ラグビーリパブリック

ジェイミーHCの選考プロセス

2019.08.30
ジェイミー・ジョセフHC

ジェイミー・ジョセフHC。就任以来3年間、そして今年に入ってからの強化プロセスを説明し、所属チームや代表強化への感謝を述べ、選手発表を行った(撮影:松本かおり)

 開幕は9月20日。日本で、アジアで初めて開催されるラグビー ワールドカップの日本代表メンバー31人が、8月29日に発表された。 

*ワールドカップ2019 日本代表メンバー31人はこちら(サイト内記事)

 2016年秋から日本代表ヘッドコーチ(HC)を務めるジェイミー・ジョセフは、発表後に記者の質問に答え、選考基準や過程について話した。選考結果が注目された選手についてみていこう。

 SHは今回は3名が選ばれた。すでに2大会の出場経験がある田中史朗、そしてワールドカップ初出場の茂野海人、流大が切磋琢磨する。チーム理解、ゲーム理解を重視するジョセフHCらしい選考。

「フロントローにも言えることだが、専門性の高いポジション。特にSHには、チームを熟知している選手をより多く抱えておきたい。この3人はチームの速い展開をよく理解し実践できる。田中は経験ある選手。フィールドの内外でチームをサポートでき、またプレーでは試合を読む力に長けている。流、茂野はスーパーラグビーで実力を証明した。この3人はそれぞれが個性的で、いいミックスで選ぶことができた」(ジョセフHC)

 サプライズに近い2人は、プレー時間が短かかったHO北出卓也、WTBアタアタ・モエアキオラ。

「まずアタアタについて。今、アウトサイドバックス(WTB、FB)は優秀な選手が揃っている。ただし、アタアタには彼らにないサイズとパワーがある(185センチ、114キロ)。PNC(今夏のパシフィック・ネーションズカップ)で出場機会を与えなかったのは(招集しなかった)、チーム全体の育成を優先した結果だった。彼はまだ若く、成長の必要もある」(ジョセフHC)

 HO北出は31人中唯一、ノンキャップでの選出。アタアタと同じく、直前のPNCにも招集されていない。専門職のHOで、いわば「後のない」立ち位置にあたる3人目の役割を、果たせる力があると見込まれた。

「(北出と第3のHOを競合することになった)堀越(康介)については、リスペクトすべき選手で、コーチ陣も評価は高かった。サントリーではPRとして起用されたが、我々はHOとして見ていた。課題になったのはラインアウトでのスキル。PNCも通して指導してきたが…。スローイングなどで、プレッシャーのかかった場面でスキルを発揮できるのは北出だと判断した」(ジョセフHC)

 今回選んだメンバー31人、全員に共通した強みは何かと問われたジョセフHCは、ゲーム理解とアンストラクチャーでのプレーに触れた。

「今回の選考は、大会中に替えのきかないメンバーなので、これまでの大会や単発のテストマッチなどとは選び方が多少違った。まずは各自の役割が重要なことはもちろん、FWでも、いざというときBKもこなせる選手、BKにおいても、違うポジションをカバーできる選手。今回の選考にはそういう要素もあった。いずれにしてもこのメンバーが優れているのは、チームの戦い方、意図を理解して実践できること」(ジョセフHC)

「3年前から大事にしているのは、アンストラクチャーのプレー。以前の選手たちは、ストラクチャーからはうまくプレーできても、アンストラクチャーでは手こずっていた。今では、そうしたプレッシャーのかかった場面、崩れた場面からでも、自分たちのするべきことを判断し、遂行できるようになった」(ジョセフHC)

 前回大会からは4年、就任から3年をかけ、ジェイミー色のジャパンを築き上げてきた日本代表。9月6日には南アフリカ代表と大会前最後のテストマッチを行い、20日の開幕を迎える。チームの成長はこれからも、大会中も続くはずだ。

*ワールドカップ2019 日本代表メンバー31人はこちら(サイト内記事)
*ワールドカップ2019 日本代表名鑑こちら(サイト内記事)