ラグビーリパブリック

【独占インタビュー】 バスタローとギラドがトゥーロン、TOP14を語る。

2018.09.14
インタビュー後、練習グラウンドのスタンドでバスタロー(左)とギラド
(Photo / Miyuki Fukumoto)

トレーニンググラウンドから見えるのはトゥーロンのシンボル、ファロン山
(Photo / Miyuki Fukumoto)
 9月になっても、日中は真夏の日差し、真っ青な空。夏休みシーズンが終わり、コート・ダジュール目当てのヴァカンス客もひと段落。何よりも、トゥーロンの人々が、日常生活を取り戻すのに必要不可欠なラグビーのシーズンが開幕した。
 フランス最高峰リーグ『TOP14』の2018-2019シーズンは2節を終了した時点で、世界中のスター選手を集めて銀河集団と言われているラグビー・クラブ・トゥーロンは2連敗の14位、勝点0。昨季は準々決勝で、トライ数の差でリヨンに敗退。3年連続でコーチングスタッフが入れ替わり、BKを支えてきたマーア・ノヌーや、昨季トライ王のクリス・アシュトンらが退団。新たにニュージーランドから、リーアム・メッサムやジュリアン・サヴェア、ウエールズからは、リース・ウェブも加入という、相変わらず、動きの多いシーズンオフであった。
 そんな中、このチームを引っ張っていく選手の2人、フランス代表キャプテンのギレム・ギラドと、昨季からトゥーロンのキャプテンを務めるマチュー・バスタローに、チームのこと、TOP14のこと、トゥーロンの街のことを話してもらった(取材は9月4日)。

