マツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)に所属する新人ウイングの岩本総司には、中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)との『広島ダービー』で負けられない相手がいた。
「向こうの同期が全員知り合いなので、アップ前に目を合わせたりもしたし、『広島ダービー』は相手のエナジーもすごいので、負けたくないと思っていました」
中国RRの大卒新人のうち、特に同志社大学の同期であるプロップの三輪拓翔とは4年間ともに寮生活を送り、「イジったり、イジられたりのいい関係」という仲だ。4年生の春には同じタイミングでけがをしたため、「二人でウエイトトレーニングを永遠にやっていた思い出があります」と切磋琢磨してきた。
仲が良かったぶん、互いを意識する存在でもあった。「ポジションは違うけど、三輪はスクラムの最前線でめちゃくちゃ体を張るので、僕も負けていられないと思って頑張って体を当てていました」。
10月24日、再会の機会が巡ってきた。岩本はリーグワンライジング2戦目の『広島ダービー』にウイングで先発出場。SA広島は56対10で勝利した。
ただ、アタックでは大外のウイングまでなかなかボールが回って来ず、ハイボールキャッチという強みを生かす機会もなかった。「個人的にはディフェンスをしている時間がほとんどで、不完全燃焼なところはありました」と悔しさを残した。
それでも、チームにエナジーをもたらす岩本らしさは発揮していた。前半をベンチで見守った中国RRの三輪は、「大外であれだけ声を出して状況を教えてくれるのは、目線が前になってしまうフォワードにとっては助かると思うし、そういう目立たないプレーでも貢献しているのはやっぱりあいつのすごいところです」と、対戦相手としてプレーする同期に刺激を受けていた。
岩本は前半限りで交替し、後半から出場した三輪とはすれ違う形となった。同じフィールドでは戦えなかったが、「外から見ていて、『やっぱり三輪だな』って思いました」と元チームメートのプレーに見入っていた。
「寡黙なのでプレー中も落ち着いているけど、コンタクトの場面になるとあいつのヒットスピードはすごいです」。同期の迫力をあらためて目の当たりにしながらも、「少しでも一緒にプレーできていたら、絶対に吹っ飛ばされるけど、真正面から思いっきりいっていました」と勝ち気な一面をのぞかせた。
岩本は今年4月にSA広島に加入。「練習中の熱量もすごいし、ディテールにこだわってやっているので、練習時間はそんなに長くないけど、体も頭もめちゃくちゃ疲労度があって、充実した毎日を送っています」と、ディビジョン2に昇格したチームで濃密な日々を過ごしている。
「毎日の練習で120%を出すことを意識しています。そうした日々の積み重ねがいまの自分を作ると思うので頑張ります」
新シーズンの目標は「まずはリーグワン初キャップをつかむこと」。12月の開幕に向け、「まずは強みを生かしてプレーする。ブレイクダウンの部分やゲームスピードへの適応は改善して、D2で戦える体作りや頭の部分ももっともっとやらないといけない」と課題を見据える。
大学からリーグワンへとステップアップし、新たな挑戦が始まった。この先もラグビーでつながってきた選手たちと、またフィールドで巡り合うはずだ。「楽しむよりかは負けたくない方がやっぱり強いです」。どんな相手にも負けたくない。SA広島の新人ウイングは勝ち気に満ちている。
(湊昂大)
▼周辺の証言
FB﨑口銀二朗
「岩本は同じ同志社大学出身で、チームの士気を高めてくれる熱血系のウイングです。ハイボールキャッチがとても上手なので、そこは自分も見習いたいです。練習中も常に元気で勢いがありますが、今日も試合になるとさらに一段階レベルアップして、大外から勢いを出してくれました。同志社のウイングにはあまり熱いイメージはなかったですが、めっちゃガツガツ系のパワフルな選手なので、そういうところを前面に出していってほしいです」
