なんてポジティブな考え方だろう。
「どうしても通用しない相手が目の前に立ちはだかったら、ワクワクします。結構、皆から変態とかって言われるんですけど…。そこでビビっていたら、終わり。たとえ通用しなくても、ひたすら前に行くことが大事だなと思っています」
福井翔大。東福岡高ラグビー部の3年生だ。8月29日〜9月10日、20歳以下(U20)日本代表の一員としてウルグアイでのワールドラグビーU20トロフィーに挑む。3月から4回に及ぶ候補合宿で戦い抜き、登録メンバー中唯一の高校生選手となった。
U20トロフィーで優勝すれば、昨季までいた上部大会のワールドラグビーU20チャンピオンシップに再昇格できる。笑顔が止まらない。
「最初は不安も多かったのですが、主将の眞野泰地さん(東海大2年)をはじめ、皆が本当に優しい。本当に何でも教えてくれる。ミスしても責められず、むしろ『もっとこうした方がいいよ』と励ましてくれる。過ごしやすい集団だな、と思います」
身長185センチ、体重90キロ。本来はFW第3列のFLやNO8として、持ち前の突破力を披露する。ところが今回のチームでは、未経験のWTBで選ばれた。
チームは攻撃時、黒子役のFWが左右にまんべんなく散るポッドシステムを採用。端から順に1、3、3、1人と並ぶFWのうち、ブラインドサイドFLやNO8はどちらかの端の「1」に入る。「フィールドの端でチャンスメイクする」という点ではWTBと役割がやや似ており、遠藤哲HCは「外側でのチャンスメイクを」と、福井のWTB起用を勧めるのだ。
当の本人はどうか。
「スピード感が全然、違う。簡単そうに見えて難しい。でも、それ以上にワクワクが大きいです。僕が求められているのは、WTBらしいWTBというより、ハイボールの獲り合いや縦のプレーなど、FWらしい動きをするWTBだと思うんです。自分らしさを出しつつ、チームに貢献できたら」
8月。都内での直前合宿では、スピード強化指導に定評のある里大輔S&Cコーチとともに居残り練習を実施。福井はタッチライン際をかけるWTBの動きをイメージし、何度もダッシュを繰り返していた。重圧のかかる大一番を控え、前向きにやれることをやる。
(文:向 風見也)
花園連覇を狙う東福岡のキャプテンでもある(撮影:松本かおり)