独特の発想力を持つフランスラグビー。
またチャレンジしたい気持ちはあります。
いよいよ始まる秋の日本代表テストマッチシリーズ。アルゼンチン、ジョージア、ウェールズ、フィジーという、すべて世界ランキングでは上位の相手にチャレンジする新生・日本代表で、エース格として期待されるのが松島幸太朗だ。しなやかかつ滑らかなステップと急加速で相手ディフェンスを切り裂く魅惑のランナーは、神奈川県の桐蔭学園高校を卒業後、2シーズンにわたって南アフリカでプレーしたが、その間には練習生としてフランスラグビーも経験していた。世界各地でキャリアを重ねた魅惑のランナーの目に映った世界のラグビー、フランスのラグビーは――。
――松島選手は、桐蔭学園高校を卒業後に南アフリカで2シーズンプレーした間に、フランスでもプレーしたそうですね。
南アフリカの1年目が終わったあと、ラグビーフランスリーグTOP14のあるチームに、練習生のような形で1か月くらい参加させてもらいました。最初、チームに合流して、家の手配とかしてもらって、練習に参加したんですが、最初の印象は『でかいな』という印象でした。
――その前は「世界一の巨人国」と言われる南アフリカでプレーしていても、フランスでは「大きさ」が印象的だったわけですか。
フランスで入れられたのはU23(23歳以下)のチームでした。僕が19歳の頃です。南アフリカはもちろん大きいんですが、僕はU20やU21のチームでプレーしていたので、チームメートもまだ、完全には大きくなっていない印象でした。それに比べてフランスは、U23だったこともあるのでしょうが、本当に大きさを感じました。大きくて、速い。
それに、フランスにはいろいろな国から選手が来ていることが印象的でした。フィジーやサモアのような太平洋諸国から来たアイランダーもいたし、ジョージアのような東欧圏から来ている選手もたくさんいました。
――松島選手は、高校2年のときに選ばれた高校日本代表のフランス遠征で、日本人にはないイマジネーションを感じて、彼らの発想を学ぶためにも海外に出たいと思ったそうですね。
遠征のターゲットにしていたU18フランス代表との試合で、日本が24−18でリードしていて、最後に逆転負けしたんですが、その逆転の仕方がすごかったんです。フランスは最後にFWがガンガンぶつかって前に出て、日本も頑張って止めていたけれど、じわじわと食い込まれていた。その時、相手はいきなりキックパスを大外のWTBに送って、ディフェンスががら空きになっていた大外からトライを取って、コンバージョンも決めて逆転してしまったんです。確かにフェイズを重ねる間に日本のディフェンスは内側に寄ってしまって、外のスペースは空いていたから、適切な判断です。だけど、テストマッチに勝つか負けるかのギリギリの局面で、なかなかできるものじゃない。それを18歳以下のチームが、冷静にあのオプションを選んだことに驚いたんです。
そのとき思ったのが、そういうカルチャーというか、アンストラクチャー(整理されていない状況)でどうプレーするかというイメージをみんなが持ってプレーしているんだろうな、ということ。これは、日本でプレーしていては身につかない。海外に出なきゃと思いました。
――実際に、練習生としてフランスのラグビーを経験した感想はいかがでしたか。
やはり、1人1人が自分の考えを持ってプレーしているな、と思いました。みんなが同じプレーをするんじゃなく、自分の意思で動いている。捕まりそうになったときも、誰かにパスできるかどうかを判断してオフロードパス(タックルされながらのパス)を出す、サポートに入る選手も、自分で判断して、ボールキャリアーとコミュニケーションをとって走り込む。そういうところがすごく勉強になりました。
――またフランスでプレーしてみたい気持ちはありますか?
