運動量で勝負。ハードワーカー。(撮影/松本かおり)
いまフィジーにいる。勝利を手に笑った。
ワールドラグビー パシフィック・チャレンジ2018に参加しているジュニア・ジャパン。3月9日の初戦ではトンガAと戦い、45-28と快勝した。
FLファウルア・マキシ、NO8テビタ・タタフらのパワーだけでなく、FW全員が勤勉に前進とタックルをくり返した。そうやってブレイクダウンを制したことが勝利を呼んだ。
その試合で80分間、4番を背負ったのが下川甲嗣(しもかわ・かんじ)だった。
派手な活躍はなかったものの、ハードワークを最後まで続けた。ボールと相手によく絡んだ。
この春から早大の2年生になる。187センチ、104キロと堂々の体格。大学1年時からレギュラーに定着し、成蹊大戦以外の関東大学対抗戦全試合に出場した。
その活躍を高く評価され、U20代表候補に招集。合宿を経てジュニア・ジャパンに選出され、海を渡った。
19歳の才能あるFWは、今回の遠征前の候補合宿中、「フィジーにも行きたいし、(ワールドラグビーU20チャンピオンシップが開催される)フランスにも行きたい」と言った。
大学入学以来、第一線で戦い続けている。ハードな日々は長期間に渡る。しかし、やればやるだけ吸収し、成長できる時期。本人もそう理解し、どん欲に上を目指す。
福岡出身。4歳の時に草ケ江ヤングラガーズに入り、修猷館高校でもラグビーを続けた。
7歳違いで高校の先輩にもあたるの兄・桂嗣(けいじ)さんは慶大ラグビー部でプレー。その影響で自身も同じ道を歩もうと考えたが、誘いもあって早大への進学を決めた。
高校時代はU17日本代表に選ばれたが、高校日本代表は候補どまり。大学入学後に得たチャンスを活かし、実力を蓄えている。
今回のジュニア・ジャパン入りとそこでのパフォーマンスは、その先にあるU20チャンピオンシップを戦うスコッドへ入ることにもつながる。経験値がどんどん高くなる。
ブレイクダウンへの突っ込みは激しい下川。しかし、ボールキャリアーとなったときは力任せではない。独自のスタイルを持っているからだ。
「中学まではSOやCTBなど、BKをやっていました。でも高校に入って、FWをやることになった。それが嫌で、FWに転向したくなくて、動き自体はBKのようにやっていたんです」
その意識があるから正面からクラッシュするより、フットワークを使い、ズラして前へ出る。スペースがあれば抜きにかかる。守る側からしてみれば、厄介な相手だ。
高校時代はエースとして自由に動くことが許されていたが、大学入学後、自身の役割が明確になった。ボールタッチを増やし、前へ。その任務を、自身の長所を活かして何度でも遂行する。
大学入学から1年足らずで体重を10キロ増やし、推進力も高まった。トンガA戦では、その力が通用するところが何度もあった。その力をどんな相手にも、コンスタントに発揮できる選手になりたい。
「大学に入ってラグビーの知識が飛躍的に増えました。U20の合宿に呼んでもらって、高校時代から全国レベルで活躍してきた選手と一緒にプレーしたり、より高いコーチングを受けて刺激になっています」
成長の旅は、まだまだ続く。