10月1日、アジア大会のセブンズ競技が開幕した。
男子は12か国が3プールに分かれて争う。日本代表はカザフスタン、韓国に連勝。プールB首位通過に近づいた(明日プール最終戦でタイと対戦)。
初日の総括を求められた古賀由教は、「韓国のフィジカルの強さに受けてしまうこともあったけど、まずは勝ててよかった」と答える。
寒暖差の激しい日々だが、「天気は自分たちで左右できない」。
試合間は会場から20キロ近く離れた宿泊施設のクルーズ船にバスで戻る厳しいスケジュールも、「どのチームも条件は同じ」。
冷静に、淡々と振り返っていたキャプテンの表情が突然変わったのは、股関節を痛めて今大会をやむなく欠場した津岡翔太郎について聞かれたときだった。
「ちょっと待ってください」と呼吸を整え、涙ながらにこう語った。
「尊敬する先輩ですし、僕たちにとっての大黒柱。ここを目指して戦っていたけど、出られなくなったことはすごく悔しいです。そうした人がいないときに、自分たちリーダーがどういう立ち振る舞い、行動するかが大切だと思っています」
津岡は日本ラグビー協会専任契約選手で(コカ・コーラボトラーズジャパン所属)、32キャップを持つエースだ。古賀とともにパリオリンピックを経験した数少ないメンバーの一人でもある。
今年6月には日本人で初めて、インド開催の「ラグビープレミアシップ(RPL)」に参戦した。
6チームで総当たり戦を2回おこない、上位4チームがプレーオフトーナメントに進む約1か月の短期決戦。各チームはドラフト指名した世界有数のセブンズプレーヤー9人に、地元・インドの選手5人を加えた14人で戦う。
津岡は日本協会の打診を受けて参加を決め、「カルカッタ・バンガ・タイガーズ」にドラフトされた。
昨季のワールドシリーズでMVPのトリスタン・リーズ(南アフリカ)をはじめ、セブンズの名手がズラリとスコッドに並んだが、津岡は動じなかった。
「確かにすごい選手はたくさんいました。でも、自分が見劣りしている感覚も、日本のラグビーが通用しないと感じることも一切なかったです」
チームは1勝1分8敗と最下位で終えた上、津岡自身もFWやCTBと慣れないポジションでのプレーが多く「満足感はない」と話したが、代表では世界を転戦できない今の状況にあって「すごくポジティブだった」と振り返る。
本職のWTBでは「トップオブトップ」と認める、ヴイヴィアワ・ナンドゥヴァロがいた。
フィジアン特有のリズム感、ステップは「真似できない」と苦笑したが、「一緒のチームで彼のプレーを間近で見られたし、試合に向けた準備、食事に対するこだわりにプロフェッショナルを感じた」という。
そして、繰り返し語ったのは「フィルのもとでやってきたことは間違っていない」という言葉だ。
パリオリンピック後から指揮を執るフィル・グリーニングHCを「熱い気持ちを持っていて、スマートで、日本人の特性も理解しようとしてくれている。どうすれば勝てるかを常に考えている」と称える。
ワールドシリーズから降格し、大会も再編成された近年はアジアシリーズのみがキャップ対象試合。トレーニングの成果を披露する場は限られているが、「めちゃくちゃ成長している」と断言する。
「パリオリンピックのときよりも、いまのチームの方が強いと思っている」とも。その根拠を並べる。
「全員がそれぞれの特性を理解してラグビーをしているし、パススキルが大きく成長しました。ディフェンスでの規律も高くなって、一発で抜かれてそのままトライされることはなかなかありません」
そして、「ハードワークではどこにも負けたくない」と根幹はブレない。それだけ鍛錬を積んできた自負があり、代表への愛があるからだ。
インドでの新たな挑戦をしていた際も、「早く(代表)チームで練習したかった」と正直な思いを話す。
「このチームのメンバーが好きなので。みんながどんどん上手くなって、チームが強くなっているのを実感できることがすごく楽しいんです。新しいラグビーにチャレンジできていることも幸せです」
ラグビーが好きであることを再認識する日々でもある。
パリオリンピック直後のアジアシリーズで、折れた肋骨が肺に刺さる大ケガを負い、半年以上も戦列を離れたからだ。
そんな生死を彷徨うほどの経験をしたからこそ、「目の前のことに全力」を地でいく。
だから、2028年ロサンゼルスオリンピックを目指すかは決めていない。目標は「アジア大会で香港に勝つことのみ」と、大会前に語っていた。
「アジア大会までのプロセスで、香港よりもハードワークして、成長すれば絶対に負けません。鍵はディフェンスとセットプレー。相手はキックオフでプレッシャーをかけてくる。そこをカバーできれば絶対大丈夫」
思いは仲間たちに託された。
