ワールドラグビー(以下、WR)の革新派と目され、先の会長選で現職のビル・ボーモント氏に敗れた元アルゼンチン代表SH、アグスティン・ピチョット氏。
強豪国に優位な従来からの構造を変える。ラグビーの裾野を広げる。そう公言するも、思いはわずかに届かなかった。
投票前、ボーモント氏が投票先を迷っていた日本やフィジーなどに優遇を約束し、票が流れた結果と分析される。
そんなピチョット氏が副会長の座も手放し、WRから離脱する姿勢を見せているようだ。
英『Daily News』や母国・アルゼンチン版ESPNなどが報じた。
保守的なボーモント氏との獲得票の比較により、各国協会の、変革への意識の低さが露わになった今回。『Daily News』はその結果を受けてピチョット氏が落胆し、WRからの離脱を考えているとした。
全51票のうち23票を獲得するも、側近によると、最後まで投票先を迷っていた国々が短期的な利益を求めてボーモントに投票したと感じているそうだ。
投票に先駆け、ボーモント氏を支持するフランス協会は、フィジー協会にフィジー国内でのテストマッチ開催を約束するなどロビー活動にも力を入れていた。
WR内部では、ヨーロッパの強豪国に優位な従来の年間スケジュールやテストマッチの組み方などに異を唱える存在がいなくなることに、危機感を感じている声もあるようだ。
そもそもピチョット氏に会長選出馬を求めたと言われるアフリカ協会が、最後まで立場を決めあぐね、最終的にはボーモント氏に投票するなど波乱もあった。
投票結果の発表とほぼ時を同じくして報じられた日本のティア1昇格も、わずかにしこりが残る形となった。
新しく副会長に就任する元フランス代表ヘッドコーチで、現在はフランスラグビー協会の会長を務めるベルナール・ラポルト氏は、ピチョット氏の熱量と情熱は今後のラグビーの発展に不可欠だとする。引き留めを試みたが、決意は固いようだ。
ラポルト氏は「(ピチョットの)不満もわかるが、多数決で決まってしまったからには仕方ない。彼が去ってしまう中、残る我々ができることは彼に集まった23票分の意思をしっかりと今後の施策に反映させていくことだ」と話し、ラグビーの裾野を広げるという姿勢も見せた。