ラグビーリパブリック

シックス・ネーションズに見る ジャパンのライバルの弱点とは?

2019.03.01

ワールドカップで日本と同じプールに入ったアイルランドとスコットランド(Photo:Getty Images)

 2018年のワールドラグビー年間最優秀チーム賞を獲得し、グランドスラム(全勝優勝)を果たした前回に続いて今年も優勝の最有力候補と前評判高かったアイルランドだが、開幕戦でイングランドに20-32と屈し、手痛い黒星スタートとなった。ホームのアヴィヴァ・スタジアムで敗れたこと自体ダメージの大きい敗戦だったが、何よりショッキングだったのは試合内容だ。接点のバトルで劣勢を強いられ、鋭い出足で間合いを詰める相手ディフェンスのプレッシャーをまともに受けてエラーを連発。看板の防御でも、縦の強さと横のスピードにキックによる前後の揺さぶりもまじえたイングランドの隙のない攻撃を食い止めきれず、4トライを許してボーナスポイントまで奪われてしまった。

 ジョー・シュミット ヘッドコーチが6シーズンかけて築き上げてきた現在のアイルランドの最大の強みは、攻守とも頑健に体を張り、規律を保ちながら圧力をかけ続けて、相手が我慢し切れなくなったところでたたみかける勤勉さと粘り強さだ。しかしイングランド戦では、パワープレーによる前進を阻まれると攻撃が手詰まりになり、キックを上げてなだれ込む単調な攻めに終始する傾向が顕著だった。この流れは勝利した第2節のスコットランド戦も変わらず、「強みをシンプルに押し出す」というスタイルが明確なぶん、仕掛けの多彩さでは南半球勢やイングランドほどの怖さはないという印象だ。フィジカルで押しつぶしにくる相手に対し、すばやく前に出て勢いがつく前に体を当て、高速リアクションで防御陣形を維持し続けて、キックを蹴り込んできたところできっちりボールを確保する――というのが、ジャパンの勝利の条件と言えるだろう。

 逆に、堅牢なアイルランドの組織ディフェンスを攻略する鍵は、スピードとキックだ。体格とパワーで上回る相手に正面からぶつかっても、まず勝ち目はない。一方でただキックを蹴り込むだけでも、簡単に相手にボールを渡すことになる。組織として速く動けるジャパンの特長を最大限に生かし、相手のポジショニングが追いつかないテンポで攻撃を継続して、イングランドのように「プレッシャーをかけた上で空いたスペースへピンポイントのキックを配する」ことが重要になる。

アイルランドの攻撃の勢いがつく前に、日本は素早く前に出て体をぶつけ続け、活路を見出したい (Photo:Getty Images)

 スコットランドは開幕節でイタリアに33-20と勝利したものの、続くアイルランド戦(13-22)、フランス戦(10-27)に連敗し、イングランド、ウェールズとの対戦を残した段階で黒星が先行している。ハードワーカーぞろいのFWがひたむきに働き、イタリア戦でハットトリックを決めた新鋭WTBブレア・キングホーンの活躍が目を引くが、上位勢に比較すればややパンチ力不足の感は否めない。堅実でバランスのとれたチーム力を誇る半面、飛び抜けた強みを有するわけではない点は、日本代表にとって好材料だろう。

 ここまでの3試合で気になったのは、ハンドリングエラーの多さだ。勝利したイタリア戦も奪った5トライよりむしろミスでチャンスを逃したシーンのほうが目立つほどで、アイルランド戦では後半ほとんど好機を作り出せないままホームで敗戦のホイッスルを聞いた。前節のフランス戦も相手のプレッシャーにボールを失い、そこからピンチを招く場面がしばしば。ディフェンスで粘り強く体を張り、相手のエラーに乗じてカウンターで一気にスコアを狙う――というのが、対スコットランド戦での突破口になりそうだ。

 もうひとつの気がかりは、主軸にケガ人が相次いでいること。FLライアン・ウィルソン、CTBヒュー・ジョーンズがアイルランド戦で膝を痛め長期離脱が決まったほか、アタックのキーマンであるSOフィン・ラッセル(脳震盪)、FBスチュアート・ホッグ(肩)も負傷し、フランス戦を欠場した。ワールドカップまでに強度の高い実戦で連携を深める機会は限られており、その経験を重ねられないまま本番に臨まなければならない点は、不安材料になりかねない。また、過去5年のシックス・ネーションズのアウェーでの戦績は2勝9敗と大きく負け越しており、敵地での戦いでなかなか力を発揮できない点も、ホームの絶大なサポートを受けて戦える日本代表にとっては心強いデータと言えるだろう。

日本はスコットランドに対し、ディフェンスで粘り強く体を張りエラーを誘いたい
(Photo:Getty Images)

 もちろん両国とも確固たる地力と経験を備えた格上のチームであり、ジャパンにとっては非常に困難な相手であるのは確かだ。しかし、ワールドカップで上位候補に挙げられる強豪であっても、ペースが乱れれば強みを発揮できず、どこかに必ずつけ入る隙があることも、ここまでのシックス・ネーションズでの戦いぶりから実感できた。残り2節を含め、今大会で明らかになったさまざまな要素は、日本代表にとって貴重なヒントとなるはずだ。





◆◆◆ WOWOW番組情報 ◆◆◆

★「生中継!ラグビー欧州6カ国対抗戦 シックス・ネーションズ」
130年以上の歴史と伝統を誇る「シックス・ネーションズ」。ヨーロッパのラグビー強豪6カ国が参加して行なわれる大会はいよいよ後半戦へ突入!全試合生中継でお届けする!

【第4節】
スコットランドvsウェールズ 3/9(土)夜11:00~[WOWOWライブ]
イングランドvsイタリア 3/9(土)深夜1:30~[WOWOWライブ]
アイルランドvsフランス 3/10(日)夜11:45~[WOWOWプライム]

【最終節】
イタリアvsフランス 3/16(土)夜9:15~[WOWOWライブ]
ウェールズvsアイルランド 3/16(土)夜11:35~[WOWOWライブ]
イングランドvsスコットランド 3/16(土)深夜1:50~[WOWOWライブ]

■その他の放送予定は、WOWOWラグビーオフィシャルサイトをチェック!
http://www.wowow.co.jp/sports/rugby/

■『WOWOWラグビー公式ツイッター』(@wowow_rugby
WOWOWのラグビー公式アカウントです。WOWOWで放送するラグビーの放送スケジュール、最新ニュース等を中心につぶやいていきます。