もちろん、機会があればまたプレーしてみたいです。前回はU23で練習しただけで、まだシニアチームではプレーしていませんし。今だったら、南ア時代やスーパーラグビーで知り合いになった選手もフランスで何人もプレーしているし、そういう選手と対戦してみたい気持ちもあります。
――そのラグビーフランスリーグTOP14のRCトゥーロンに、五郎丸選手が挑戦しています。
RCトゥーロンは、間違いなく世界でも一流の選手が揃っているチームですよね。その中でプレーするのは、他のチームではできない勉強になりますよね。ものすごい経験になると思います。
―― 一部では言葉を心配する声も聞かれますが、松島選手の経験からするとどうでしょう。
僕もフランスに行ったときにフランス語を勉強したので、難しさはわかります。発音も日本人には難しいし、とっさのときに、英語のようにパッと単語が出てこない。そういう意味では、フランスでプレーすることはハードルが高いと思います。僕の場合は、長くなかったせいもあるけど、覚えられたのは挨拶くらいでした。とはいえ、フランスにも英語圏から来ている選手は大勢いるし、きっとそういう選手が助けてくれると思う。そんなに心配する必要はないと思います.
――松島選手も世界各地でプレーしていますが、外国に出てプレーする喜びはどういうものがありますか。
それぞれ違う国のラグビー文化に触れる楽しさがあります。そして、そのチームを去った後でも、何年か経ってから、インターナショナルの舞台で元チームメートと会ったりする。お互いに高いレベルに上がっていって、再会することがあったらそれはすごい楽しみです。僕自身、2015年ワールドカップで南アフリカと対戦したときは、向こうに何人か、元チームメートがいましたし、そういうところでお互いの成長を感じるのはすごく楽しい。
――さて、いよいよ2016年秋の日本代表シリーズが始まります。
アルゼンチンは、スーパーラグビーで対戦している選手がいるし、日本にもサンウルブズで対戦して、身近に感じている選手がいますし、こちらの経験値もメンタルの強さも上がっている。エディーさんの時代は厳しい練習メニューを与えられて、厳しい空気の中でやっていたけれど、今度は選手自身が率先して厳しい練習に取り組むチームになっています。チームとして成長して、2019年のワールドカップに向けてパフォーマンスを高めていきたいです。
【松島幸太朗(まつしま・こうたろう)】
1993年2月26日、南アフリカ共和国プレトリア生まれ、23歳。ジンバブエ人の父と日本人の母の間に生まれる。3歳で来日し、東京都で育つ。中学1年生時に南アフリカに戻り、ラグビーを始める。1年後、日本に戻り、ワセダクラブRSに所属。 桐蔭学園に進学後は1年時からレギュラーを獲得。2年時で花園準優勝。3年時は フルバック(FB)で桐蔭学園初の花園全国制覇に貢献(東福岡と引き分けで両校優勝)。卒業後、2011年から南アフリカのシャークス(スーパーラグビー)留学を経て2013年12月、サントリーに加入。2014年度トップリーグベストフィフティーン受賞(CTB)。日本代表では2014年のフィリピン戦で初キャップを獲得し、2015年ワールドカップにも出場。2016年スコットランド戦まで18キャップ。スーパーラグビーでは2015年はワラタズ、2016年はレベルズでプレーした。
◆◆◆ WOWOW番組情報 ◆◆◆
★「ラグビー フランスリーグ TOP14」
ラグビー世界最高峰のプロリーグ「TOP14」。五郎丸歩選手が所属するRCトゥーロンの試合を中心に年間57試合放送予定!
第10節:
ラシン92vsモンペリエ 11/6(日)午前4:30〜 [WOWOWプライム] ※生中継
リヨンvsRCトゥーロン 11/6(日)深夜0:00〜 [WOWOWライブ] ※生中継
第11節:
RCトゥーロンvsスタッド・フランセ 11/14(月)午前4:45〜 [WOWOWライブ] ※生中継
ラ・ロシェルvsトゥールーズ 11/14(月)午前7:00〜 [WOWOWライブ]
※11/13(日)夜10:45〜 WOWOWメンバーズオンデマンドで先行ライブ配信
■詳しくは、WOWOWラグビーオフィシャルサイト(wowow.bs/rugby)をチェック!
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