21点差から逆転勝ちの茨城。終盤に攻めまくった。(撮影/松本かおり)
大会いちばんの好ゲームは最後に待っていた。
ラストプレーで勝負が決まった。
8月24日に開幕していた第25回 日・韓・中ジュニア交流競技会『ラグビー競技』の最終日が同27日、水戸でおこなわれた。水戸市立サッカー・ラグビー場が舞台となった戦いのフィナーレを飾ったのは茨城の代表チーム。U18韓国代表(明鍚高校)に38-33と逆転勝ちし、会場を沸かせた。
前半は12-12だったこの試合。後半に入ると、エースCTB金義太の鋭い走りもあって韓国が立ち上がりに3連続トライ。6分までに33-12と大きくリードした。
しかし県花である薔薇のエンブレムを胸に抱いた茨城は、残り20分で4トライを重ねて逆転勝利を手にした。試合終了間際、33-33の同点から決勝トライを挙げたのは宮下龍樹(茗溪学園3年)。右スミに飛び込んで歓喜の時を迎えた。
大柄な相手に動き勝った茨城。勝負の時間帯に運動量で上回り、FW、BK一体となってパスをつなぎ、走った。
チームを率いた和田健一監督(清真学園)は、「(茗溪学園、清真学園を中心に)茨城県には展開ラグビー、はやい攻撃をやろうとする土壌がある」と、防御面を整えることが良いアタックを呼ぶと確信し、準備してきた。
「後半に入って崩れた時間帯がありましたが、いいタックルが出始めてからは、自分たちのスタイルを思い切ってやれていました」
国体予選と日程が重なったため、各校の3年生など主力はそちらに参加していた。この大会は、そこから漏れた3年生や、2年生、1年生で戦った。
そんなチームは、最上級生の奮起と下級生の頑張りで好チームになった。
「県選抜チームが国際試合を2試合戦い、2勝できました(24日には中国に29-22)。選手たちにとっては、本当に貴重な経験となった」
指揮官は目を細めた。
大会期間中、森隆徳コーチ、多辺田正樹コーチ、塚原康貴コーチらとともに、連夜、納豆料理を食べた。「粘り勝ちするぞ」と誓い合った思いが届いた。
主将を務めたFLロッカ 亜蘭(茗溪学園3年)も、「どの学校の選手にも大きくボールを動かし、サポートする意識があった」と言った。
「ミスが目立っていましたが、FWを当ててそれを減らし、相手のキーマンである13番を抑えてからうまくいくようになりました」
ロッカ自身は高校2年時に父・ピーターさんの出身地、アイルランドに1年間留学したため、4年目の高校生活。そのため国体には出場できなかったが、このチームでの時間を楽しんだ。
「国際試合を経験できていい刺激になります。夜は(各国の他競技の選手たちが参加しての)パーティーがあるので、そこでも頑張りたい」
県内の仲間と最後まで全力を尽くす。笑顔でそう誓った。
ピッチの上では熱くなり過ぎることもたびたびある大会だったが、各試合後には両チームが笑顔で交歓した。若くして自分のチーム以外の代表としての名誉を背負って戦い、海外にも仲間を作った。
この夏の日々は、参加した選手たちにも茨城県のラグビーにも、大きな財産となった。