いままでこの人が信頼されてきたのだとしたら、こういう動きを続けてきたからだろう。
後半からインサイドCTBとして出番を得るや、防御網から鋭く飛び出してタックルを一撃。起き上がってすぐ次のポジションへつき、また似たような形でタックルを放つ。
「最初から、いったろうかと思いました。自分がやるだけや、と」
7月2日、東京・中大グラウンド。20歳以下(U20)日本代表の候補合宿にあたる「TIDキャンプ(U20)」の第3回合宿の最終日午後のセッションがあり、U20日本代表候補は中大と練習試合をおこなった。
8月下旬から始まるワールドラグビーU20トロフィー(ウルグアイ)に向けた選手選考マッチの意味合いを持つこの一戦。タックルで魅した1人が本郷泰司だった。攻めても「空いたところで(自分の身体の芯を相手の正面から)ずらそう」と、相手防御のわずかなギャップをえぐる。
84−7と圧倒も、「うまくアタックができなかった印象がありました」。本番を見据え、いまの自分たちに高いハードルを課した。
「アタックの練習をずっとやってきたのですけど…。きょうは中大さんのディフェンスが前に出てきていて、プレッシャーがかかってミスが多くなった。何回かはハマる場面があって、その時はいいアタックができていた。その回数をもっと増やし、そこをスタンダードにしていかないと」
身長180センチ、体重89キロ。一昨季は京都成章の主将で、全国高校ラグビー大会には怪我を押して出た。昨季は大学選手権8連覇を目指していた帝京大に加わり、悲願を達成したチームで主力組に絡む。大学ラグビー界のレベルにはあまり驚かなかったようで、ルーキーイヤーをこう振り返っている。
「大学ラグビーに慣れたのが大きいです。1年の最初の時はずっと怪我をしていて、秋から試合に出してもらったのですが、最初はどうしてもおどおどしたり、自信がなかったりしていた。でも、どんどん経験を積むことで自分のプレーができてきた」
大学2年で迎える今季は、9連覇と同時にU20トロフィー制覇も視野に入れるか。
U20日本代表は前年度に上部トーナメントのワールドラグビーU20チャンピオンシップから降格したばかりで、遠藤哲ヘッドコーチは1年で同トーナメントに復帰したいと意気込んでいる。
それにはU20トロフィーの優勝がマストだが、本郷は、その目標をあえて口にしなかった。
「上を見るだけじゃなく、一つひとつを積み重ねていくのが大事。いまのままでは絶対に勝てないと思うので、合宿(7、8月に一度ずつ候補合宿がある)を積み重ねるごとにレベルアップをして、最後まで勝ち切れたらと思います」
小さな努力の蓄積が大きな成果を生むと、心の底から実感しているのか。「一つひとつ」「一戦、一戦」と繰り返していた。
(文:向 風見也)