躊躇がない。
東洋大ラグビー部3年のシオネ・テネフフは、高速で走るダンプカーのようにコンタクトを重ねる。
攻めてはタックラーを蹴散らして前に出て、守っては猛々しい出足と衝突でランナーを後退させる。
身長187センチ、体重107キロで首回り、胸板、足腰を隆起させた22歳は、FWの第2、3列を主戦場とする。昨季オフに両肩を手術したばかりなのに、好んでぶつかり合いへ挑む。
積み重ねに自信があるから、恐怖心を抱かずに戦える。
「頑張って、いま、出し切ります。ずっと個人練習でやっているから、怖くないです」
トンガ出身で3人兄弟の次男である。トンガカレッジアテレでプレーしていたら、東京の目黒学院高にスカウトされた。第一線で競技を続けるべく、家族に後押しされて誘いに応じた。皆で入る「お風呂」などにカルチャーショックを受けつつ、与えられた環境に感謝してきた。
「日本は、チャンスがいっぱいありますね。ラグビーのほうも、学校(進学)のほうも」
高校では思うに任せず。ルーキーイヤーはウイルス禍で入国が遅れ、2年目からは怪我を負った。3年目も不完全燃焼に終わったのだが、竹内圭介監督の母校である東洋大に誘われた。
大学で指揮する福永昇三監督が、「練習を見れば、ポテンシャルが違った。ちゃんと鍛えれば大成するだろうなと。足も速いので」と看破したからだ。隠れた逸材を他校に気付かれる前に入学へ取り付け、「競合、なかったです」と微笑む。
大学1、2年生時も故障がかさんだ。しかし、その激しさを指揮官は疑わず、3シーズン目のテネフフへ「あなたの人生にとって、今年が全てだよ」と声をかけた。春先からLOで起用し続け、国内リーグワンのクラブへアピールするよう促す。
「初めてじゃないですか。彼がこれだけ(連続して)試合をしているのは」
ファイターは期待に応える。秋は加盟する関東大学リーグ戦1部においてハードヒットを連発する。
10月18日の埼玉・川越運動公園陸上競技場では、70分間プレーした。前半2分に向こうのミスボールを拾って先制トライ。その後も自陣22メートルエリアで走者へ突き刺さったり、中盤の防御ラインで献身したりと奮闘した。
初勝利を目指す法大を101-22で下し、開幕3連勝を果たした。
この日の東洋大では、NO8のロケティ・ブルースネオルが再三のラインブレイクを決めて2度のフィニッシュを達成。ブルースネオルにとって高校の2年先輩にあたるテネフフは、「(ともにフィールドに立つことで)気持ちが上がる。高校で(あまり)一緒にプレーできなかったけど、東洋大で一緒にプレーしたいと話してきた」と微笑む。かつ、自身の将来をこう展望する。
「チームの目標は日本一。自分は、(卒業後も)日本でラグビーがしたい」
快勝しても細かいミスを忘れずに指摘する福永監督だが、重要な季節を過ごすテネフフへは「これで自信をつけてくれれば」と目を細める。初の日本一達成へ欠かせぬタレントのひとりだと見ていよう。
ちなみに本人曰く、家族の三男もラグビーをしていて、日本へ来たがっているという。
