
32年ぶりの自国開催となったアジア大会で、選手たちが宿泊するのは「海上の選手村」だ。イタリアの大型クルーズ船、コスタ・セレーナが名古屋港に停泊している。
中野剛通は「稀な体験です。その環境も楽しみたい」としつつ、「広くて迷路みたい。迷子になる」と笑う。
試合後に笑みを浮かべた中野が、大会2日目(10月2日)の準々決勝・フィリピン戦で「ワンジョブ!」と繰り返し叫んでいた。
ジャパンがラストパスを通せないシーンを連発していたからだ。
「過去のことは気にしない。いまの仕事、次の仕事にフォーカスする」
0-0のままだった前半の終盤、スコアボードに得点を刻んだのは時任凜空だった。
志和池豊馬のタックルを起点にターンオーバーが決まると、時任凜空が中央でタックラーを解いて突破。その1分後にもトライをマークし、19-7で迎えた試合終了間際にも追加点を加えた。
「ヘッドコーチに求められていることをやるだけです。僕はあまり足が速くないけど、セブンズに呼んでもらっている。強みのフィジカルを出して、ハードワークをしてチームに貢献します」
初めてSDS合宿に参加したのは今年1月。キャプテンを担った福工大でのラストゲーム(大学選手権3回戦)を終えた直後だった。
「フィルさん(グリーニングHC)が福岡に住んでいるので、九州学生リーグでのプレーを見てくれていました。東芝に入るまでの期間でレベルアップしてみてはどうかと」
声をかけられたこと自体「サプライズ」だったが、「ここまで来られるとは思っていなかった」とアジア大会の光景を見ながら言う。
「15人制で東芝で活躍したい思いもあるし、セブンズは2年後にオリンピックがあります。セブンズを広めていきたい気持ちも出てきました」
チームの一員となって日は浅いけれど、「先輩方が年齢に関係なく優しく接してくれる」。仲の良いチームだから、厳しいトレーニングも苦ではない。
「本当に良いチームメイトで、ファミリー感が強いです。長いスパンの合宿があったり、合宿と合宿の間のオフが短いときもあるけど、早く行きたいと思うんです」
結束力を明日も勝利に変えたい。
遡って午前中のプールB最終戦、タイ戦は38-0で快勝した。
前日のメンバーから大きく入れ替え、はじめの2試合はメンバー外だった植村陽彦も先発した。
開始2分には先制トライをマーク。前半終了間際には鋭く仕掛けてオフロードパスを繋ぎ、荻田直弥のトライをアシストした。
後半も追加点を奪うなどアグレッシブなランを続けた。「僕にとってはDAY1でした。緊張もしたし、疲れも出ました」と汗を拭う。
これまでセブンズではCTBやWTBを長らく主戦場としてきたが、この春からSHにも挑戦している。
サインチョイスなど慣れないことも多いが、「前向きにやらせてもらっています。このゲームで少しは掴めたかな」と表情を崩す。
「チームのゲームドライバーとして出させてもらっているので、チームをどう勢いづかせるかを考えながらプレーしました。ただ、自分の前が空いたらいこうと。タイのディフェンスは(外に)流れる傾向にあったので、自分の前が開くことは多かったです」
アジア大会では追加招集で出場が叶った。直前のアジアシリーズ中国大会でメンバー落ちも、準備を怠らなかった。
「メンバーに入れたときに万全でいけるようにしようと。大学1年のときもそうでした。無理に食い込みたいと思うのではなく、焦らずじっくり待つことも大事」
今大会は負傷した大黒柱の津岡翔太郎との交代だっただけに、「津岡さんや来られなかったメンバーのためにも不甲斐ないプレーはできない」。「次はもっと実力を出せるように準備します」と翌日の活躍を誓った。
