日本ラグビー界初のプロクラブとしてスタートを切った、静岡ブルーレヴズの運営面、経営面の仕掛け、ひいてはリーグワンについて、山谷拓志社長に解説してもらう連載企画。
34回目となる今回は、2026-27シーズンに向けたコーチ体制や新加入選手について語ってもらった(8月27日)。
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――2026-27シーズンのディビジョン1の試合日程がなかなか発表されません。
他競技のリーグでは、予備調査でスタジアムがどうしても使えない日やどうしてもホームゲームをおこないたい日を各チームから聞きます。その後にカーディングを決めて、◯◯チームはこの日程でスタジアムを確保してください、という指示がくる流れです。そのやり方がライセンスで決まっているので、否が応でも自治体は協力してくれます。
一方で、リーグワンは最初に各チームが取れるスタジアムはどこで、それがいつかを聞いてからカーディングを決めていく。
そうすると、たくさんスタジアムが取れているチームが取れていないチームに譲歩しないといけなかったり、場合によっては確保がNGと示しているチームにこの日でなんとか確保できないかとお願いされたりもするわけです。
特に今年はJリーグが秋春制になることを踏まえて、4月頃から各チームに調査をしてきたのですが、調査の後になって使える、使えないが日々アップデートされている状況でした。リーグが上手いことカードを当て込みたくても、理想通りいかないことが続いています。
――作業としては毎年同じ流れだと思いますが、こうしたリスクがあるということですね。
リーグとして「強制力」がないので、チームにこの日はこのスタジアムを取れないとダメということを強いることができません。
なので、この連載で何度も申し上げていますが、ライセンスが必要です。ライセンスがあれば、それが自治体と交渉する上での大義名分になる。スタジアムを確保しなければライセンスが発行されない、すなわちリーグに所属できなくなるわけなので、地元のチームを応援する自治体はなんとか協力してあげようという考えが働くんです。
――今回はチームのことを中心に伺います。7月下旬から練習も始まりました。
ブルーレヴズはやはりいち早く始動して、練習量で他のチームを上回りたいと思っています。
とはいえ熱中症のリスクもありますので、練習はできる限り朝の早い時間帯に取り組んでいます。メニューや時間の使い方も気をつけないといけません。
レストやウォーターブレイクなどを厳密にコントロールして、選手も頑張り屋が多いので、少しでも異常をきたしたり、おかしいなと感じたらすぐに言えるような雰囲気作りも大切です。コーチやトレーナーもしっかり観察していく必要があります。
――先日、昨季のレビューのために、シーズンオフ中に選手にアンケートを取っていると聞きました。
すべてをお話しすることはできませんが、僕が強化部長でありながら現場になかなか行けないのが現状なので、今季から採用担当の西内勇人さんにチームディレクターを務めてもらっています。
彼がコーチへのヒアリングや選手のインタビュー、スタッツの分析など昨シーズンのリポートをしっかり作ってくれました。それをもとに改善点を話し合えていますし、選手の補強もいい形で進められました。いまも選手と向き合いながらコーチたちとのコミュニケーションも密に取ってくれています。
――チームディレクターという立場に必要な資質はありますか。
もちろん、その競技の知見も必要ですし、あとはシンプルですがコミュニケーションスキルですね。
何か問題があれば、なんとなく流すのではなくて、どうしてこうなったかをしっかり聞く。言いにくいこと、聞きにくいこともある中でも、監督やコーチとしっかり向き合う。時にはコーチと選手が円滑に話し合えるようなお膳立ても必要です。
選手との距離感も難しいです。契約業務を扱う立場である一方で、リクルーターもやっていますから。
ぜひ来てくれ、ぜひ一緒にやろうと、思いを交わした選手と、ある時には今シーズンで契約が終わると通告しないといけない。仲良くし過ぎてもいけないし、仲良くないのもおかしい。プロフェッショナルとして、ビジネスとして向き合えるかはすごく大事です。
