まずは前回大会優勝のアイルランドから。注目は何といってもSOジョナサン・セクストンだ。188cm、92kgの細身の長身にして、パス、ラン、キックいずれも高いレベルのスキルを有し、グラウンドを上からすみずみまで俯瞰するような視野の広さを誇る。ニュージーランドのボーデン・バレットと並び称される現在世界最高の司令塔のひとりで、昨シーズンはラグビーの国際統括機関であるワールドラグビーが選出する年間最優秀選手の栄誉も獲得した。精密機械のようなゲームコントロールを少しでも狂わせようと相手のアタックの標的になることが多く、これまでたびたび脳しんとうに悩まされてきたのは不安材料だが、33歳となった今もパフォーマンスの衰えは感じさせない。シックス・ネーションズはもちろん、秋のワールドカップにおいても、アイルランドがタイトルを獲得する上で欠かせない存在といえるだろう。
ワールドカップでアイルランド、日本と同じプールAに入るスコットランドでは、SHグレイグ・レイドローが浮沈の鍵を握る。プレッシャーにさらされてもまったく乱れない安定感あるパスさばきと高精度のキック、ビッグハート を兼ね備え、2015年のワールドカップではスコットランド代表のキャプテンとして日本代表の前に立ちはだかった。代表入りした当初はSOでプレーしていたこともあって、ゲームメイク力とプレースキックの正確性には定評あり。憎らしいほど落ち着いたプレーぶりに加え、チームが劣勢になった時こそ際立つ闘志と傑出した統率力も大きな魅力だ。ちなみに叔父のロイ・レイドローも、1980年代にスコットランド代表で活躍したSHだった。
かのエディー・ジョーンズ氏がヘッドコーチを務め、2016、2017年のシックス・ネーションズを連覇したイングランドは、アイルランドと並んで現在もっともタレントが豊富なチームのひとつといえる。その中で必見の選手をひとり挙げるとすれば、SO/CTBオーウェン・ファレルだ。イングランド代表で活躍したアンディ・ファレルを父に持ち、2008年に当時のイングランドの最年少記録となる17歳11日でサラセンズにおいてプロデビューを果たすなど、ユース時代から将来を嘱望されてきた。パスやキックにセンスを感じさせる天性のプレーメーカーながら、ハードなコンタクトをまったくいとわない点がプレーヤーとしての奥深いところ。その激しさは、あまりのハードヒットに「あのタックルは反則ではないか」とたびたび物議をかもすほどだ。昨秋の日本代表戦では後半から途中出場し劣勢だったチームを鮮やかに立て直すなど、精神的支柱としても絶大な存在感を誇る。
前回大会2位のウェールズは、キャプテンのLOアラン・ウィン・ジョーンズにかかる期待が大きい。196cm、125kgのサイズは、2mオーバーの選手がひしめく現代ラグビーのLOとしては決して大きくはないが、アスリートとしての高い身体能力と一切の妥協を拒絶する献身的な姿勢で、チームのエンジンルームとして推進力を生み出し続ける。豊かな走力と巧みなハンドリングスキルは、バックローもこなせるほど。ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズでの9キャップを含む代表129キャップはLOとしては世界最多で、ウェールズ代表においてもPRゲシン・ジェンキンスに次ぐ史上2番目の数字だ。
近年低迷が続くフランスは、2年目を迎えたジャック・ブリュネル ヘッドコーチ体制のもとで復権を期す。そのキーマンとなりそうなのが、CTBマチュー・バスタローだ。183cm、125kgの丸々とした体型にメッシュの入ったドレッドヘアーと、見た目からしてインパクト抜群。コンタクトの激しさは当然ながら、外見からは想像できないほどのスピードと器用さも兼ね備えており、しなやかなステップやオフロードパスなど幅広いプレーで観戦者を楽しませてくれる。かつてはトラブルメーカーとして数々のスキャンダルにまみれる時期もあったが、年齢を重ねるごとに精神面も安定。今まさに円熟期を迎えようとしている怪物の迫力あるプレーを、お見逃しなく。
過去最高の4位(2007年、2013年)以上を目指すイタリアでは、No.8セルジョ・パリッセを挙げたい。2002年に18歳で初キャップを獲得して以来、長きに渡りイタリアラグビーを牽引してきた国民的英雄であり、代表キャップ134は世界歴代4位タイ、現役選手では最多。2008年と2013年にはIRB(現ワールドラグビー)の年間世界最優秀選手候補にもノミネートされている。196cm、112kgの雄大な筋肉質の身体を有し、体を張ったプレーだけでなく、巧みなハンドリングやキック、ランニング能力にも優れた万能フットボーラーだ。前妻はミスヨーロッパに選ばれたフランス人のスーパーモデルで、ラグビー界きっての男前としても知られる。
この他にも注目すべき選手が目白押しのシックス・ネーションズ。8か月後を見すえ各国のスターたちをチェックしておけば、さらにワールドカップの楽しみ方が広がるはずだ。
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【放送日】2月2日(土)~3月16日(土)※開幕戦無料放送
※関連番組
『欧州ラグビーはここで学べ!開幕直前「シックス・ネーションズ」観戦ガイド』
【放送日】1/28(月)午後3:45ほか ※無料放送
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