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南アの「ゴールデンボーイ」と呼ばれたランビー、脳しんとうにより28歳の若さで引退。

2019.01.21

フランスに移ってからはヘッドキャップをつけてプレーしていたランビー(Photo: Getty Images)

 かつて南アフリカの最優秀新人賞に選ばれ、2011年と2015年のワールドカップにも出場したパット・ランビーが、28歳の若さでラグビー選手としてのキャリアを終えた。脳しんとうに苦しみ、膝の故障もあって昨年5月の試合を最後にプレーしていなかったが、1月19日、所属クラブのラシン92(フランス)がランビーの現役引退を発表した。

 今年日本で開催されるワールドカップで、南ア代表“スプリングボックス”の一員として活躍を期待する声もあった。しかし、過去3年間に何度も起こした脳しんとうの影響により、引退を余儀なくされた。彼の母国のメディアによると、休養も含めてさまざまな治療を試みたが、2人の専門家に診てもらい、頭部外傷の危険性を回避することが最善策だとアドバイスされ、ラグビーをやめることを決めたという。

 スタンドオフ、フルバック、センターでプレーできる万能選手だったランビーは、高校生の頃からゴールデンボーイと呼ばれ、出身地のダーバンを本拠地とするシャークスに入団して19歳の時にスーパーラグビーデビューを果たした。それは2010年のことで、U20南ア代表でも活躍し、国内最高峰大会のカリーカップではシャークスの司令塔として優勝に導き、瞬く間にスプリングボックスに招集され同年11月6日のアイルランド戦で初キャップを獲得した。当時は世界屈指の名キッカーだったモルネ・ステインがグリーン&ゴールドジャージーの10番をつけていたため、ワールドカップイヤーだった2011年はフルバックとして輝き、南アの年間表彰式で最優秀新人賞に選ばれた。最後のテストマッチとなった2016年11月のウェールズ戦までに重ねたキャップ数は56。

 怪我がなければもっとやれたに違いない。身長178センチ、体重88キロだった天才は、2014年から深刻な負傷が続くようになった。上腕二頭筋断裂、頸椎(首の骨)損傷、肩の手術で長期離脱したシーズンもあり、2016年6月のアイルランド戦ではキックチャージにきた相手選手に体当たりされて脳しんとうを起こし、復活まで時間がかかった。
 2017年5月にはスーパーラグビーの試合中にシャークスのチームメイトとぶつかり、頭部に激しい衝撃を受け、フィールド復帰まで半年を要す。ラシン92と4年契約を結びフランスへ渡ったが、復活したばかりの同年12月、オヨナ戦で再び脳しんとうを起こした。翌年2月にプレーを再開したものの、4月のマンスター戦でも頭部を打ち、9か月たった現在も影響を感じているという。頭の状態が不安視されながらも欧州チャンピオンズカップ決勝の舞台には立ったが、今度は膝の靭帯を損傷して離脱。その後、膝は回復していったものの脳しんとうの症状悪化を感じるようになり、足が震え、頭痛、偏頭痛、目の刺激といった苦しみをフランスのメディアに語っていた。

 テンダイ・ムタワリラやブライアン・ハバナなど、かつてのチームメイトたちはSNSなどでコメントし、ランビーの早すぎる引退を残念としながらも、これまでの労をねぎらい、偉大な若きラグビーマンの新たな人生にエールを送っていた。

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