マイケル・ストーバーグがオーストラリアから来日したのは2016年。その後は何度もラグビー日本代表入りを期待されながら、応えられずにいた。ワールドラグビーが定める資格獲得のための連続居住年数を、様々な理由でクリアできずにいた。
ところが24年のレギュレーション変更に伴い、潮目の変化に立ち会えた。今年、同国出身のエディー・ジョーンズヘッドコーチに日本代表へ呼ばれた。7月4日のイタリア代表戦(東京・秩父宮ラグビー場/〇27-10)で初キャップを得た。身長202センチ、体重116キロの34歳は、おもにモールの攻防で評価される。
「ここまでずっとチャンスを逃してきていて、もう無理なのかなと思っていたなかでエディーさんが機会を作り、ここまで引き上げてくれました」
話をしたのは11月3日。オンライン取材に登壇した。
遠征先のカーディフで、新設ネーションズチャンピオンシップの後半戦を7日に控えていた。ウェールズ代表戦を皮切りに、約1週間おきにスコットランド代表戦、イングランド代表戦と敵地で実施。その翌週には順位決定戦に挑む。
何よりツアーでは、対戦相手の実力を問う以前の試練が課される。肌寒い欧州の気候、ジョーンズ体制が求める高強度のセッション…。ストーバーグは己に言い聞かせる。
「プロである以上、天候には慣れるしかありません。与えられた条件のなか、風邪の予防などでできることは全てしていきたい。こういう状況ではマインドセットが大事。コントロールできることだけをコントロールする。天気のようなコントロールのできないことにストレスを感じないことに、重きを置きます」
ストーバーグの務めるのはFW2列目のLO。空中戦のラインアウトで主軸を担うとあり、長身が請われる。世界的に小柄といわれる日本代表が人材難に陥りやすい位置でもあるが、最近は陣容が充実する。
身長201センチのワーナー・ディアンズは、ニュージーランド出身の共同主将だ。最近は自国のハリケーンズに加わり、国際リーグのスーパーラグビー優勝。世界屈指の大型アスリートと目される。さらにオーストラリア出身で身長208センチのハリー・ホッキングス、南アフリカ発で身長205センチのルアン・ボタが並ぶ。
2メートル超のタレントが代表のポジションを争った末、列強国のラインアウトに上空で圧をかけている。10月24日のフィジー代表戦では、身長195センチのジャック・コーネルセンの読みも冴えて相手のボール確保に乱れをもたらした(秩父宮/●28-34)。
日本ラグビー史上例を見ないこの状況を、ストーバーグはこう捉える。
「皆、素晴らしい関係性を築いています。練習では激しくやり合う。その結果がフィジー代表戦にも現れました。これからあるヨーロッパとの試合では、向こうのラインアウトにプレッシャーをかけることでどれだけこちらのボール保持率を高められるか(が鍵)。これはLO同士で話していることです」
このエリアを教えるのは、身長191センチの伊藤鐘史アシスタントコーチだ。長身選手を相手に工夫と分析とスピードで対抗してきた元代表LOのもと、ストーバーグは新たな知見を吸収できるという。今夏、ラインアウトの後のモールを鍛え直したのを踏まえて語る。
「弱点が強みになってきています。空中戦のほか、モールのディフェンスでも徐々に力をつけている。ここについてはフランス代表戦(7月18日/東京・国立競技場/●15-42)が大きな教訓になっていて、それ以降のゲームでは前線の選手が低い姿勢で強く支えるのを意識。これからのゲームでも(欧州諸国の特性上)モールが増えてくると思うので、そこでどれだけ勝っていけるかを重視します」
翌年は母国でワールドカップがある。視線の先の大きな舞台が、疲れた我が身を奮い立たせてくれると通称マイキーは述べる。
「とにかくワールドカップに出たい。この思いが自分を前に突き動かしています。エディーさんにそんな話をしたことも覚えています。若い選手が多いこのチームで、たくさんエナジーをもらえるのも大きい。よいタレント、人間性の皆に囲まれることで、このチームにもっと貢献したいという思いも強くなりました」
ハイパフォーマンスコーディネーターのジョン・プライヤー氏らの肉体強化メニューを取り組むと、「身体がうまく反応する。成長を感じられる」。年齢を重ねてなお伸び盛りと言いたげだ。
