(撮影/南 大庸)
南国らしくない鈍色の曇り空の中、青色のU20韓国代表が左隅のトライラインを越えて勝利を決めた。18歳以下のセブンズアカデミーメンバーで構成されたU20セブンズ日本代表は予選プールを全勝で突破したが、カップ準決勝でつまずいた。サドンデスの末、U20韓国代表に19−24で敗れ、アジアラグビー U20男子セブンズシリーズ マレーシア大会(7月30日〜31日/ジョホールバル)での優勝をつかむことはできなかった。
肩を落とすメンバーたち。試合後の体力低下を防ぐためのアイスバスエリアに入っても、言葉は少なかった。
そんな中、主将の古賀由教(東福岡3年)が口を開いた。
「まだ終わってないぜ。3位を狙おう! 銅メダルか4位かでまったく違うぞ」
チームのムードメーカー的存在の池島龍門(常翔学園3年)もそれに続いた。「負の氷」が溶けたように、たちまたいい雰囲気を取り戻したジャパン。自然とリカバリーゼリーへと手がのびる。お互いに冷たい水を掛け合うなどリラックスした表情が戻った。
準決勝で敗れたことで、次の試合までの間隔が一気に短かくなった。3位決定戦に向けてアップを開始した途端、大粒のスコールが降り始め、雷鳴がとどろく。ウォーミングアップも中断となり、選手たちは控え場所に戻ってきた。
狭いテントで肩をすくめながら待機している途中、古賀、木村朋也(伏見工3年)、山沢京平(深谷3年)、池島龍の4人がトリッキーな手さばきでパスゲームを楽しみだす。つられて2年生トリオの福井翔大(東福岡)、松永貫汰(大阪産業大学付属)、西川虎哲(京都成章)もリラックスした表情で同級生トークを始めた。約1時間の中断中、風も吹き、雨に濡れたジャージが体温を奪おうとするが、すっかり次の試合に向けて気持ちが明るくなったジャパンにとっては、それも気にならなかった。
そして迎えた3位決定戦。相手は地元観客の声援に後押しされたU20マレーシア代表。しかしジャパンは、そんな歓声を一気にため息へと変えた。開始早々西川のトライで先制すると、今大会何度もロングゲインを見せた猿田湧(秋田工3年)が右ラインを走り切り連続トライ。さらに1トライを追加すると、勢いは後半に入っても止まらなかった。前日のスリランカ戦でも好タックルを見せた松永が、またもやビッグヒット! これでますます勢いを増したジャパンは、相手をノートライに抑え41−0で快勝。銅メダルをつかんだ。
短い期間で数試合をこなすセブンズ。敗れてもくよくよしている暇なくすぐに次の試合が迫るため、落ち込んでいる時間はない。いかにマインドセットできるかがチームに求められるが、急造チームでは難しい。その点、今回のメンバーはセブンズアカデミーで何度もともに汗を流してきたメンバーが中心。メンバー間の意識をすぐに変えられる要因となった。
中学校3年生時からのアカデミー参加で、すでに3年間トレーニングを積んできた猿田は「アカデミーでトライアウトに選ばれて、そこから自分のラグビー人生が濃くなった。まさにターニングポイント」とその重要性を語った。また箸本龍雅(東福岡3年)は、「セブンズアカデミーからこの遠征に参加でき、世界の厳しさやアウェー感を学ぶことができる絶好の機会でした。選んでいただいたことに感謝したい」。今後各代表から声がかかり続けるであろう逸材も、今遠征の意義についてそう話した。
徳永剛ヘッドコーチは「試合に勝たせてあげられなかったことは悔しい。ただ選手たちは高校生ながら十分にU20で通用することを実感できたと思います。この中から必ずセブンズで上を目指したいという選手が出てくるはず。そのルートを作ってあげることが自分たちの役割だと思います」と話した。
6月のアカデミー合宿を経て、7月の全国高校生7人制大会の「アシックスカップ」、そして今遠征とセブンズ漬けの流れを作ることで手応えを感じ取った。その流れをさらにのばすことが自分の使命と語る。
今大会、男子はスリランカがカップ決勝で韓国を38-0で破って優勝。女子は7-5でタイが香港の猛攻を凌いで優勝した。
3位決定戦の表彰を終えて、銅メダルを首から下げたU20日本代表選手たちは、リオ五輪本番直前のシニアチームには金メダルを獲得してほしいと口々に言っていた。同時に彼らの視線の先には東京五輪がある。そこには、メダルをかけた自分たちの姿もあるかもしれない。