大敗が転機となった。
専大ラグビー部はこの秋、加盟する関東大学ラグビーリーグ戦1部で上位陣から開幕2連敗。特に9月20日の2戦目では、東洋大に0-87と圧倒された。
会場の埼玉・熊谷ラグビー場で厳しい現実を受け止めた学生たちの様子を、石倉俊二監督は前向きに振り返る。
「こんなに差がつくわけがない。ただ、タックルに行かなければこうなるよね。もう1回、気持ちを(作り直して)…。こういう話を、選手たちでしてくれました。ここから、変わった」
克己したのを結果で示した。続く4日、埼玉・セナリオハウスフィールド三郷で関東学大に競り勝った。24-22。前年度に王者の東海大、東洋大とともに大学選手権へ進んだクラブを、石倉の目指すロースコアでの戦いで制した。
18日には熊谷のBグラウンドで流経大に25-55で屈したが、終盤に留学生選手には走られるまでは僅差の勝負に持ち込んでいた。
1部を戦うのは5シーズンぶりだ。現役学生はその舞台を知らない。就任4季目の石倉俊二監督は言う。
「1試合、1試合、皆、成長してくれています。やっと1部の戦いに慣れてきた。もう少し力を発揮できれば十分に通用すると選手たちには伝えています」
25日。今年度1勝1分けの立正大を三郷に迎えた。再三、好機を逃す悔やまれる展開ながら、28-28で引き分けた。
ラストワンプレーでスコアできた展開に「(最後は)助けられたというか。いいところもありつつ、悪いとこもある感じですかね」と淡々と振り返る4年生は大谷亜蓮。下の名をあれんと読む。
身長181センチ、体重105キロ。FW2列目のLOを担う。件の東洋大戦後、こう誓っていた。
「もう一度、原点に立ち返る。接点で負けたら試合を作ることができない。まず、トライを獲ってくれるBKにボールを出すという、FWの仕事を果たすことから始めよう」
相手ボールのラインアウトがあれば、上空での捕球役とその周りに立つ相手との間に身体を入れる。モールの進撃を未然に防ぐ。
攻めては「ボールを出す」というタスクに注力した。スイープだ。味方走者がタックルに倒された地点へいち早く到達し、身を挺して相手のスティールを引きはがす。
出身校での教えが活きているという。
「高校は国学院栃木高。細かいブレイクダウン(接点)での動きを徹底するチームだった。泥臭いことをできるように(と意識してきた)」
その職人集団には在籍当時、きらめく星がいた。
伊藤龍之介。2年時に全国準優勝を果たした際の正SOで、今年7月には明大4年にして日本代表デビューを果たした。高校3年時には抜群のリーダーシップで主将を務めた同期のいまを、大谷は当然といった様子で見ていた。
「どんな場所に行っても自分のプレーができて、緊張をするタイプでもない。何か、すぐ大舞台へ行っちゃうんだろうなと。ちょっと(想定より)早かったですけど、そこまでの驚きはないです」
名手と同級生になったのは、友人の誘いがあったからだ。
業務の関係で来日したナイジェリア人の父と日本人の母との間に生まれ、22年間この国に住んできた大谷は小学1年で埼玉のアルゴラグビースクールに加入。中学時代は野球に転じて「打つほうより守備」が好きな一塁手となったが、ともに楕円球を追っていた山田壮(現青学大)に通称「コクトチ」に誘われ「どうせなら強いところでやってみたいと、またやり始めた」という。
大学でも競技を続けるのは自然な流れで、高校の先輩だった吉田温人(現日野ドルフィンズ)がいた専大を選んだ。
ねぎとろ丼をはじめ寮の食事がうまく、下級生の頃からのびのびできる雰囲気も好きだ。
「ラグビーがなくなったら自分に何が残るんだろう、みたいな。何もなくなった自分が怖い」と卒業後の現役続行への道を模索しつつ、ラストイヤーを楽しむ。
「目標は選手権出場。それに向けて、4年間、頑張ってきた仲間と一緒に勝ちたいですね」
クラブにとって特別なシーズンを、自分たちにとっても特別なものにするつもりだ。
