ラグビーリパブリック

何も起きていないのが怖い。ジムにこもる藤井達哉、明大2連覇達成へ求める試練。

2026.11.05

藤井達哉[明大/NO8](撮影:長尾亜紀)

 いつもトレーニングジムにこもっていると、周りに感心される。

 藤井達哉。明大ラグビー部の4年生だ。身長179センチ、体重99キロの肉体を隆起させる。

 入学時と比べ、6キロほど大きくなった。もちろん、筋肉を中心に増やしてきた。

 世田谷区内のグラウンド脇のウェイト小屋へ入るのは、最低でも「1日2回」。午前中にチームに課されたメニューを消化し、夕食の前後に個別で「足りないところ」を追い込む。最近、注力するのは背中だ。

 すでにほとんどの単位を取った本人は、照れたように言う。

「3年生までは授業にしっかり出て、空き時間にウェイトを。…いまはもう、暇です」

 4年生になってから増えた自由時間は、ケアに充てることが多い。

「遊びに行かないことはないですが、やることはやってからにします。でないと、後悔というか、弱くなった感じがあります」

 タフな習慣を築いたのは東福岡高の1年時だ。折しもパンデミック下。住んでいた寮から外出してよかったのが日ごとに「1時間」までだった。

「ただ、ウェイト(ジム)に行くのなら2時間でもよかったんです。最初はかっこいい身体になりたくて、練習後とかの時間を見つけて」

 おかげで3年時には主力選手として冬に全国制覇も、各地の俊英が集まる明大ではよりアップデートしなくてはならなかった。自ずと「1日2回」のノルマを定めた。

「高校レベルでは自分はフィジカルが強いと思っていたんですけど、大学レベルになると通用しないところがあった。まずは体重を上げる。頑張ってやりました」

 大阪府出身。少年時代は大阪の堺ラグビースクール、吹田ラグビースクールで楕円球を追った。年末年始は、近所にある東大阪市花園ラグビー場で全国高校大会を観戦。ラグビーの盛んな地元の実力校より、入学前に高校日本一6度の東福岡高に惹かれた。

「何か、オーラが違うな、かっこいいなと。立ち振る舞い、歩き方、集団での行動が。FW、BKが一体となったラグビースタイルも好きでした」

 越境入学。親元を離れてもホームシックにはならなかったが、親のありがたみには気づいた。毎日の洗濯を誰にも任せられなかったからだ。腹が減った時にも実家のよさを確認した。寮の食事だけで足りなければ、仕送りをやりくりして自ら夜食を用意したものだ。

 競技人として得たのは成功体験だ。高校2年時には戦力十分と謳われながら全国8強止まりも、「なぜか、自分たちの代は負けないだろうとずっと思っていました」。果たして、ラストイヤーとなった翌年度にリベンジを達成。ひとつの皮膚感覚を掴んだ。

「日本一のチームってこんな感じなんだろうな、というのがわかったというか…。試合をする前から、優勝するだろうなという自信があった。厳しい練習もやっていましたし、メンバーも集まっていたので」

 明大でも昨年度、頂点に立った。シーズン中盤から対話の量を増やし、戦術を簡潔にした結果だ。

「大学では多分、個々のスキルがいい奴だけを集めても日本一にはなれない。ミーティングをしっかり重ねて、プレースタイルを見つけて、それを試合で発揮するのが大事です」

 2連覇を目指す今季は副将を任され、攻守に光る。

 ビルドアップした「背中」のパワーをタックルとスティールに繋げるうえ、突進でも光る。力をつけながらも、ただの力任せではない。

「思いっきりぶち当たるというより、コントロールできるように。ワンステップで抜くとか、当たれる体勢の時には当たるとか」

 11月1日には東京・秩父宮ラグビー場へ現れ、関東大学対抗戦Aの慶大戦で2トライを刻んだ。48-26で開幕5連勝を決め、プレイヤーオブザマッチに輝いた。

 おごらずに前を向く。

「(総じて)1対1で負けている画面もあった。まだ、甘いかなと。全員で気を引き締めて、まとまっていきたいです」 

 優勝した前年度はシーズン中盤まで消化不良気味だったのに対し、今秋は好ゲームを重ねている。各々が磨いてきた才能を、展開攻撃や接点でのファイトに活かす。

 順調にも映るその状況について、藤井は「いい形で成長していっている」としつつ「あまり何も起こっていなくて、逆に怖いです」。頂点に辿り着くには試練を乗り越えなければならない。その皮膚感覚がある。

「(本来は)どこかで何かがあって、それに対してチーム全員で一丸となって考え、乗り越えていく感じなのかな、と思います」

 11月22日には、帝京大とぶつかる。一昨季まで全国V4で、夏合宿では17-42と敗れた相手をにらむ。

「次、勝たないと、優勝は見えてこない」

 これから試練が発生したとしてもまるごと受け入れ、克己し、最高の結末を迎えたい。

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