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2015組の実弟・伊藤鐘平、U20日本代表入りへ「機動力で差をつける」。

2017.07.10

U20日本代表候補の京都産業大LO伊藤鐘平(撮影:松本かおり)

 20歳以下(U20)日本代表の候補合宿にあたる「TIDキャンプ(U20)」で、ワールドカップ経験者の実弟が生き残りを目指している。
 京産大2年の伊藤鐘平は188センチ、94キロのLOで、神戸製鋼の鐘史を兄に持つ。兄は2012年に31歳で初めて日本代表入りし、2015年のワールドカップイングランド大会にLOとして参戦。歴史的3勝を挙げている。
 兄と同じポジションで研鑽を積む弟は、「兄のようなプレーヤーになりたい」。5月から断続的に続く「TIDキャンプ(U20)」では、こちらも元LOの遠藤哲ヘッドコーチ(HC)からラインアウト時の跳躍技術などを吸収する。くしくも遠藤HCは、古巣のリコーで兄と同僚だった時期がある。その縁を踏まえ、伊藤は笑って充実ぶりを明かす。
「兄のことは小さい頃から応援していたので、遠藤さんの顔も知っていた。それで、今回、遠藤さんが監督なんだ…と! 遠藤さんは僕と同じポジション。ジャンプの時の姿勢や構えなど、細かいことをいろいろと教えてもらえています。僕自身にとってもプラスになっています」
 兵庫県出身。7歳の頃に地元の神戸ジュニアラグビースクールでラグビーを始め、高取台中を経て北海道・札幌山の手高校へ越境入学した。「野球や水泳もやっていて、本格的に(ラグビーをやり始めたのは)高校からです」。親元を離れる最大の目的だった全国大会への出場は果たしたものの、卒業間際にあった高校日本代表の選考は候補止まりに終わった。
 だからこそ、今回の「TIDキャンプ(U20)」参加には並々ならぬ決意を持っている。
「今回は最後まで残る…と。自分は運動量を売りにしているのですけど、高校代表候補の時はそれを出し切れず不完全燃焼のような形になってしまった。今回は何度も合宿がある。その間のフィットネス練習などで、アピールできるところではアピールしようと思っています」
 そんな姿は、遠藤HCから「かわいいですよね。かまいたくなる、というか。食らいついてくる」と目される。一つひとつの練習で存在感をアピールし、最前線にしぶとく生き残る。それは、兄が日本代表で貫いてきた生き様でもあった。
 7月9日には「TIDキャンプ(U20)」の第4回合宿最終日があり、茨城・流経大グラウンドで流経大との練習試合があった。
 相手は、公式戦では外国人枠の規定上同時に出場させられない4名の留学生をいっぺんに起用。「TIDキャンプ(U20)」のメンバーは前半に連続失点を喫するなどし、17−33で惜敗。遠藤HCは今後の改善策を示す。
「コンタクトも高かったし、迫力負けしていたところもあった。僕らは相手を支配できる体格を得ているわけはないので、もう1回、ローヒット(低い姿勢)、ダウンスピード(相手の目の前で沈む動き)をやる必要がある」
 「TIDキャンプ(U20)」にいる35名が28人に絞り込まれてできるU20日本代表のメンバーは、早ければ週明けに発表される。国際統括団体のワールドラグビーへは7月18日までにリストを送り、8月6〜13日にある「TIDキャンプ(U20)」の第5回合宿(長野・菅平、東京・リコー総合グラウンド)を経て、17日、離日。ウルグアイでの「ワールドラグビーU20トロフィー」に挑む。
 流経大戦の後半途中から出て「チームを元気づけようと思っていましたが、それはできなかった」と反省した伊藤は、世界の舞台で走り回るか。同じ「LO4」にリストアップされた自分以外の選手はいずれも身長190センチ以上とあって、「僕が一番、小さい。残るためには、機動力で差をつける」と誓っている。
(文:向 風見也)
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