ラグビーリパブリック

もう一度、歴史を変える力に。新田博昭S&Cコーチ、フィジー代表に合流。

2019.07.26

プレーヤーの力を伸ばし、引き出す新田博昭コーチ。(撮影/松本かおり)

 2015年大会ではサクラのジャージーの躍進を支えた男が、今度は椰子の木のエンブレムのために力を注ぐ。
 新田博昭さんが、7月27日に日本代表と戦うフィジー代表に加わっている。新田さんは来日したチームと合流し、任務はワールドカップ終了時まで続く。S&Cコーチとして、天性の才に恵まれたフィジアンたちの力をより引き出すためのサポートを続ける。

 7月13日にマオリ・オールブラックスを撃破して(27-10)充実を証明したフィジー代表は、9月20日に開幕するワールドカップで上位進出が期待される。新田さんは、先に同代表のヘッドS&Cコーチに就いていたジョン・プライヤー氏(以下、JP)との縁でふたたびワールドカップの興奮の中に身を置く。
 サントリー、日本代表でともに働いた相棒とともに、2015年大会以上の成功を収めたい。

 現在はNTTコミュニケーションズシャイニングアークスに在籍する。契約時、今回のようなことを想定して盛り込んでいたからチームから快く送り出してもらった。
「2015年大会でお腹いっぱいになったかな、と思っていたのですが、やはりワールドカップが近づいてくると、またやりたいな、と。そんな気持ちになっていました。すごく強そうなので、今回はフィジーと関われたらなあ…と念じていました。ツイていますね」
 大会まで残りわずか。最後の仕上げに経験を活かす。

 フィジー代表に帯同し始めてからの短い時間で感じたのは、スキル等に関しては「抜群というわけではない」ということだ。
 練習を見ていてもミスは少なくない。「日本代表の方が負けているという感じはしなかった」と話す。
「ただ、JPからは日本とは全然違うと聞いています。試合になると変わる、と。筋力やフィットネスなどの数値などは高くはないけれど、実戦になってスイッチが入ると走れる。どうやったら彼らがいちばん伸びるのか、力を発揮できるのか、まずは観察してみたい」
 国民性や個々の特性を知ることは、コーチングの重要な要素の一部だ。

 選手たちと触れてみてわかったのは、JPの指導の成果か、きついトレーニングに臨む姿勢や規律が、思っている以上にしっかりしていることだ。
 前回大会を振り返って思うのは、選手と指導者の信頼関係の重要性。選手は、「この人が言うなら」の思いがあれば猛練習をやり切り、力を蓄え、勝負に出る。
「2015年は、選手たちがエディーさん(ジョーンズ ヘッドコーチ)を信じ切っていたから、大会前にあれだけ追い込めたと思います」

 新田さん自身もエディーを信じて殻を破ったひとりだった。
「サントリー時代にも経験しました。エディーさんが言うように、(オーバーワークやケガを)怖がらないでギリギリのところまで鍛え込めば、ピーキングをしっかりやれた場合、最高のパフォーマンスを出すことができる。トップリーグでもそうだったし、世界の舞台でも、あらためてそう勉強させてもらいました」
 ワールドカップの価値が選手たちのヤル気に火をつける。そんな感情もプラスにしたい。

 ジャパンが歴史を変えた前大会同様、今回も勝負どころでチームに加わった。
 調整だけに終始せず、さらに鍛え、残り時間でチーム力をもっと高める。
「ベスト4進出。それが実現できたら、前回に負けないくらいの充実を感じられると思っています」
 ただでさえ魅力的なチームのエンジンをさらに大きく。キレをもっと鋭く。
 初めて訪れるフィジーでの数週間を4年前の宮崎以上にして、フィジーラグビーの歴史を変える力になれたらコーチ冥利につきる。

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