豪快に走るU17日本代表PR、秋田工2年の金森栄人。(撮影/松本かおり)
11トライの快勝で締めくくった。チームとしてのこの夏の戦いは終わったけれど、個々にとっては、さらに大きく成長する日々の始まりでもある。
8月27日、第25回 日・韓・中ジュニア交流競技会『ラグビー競技』の最終日が水戸でおこなわれ、U17日本代表がU19中国代表に73-5と大勝して同大会の全日程を終えた。同代表は3日前に戦ったU18韓国戦でも113-0と大勝しており、2試合で186得点、5失点というパフォーマンスだった。
大柄な選手たちを揃えながら、その多くが普段はセブンズに特化してプレーしている中国代表。キャプテンを務めるNO8李海涛(山東省)ら19歳の選手を含むメンバーで構成されたチームだったが、意思統一されたU17日本代表からラストプレーで1トライを奪うのがやっとだった。
赤白のジャージーが接点で圧倒したからだ。日本のボールを大きく動かす攻撃にも、中国は翻弄された。勝者の方が規律も高く、体格差と年齢差は何の問題にもならなかった。
チームを率いた浅野良太同代表監督(國學院栃木)は、選手たちの短期間での成長を愛でた。
指導陣が一方的に考えを伝えるのではなく、自分たちで考えられるチームにすることを目指し、それが実現に向かったからだ。
「この年代にして初めての日本代表となるわけです。そういった特別感を与えながらも自分たちで考え、成長することを求めました」
準備にこだわったから、納得いく結末を迎えられた。8月上旬の菅平での合宿と大会前の合宿で、計6日間、約20回の練習を繰り返し、首脳陣と選手たちの頭に浮かぶキーワードやゴールが一致するようになった。
プレー面では、スリーS(スピード、スペース、ストロング)を柱にした強化を進める中で、圧力もそこに加わえて強みを作った。オン・ザ・ボールとオフ・ザ・ボール、オン・ザ・フィールドとオフ・ザ・フィールドの意識を大切に、人間性も高めた。
「小泉(怜史主将/早稲田実2年)を中心に自分らで考え、行動するチームになった。今日の試合は、(やってきたことの)集大成を出す場でした」
「80分すべて、自分たちのやりたいことをやり切れたわけではない。そこは悔しい」と指揮官は振り返ったが、前半6分に小泉主将のトライで先制したチームは47-0でハーフタイムに入る。後半の序盤はなかなか流れに乗れなかったけれど、さらに4トライを重ねた。
評価すべきは、攻守において15人制の常識外だった相手にも乱れなかったことか。セオリー外というよりは、まったく意図されていない攻撃や、反則の意識の希薄な防御にも惑わされず、スマートに攻め、精度高く守った。
SO吉村絋(東福岡2年)が巧みに球を配り、周囲を動かした。FB高本幹也(大阪桐蔭2年)は積極的に走り、アウトサイドのランナーを活かす。FWではNO8高武俊輔(尾道2年)がスペースによく走り込み、好機を作り、フィニッシュも。後半出場したPR葛西拓斗(流経大柏2年)、SH丸尾祐資(報徳学園2年)もそれぞれ持ち味を発揮した。
試合後、アイスバスで楽しそうにクールダウンする選手たちを横目に浅野監督は言った。
「(それぞれの選手は)チームに戻れば、上級生がいてスターターでない選手もいます。そういう中で、今日までこのチームでやってきた(ラグビーに)取り組む姿勢を普段からやれるなら、状況をかえられるかもしれない。ここで学んだことを還元できたら自チームも変わる」
来春4月には、今春から加わったたラグビーヨーロッパ 男子U18ヨーロピアンチャンピオンシップ(2017 Rugby Europe Men’s U18 European Championship)に日本が再び参戦する可能性もある。その主力候補が今回のメンバーだ。
指揮官は言う。
「7か月後にそこに戻って来られるように、現在の姿から成長を続けてほしい」
浅野監督は、「選手を幸せにすることが大切だと思って来ました」と話し、「このチームを愛し、このチームでもっとやりたいと思う気持ちになってくれただろうか」と自問する。
選手たちにとってこの夏が、U18代表へ、その先の日本代表へと続く道のスタートになればいいな。