パワフルなCTBであるマチュー・バスタロー © Cyclope photo pour le RCT

フロントロー中央がギレム・ギラド © Cyclope photo pour le RCT
――開幕2連敗で、厳しい開幕ですね。
マチュー・バスタロー(以後MB): 確かに厳しいけど、新しいスタッフになったり、ぎりぎりにチームに合流した新しい選手もいたりで、調整が間に合っていないところもある。でも、シーズンも長いし、くよくよせずに、選手間の連携を早く取り戻して、日曜日のカストル戦(9日)に照準を合わせていく。
――ここ3年連続でスタッフが変わったり、主力選手が退団した。
ギレム・ギラド(以後GG): また新しいチームになったし、マチュー(バスタロー)もいま言ったけど、この2試合で学んだことを生かして、次のカストル戦に向けてしっかり準備しなくちゃいけない。
――TOP14はチーム間の差がなくなってきたということですか。
MB: 僕たちは最年長組で(笑)、ずっと見てきたけど、この4〜5年でチーム間の差が縮まってきている。いまでは、どのチームもいいリクルートができるようになってきていて、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカや、リース・ウェブのようにウエールズから世界中のトッププレーヤーが加入して、レベルが上がり、1試合も簡単な試合はなくなっている。昨季、セミファイナルにリヨンが進出するとは、誰も予想できなかったんじゃないかな。
――外国人選手の話が少し出ましたが、彼らとプレーすることのメリットは。
GG: いろんな国、いろんな国の代表でプレーしていた選手が来るわけだから、彼らの経験から得るものは大きい。リーアム(メッサム)は初試合なのにさっそく適応して、チームの大きな戦力になってくれた。でも、チームという基盤の上に組み立てていかなきゃいけないから、もちろん時間は必要。彼らは、少し違うものの見方や、練習メソッドを持っていて、そういうところから学びとって、試合中に応用できる。
MB: このチームは、世界中の選手が集まってプレーするという歴史と文化がある。ロッカールームでは、フランス語だけではなく、英語でも会話していて、フランス語が話せないから輪に入れないということはない。彼らはフランス語でしゃべれるよう努力するし、僕たちは最大限英語で話すようにする。助け合って、試合に勝つために一緒にいるわけだから、彼らが早くチームに馴染んでくれれば、チームにとってもいいこと。
――ところで、トゥーロンはラグビーの街として知られていますが、お二人はトゥーロン出身ではありません。ギレムはペルピニャン、マチューはパリの出身ですが、トゥーロンと違いはありますか。
GG: トゥーロンは独特な街。ファロン山があり、港があり、周辺にはたくさんの小さな村があり、それらのすべてがこの街のパワーになっていて、人々はこの街に愛着を感じている。そんな中で、ラグビーはこの街にとってとても大切なもの。人々は温かく親切で、僕たち選手を支えてくれている。
MB: ペルピニャンもこんな感じ?
GG: そう。僕はフランス南部にしか住んだことがないから。でもマチューはパリに住んでいて、思うように行動できていた。でも、トゥーロンでは常に誰かに見られている感じで、どうしても注意をひいてしまう。いいことだけどね。誰にも知られずに、心静かにラグビーのことだけ考えていたい選手には、ちょっと難しいかもしれない。トゥーロンでは、みんなが選手のことを知っているから。トゥーロンがどういうところか知らずに来てしまったとしても、すぐに思い知らされる(笑)。
MB: 僕はパリに住んでいたから、こことは正反対。パリではスポーツ選手でも普通に生活できてふらっと散歩もできる。でもここは試合に負けたり、悪いパスをしたりすると、買い物に行くスーパーのレジの反応が違う。最初はそういうのに馴染めなくて、慣れるのに1年半かかった。決してネガティブな意味で言っているのではないよ。僕たちを見かけただけで大感激してくれるのが、パリから来た僕には非現実だった。でも、この環境での生き方もわかってきたし、刺激も励みにもなっている。99%は激励だから。
――街の人々は、「トゥーロンの選手はみんな気さくで親切で、サインや写真をお願いしても、いつでも笑顔で応えてくれる」と嬉しそうに言っているから、上手に対応されているということですね。
GG: それを聞けてよかった(笑)。
 このインタビュー後のカストル戦で、開幕3節目にしてようやく勝利をもぎ取った。最終スコアは28-27。
 カストル優勢、またミスも多い、苦しい試合だった。70分にバスタローが密集の中で相手の挑発に乗り、レッドカードで退場になった。「このレッドカードで、チームが新たに結束した」とSHのエリク・エスカンド。残り時間3分で、ボールをなんとかつないで逆転トライ。バスタロー退場後、キャプテン代行のギラドが全員を集めた。「集中しろ、絶対にボールを最後までキープしろ」。80分のホーンが鳴る。この夏のワールドラグビーU20チャンピオンシップで優勝したU20フランス代表のSOルイ・カルボネルがタッチに蹴りだす。チームを応援するために、この日のチームジャージーのカラー、赤を身にまとったトゥーロンサポーターから安堵の息が漏れた。
 試合後、サポーターに感謝するために観客席の前を一周する選手たちの中に、バスタローも戻った。「自分はキャプテンであり、フランス代表でもある。決して挑発に乗ってはいけなかった。チームメイトをこんな状況に陥れた自分に腹が立つよ。でもチームは最後まであきらめずに闘ってくれた。彼らを誇りに思う」
 テレビで解説していた元フランス代表FLセバスチャン・シャバルは、「トゥーロンがこの勝利をもぎ取るためには、バスタローのレッドカードも必要だったのかもしれない」とコメントしている。
 第3節終了後の順位は11位。TOP14のシーズンは長い。二人のリーダーの下、どんなチームに育っていくのか、楽しみに見守りたい。
(Interview / Miyuki Fukumoto)

トゥーロン市内の中心にあるホームグラウンド。1920年に、トゥーロン出身の歌手フェリックス・マヨールが使われなくなっていた自転車競輪場を買い上げ、スタジアムの建設費を寄付して建設されたことから、スタッド・マヨールと名付けられた。増設を重ねて、2017-2018シーズンから18,200席になっている(Photo / Miyuki Fukumoto)
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