尾久土と書いて「おきゅうど」と読む。岡山に多いというその珍しい苗字を持つ尾久土栞は、激動の1年を過ごした。
サクラセブンズデビューは今年3月。いきなり「HSBC SVNS」の舞台に立ち、バンクーバー大会、ニューヨーク大会、ボルドー大会と3大会に出場した。
「新しい世界を見られました。やらないといけないことがたくさん見つかって、すごくワクワクしました」
バンクーバー大会の前夜には涙が出てくるほど緊張したが、「グラウンドでは楽しめるタイプ」。大舞台でも臆せず思い切りの良いランを披露し、エッジを走り切った。
ニューヨーク大会のフランス戦では、試合の最終盤に相手に絡まれてボールをロスト。直後に15-19と逆転を許したが、前向きに捉えた。
「チームにはマイナスなことをしてしまったけど、個人の今後を考えると良かったといまは思います」
早大の横尾千里監督の指導のもと、ボールの持ち手やコンタクトの位置など、ボールキャリーの基礎に注力。その成果をボルドー大会で示した。
「監督は一人ひとりの課題にフォーカスした練習メニューを組んでくれます。早稲田は誰も取り残さないことを重視していて、それがチームの底上げにも繋がっています」
兵庫県出身。クラブラグビーで競技を続けていた大体大OBの父、真一さんの付き添いがきっかけで、小学3年時から自宅のある神戸から芦屋ラグビースクールまで通った。168センチの長身も父譲りだ。
水泳や空手にも励んでいたが、中学からはラグビーに集中すると決めた。それも、父の指導が影響した。
「小学生の頃に、まったくタックルできなくて失点のほとんどが私のところで抜かれた試合がありました。その時に父から初めてめちゃくちゃ怒られて。そこからタックルを頑張り始めて、できるようになったら周りが褒めてくれた。こんなにラグビーって楽しかったんだなと」
中学では芦屋に加え、女子チームのガールズ兵庫でも活動。そこで京都成章でもチームメイトになる藤原
郁(現日体大)と田中亜美(現ながとブルーエンジェルス)と出会う。中高6年間で高め合い、高校では3人揃ってセブンズユースアカデミー、U18女子SDSに選出された。
「亜美は一番帰らない人で、夜遅くまで自主練をしていました。私も郁と1オン1をやっていました」
中高とチームではBKだったが、アカデミーではFWに専念。約10キロの増量に成功し、捕まってからも足をかき続けられるようになった。
高校卒業後は、2年前に創部されたばかりの早大に加わる。チームにはラグビー初心者も在籍しているが、そこで新たな「楽しさ」に触れた。
「早稲田にはミスを恐れなくていい環境があります。高校ではミスをすると雰囲気が落ちてしまっていたけど、早稲田はチャレンジしたことをまず評価してもらえる。FWでもロングパスを放ってもいいんです。ラグビーの楽しさの幅がグッと広がりました。ラグビーはもういいかなと思っている子たちにぜひ見学してほしいです。4年間を楽しませる自信があります」
チーム愛は強い。帰国直後の太陽生命ウィメンズセブンズシリーズのチャレンジャートーナメント2大会に強行出場した。エースとしての役割を果たした。
早大でラグビーの奥深さを知り、代表で世界の広さを知った。ワクワクが加速している。
(文/明石尚之)
※ラグビーマガジン9月号(7月24日発売)の「セブンズ女子日本代表特集」を再編集し掲載。掲載情報は7月15日時点。