西内さんにはチームをマネジメントする立場として、今後も成長してほしいと思っているので、Jリーグとスポーツヒューマンキャピタルが共催している「スポーティングダイレクターコース」(プロスポーツクラブの経営とチーム強化の両面を担える専門人材を育成するプログラム)で学ぶことも提案しています。
あとは知り合いのJリーグのGMや強化部長を繋いで、他競技のチームづくりや選手との向き合い方を学ぶ機会を作れればと思っています。
――コーチ体制では、昨季まで選手としてチームを長く支えた大戸裕矢さんがアシスタントコーチに入りました。
大戸くんはコーチとして成長したいという意欲を感じましたし、選手として2メートル前後の選手を常に相手にしてきたので、ラインアウトのスキル、ナレッジは相当なものがある。ラインアウトの指導は適任だと思っています。
一方で、昨シーズンまでラインアウトも見ていた(長谷川)慎さんは「スクラムコーチ」と肩書きを変えました。
スクラムコーチと名乗ってしまうと、スクラムの責任がすべて慎さんにいくことを藤井さんも気にしていたようですが、あらためてわれわれの強みであるスクラムにフォーカスしようとなったことの表れだと思います。
――新加入選手についてはいかがでしょう。
2人のLO(マックス・ダグラス=201センチ、アントニオ・シャルフーン=199センチ)に関しては、昨シーズンの課題に挙がったラインアウトを改善するために獲得しました。
CTBにはこれまでヴィリアミ・タヒトゥア選手のようなインパクトのある選手が必要でした。ハンター・パイサミ選手は現役のワラビーズですし、アキ・トゥイバイララ選手も21歳と若いですが、ポテンシャルは高いと聞いています。
もう一人、トライアウトでPRの土屋英慈選手も加入しましたが、フロントローは昨シーズンの終盤にケガをした選手が多いので、もう少し補強が必要と考えています。
――ビジネス面の目標も教えてください。
今季はシンプルに観客動員平均1万人です。ようやくその称号を手に入れられるところまできました。
ただ、冒頭でもお話ししたように、7月下旬には決まる予定だったカーディングが遅れているので、シーズンチケットやマッチデースポンサーのセールスがままならない状況なんです。広告の発注も止めている状況です。
シーズンチケットの継続購入の締切はすでに8月末日にしてしまっていますし、マッチデースポンサーも手を上げてくれる企業はあるのですが調整が進みません。
駅に掲出する広告も出せず、デザインも作れない。カーディングは商品設計の一番重要な骨格なので、なんとか早めに決まることを願っています。
――最近のニュースも一つ。マレーシアのセブンズチームと繋がりができたのですね。
ヤマハ発動機の世界各国の支社から責任者が集まる「グローバルミーティング」が4月にあり、そこでヤマハブランドのスポーツチームをプレゼンする時間がありました。
そこでマレーシアの現地法人の責任者から、同国のセブンズチームのスポンサーをしているのでサポートして欲しいと依頼がありました。
9月にはアジア大会が名古屋であり、事前キャンプ地を探していると。なので、ブルーレヴズの練習施設を提供することになりました。
その際には藤井(雄一郎)さんのクリニックも行う予定です。また、女子チームはアザレア・セブンとの合同練習や練習試合も組んでいます。
8月上旬にはマレーシアラグビー協会を訪問しました。アジア大会の時だけに限らず、今後もブルーレヴズのコーチがマレーシアに行って指導するなど、交流を深めていこうと話しました。こうしたご縁や接点も大切にしていきたいと思っています。
PROFILE
やまや・たかし。1970年6月24日生まれ。東京都出身。日本選手権(ラグビー)で慶大がトヨタ自動車を破る試合を見て慶應高に進学も、アメフトを始める。慶大経済学部卒業後、リクルート入社(シーガルズ入部)。’07年にリンクスポーツエンターテイメント(宇都宮ブレックス運営会社)の代表取締役に就任。’13年にJBL専務理事を務め、’14年には経営難だった茨城ロボッツ・スポーツエンターテイメント(茨城ロボッツ運営会社)の代表取締役社長に就任。再建を託され、’21年にB1リーグ昇格を達成。同年7月、静岡ブルーレヴズ株式会社代表取締役社長に就任
