスは70分、敵陣10メートルライン付近のスクラムでアドバンテージを得ると、攻め続けてSOンタマックがディフェンス裏にチップキックを放って自らボールを確保し、CTBヴィリミ・ヴァカタワにつないで決定的なトライが生まれた。
アイルランドは試合終了間際に7点を奪い返したが、反撃が遅かった。
この日、スラネスリ(ウェールズ)のパーク・イ・スカーレッツでおこなわれたウェールズ対スコットランドの試合は、14-10でスコットランドが競り勝った。
スコットランドが敵地でウェールズを倒したのは18年ぶり。
ウェールズは、世界最多キャップホルダーとなったアラン=ウィン・ジョーンズ主将の記念試合を勝利で祝うことはできなかった。