前半19分、WTBモエアキオラ(右端)の1本目のトライを喜ぶU20日本代表。
前半の圧倒ぶりは地力アップを感じさせた(撮影:出村謙知)
イングランドで行われる大会の初戦の相手が南アフリカ。
当然ながら、すでにフル代表キャッパーも含んでいたU20日本代表が意識したのは、9か月前に同じジャージーを身のまとった先輩たちが成し遂げた偉業。しかも、目指したのは史上最高のアップセットとも称された“あの試合”の再現ではなく、それを「超えること」(中竹竜二ヘッドコーチ)。
「去年のワールドカップは最後に逆転トライを奪って勝ったが、今年は先にとって、追いつかれるのをしのいで終わる」
ブライトンから約400キロ離れてはいるものの、同じように超近代的なサッカースタジアム、マンチェスター・シティ・アカデミー競技場で行われたワールドラグビーU20チャンピオンシップ2016開幕戦。
最初の40分間、桜のジャージーのDNAを受け継ぐ20歳以下の若者たちは、ほぼ完璧と言っていいほどゲームプラン通りのプレーを続けた。
「自分たちからアクションして仕掛けられた。思い通り」(FL古川聖人主将)
試合開始直後の10分間こそ、自陣に釘付けになるシーンが多かったが、粘りのディフェンスで簡単には得点は許さない。
トライを取りに来た南アフリカのキックパスはFB安田卓平が競り勝ってピンチを防ぎ、自陣深くのラインアウトからモールを組まれてもFW陣がしっかり対抗。
9分に最終的にはこの試合のマン・オブ・ザ・マッチに輝くことになる南アフリカのFLにシャープな走りで縦に突破されて先制を許したが、その後は日本のいい面ばかりが目立つ展開となる。
「自分たちのフェイズの中でアタを使ってアタックすることができた」
先のアジアラグビーチャンピオンシップで、共にフル代表のメンバーとして活躍したCTB前田土芽がそう語ったとおり、切り札とも言えるWTBアタアタ・モエアキオラの決定力を最大限生かすかたちで連続3トライ。
19分の1トライ目は中央付近のラインアウトから一気に走りきり、25分の2トライ目はFWがモールを押しこんだ後のキックパス、30分の3トライ目はゴール前で焦らずフェイズを重ねて。
「前半は我慢できてトライが取れた。嬉しかった」
ハットトリックヒーローがそう振り返る、地に足がついた試合内容で主導権を握っただけに、強国・南アフリカに対する連続金星に期待は高まった。
「前半はプラン通り。もっと突き放したかったくらい」(中竹HC)
前述したWTBモエアキオラの3連続トライでいったんは19−7までリードを広げた日本だったが、前半終了間際に南アフリカに1トライを返されてハーフタイムのスコアは19−14。
「きちんと敵陣に行って戦うこと」(中竹HC)という指示が出て臨んだ後半だったが、いきなりキックオフがミスとなり、1分に再び南アのFLに縦に突破されて逆転されると、後半は一方的に6トライを重ねられた。
前半の戦いぶりを修正して早い球出しから、速くて、長いパスも織り交ぜてタテに突破し始めた南アフリカに日本のディフェンスが追い付かないシーンも目立った。
「後半は自分たちのやりたいディフェンスができなかった。立ち上がるところまではできているが、立ってからの行動、ディシジョンして、前を見てというところが、まだ甘かった」
最終スコアは19−59にまで引き離された。
「インターナショナルなランナーに一番いいところを走られると、まだまだ止められない。そこをなんとか、この大会中に修正したい。アタックもインターセプトされたり、あいまいなアタックが多かった。もっとチームで取ることを意識したい」(中竹HC)
前半、自分たちのペースで戦えたからこそ、はっきりした課題。それをクリアしての「ビート、レ・ブルー」、第2戦の大一番フランス戦に臨む。
(文:出村謙知)