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【ラグリパWest】磐田の娘、世界を視野に。米倉杏 [筑波大学/ラグビー部/アナリスト]

2026.08.17

筑波大2年生でラグビー部のアナリストをしている米倉杏。大学生らしい活力に満ちる。「庭」と言うヤマハスタジアムの前でパチリ。着ているTシャツは昨年、チームで作ったもの。主将だった高橋佑太朗の名や筑波大の校章「五三の桐」がプリントされている

 磐田の娘である。

 ヤマハスタジアムに来た。
「庭です」
 米倉杏(あん)は機知でくるむ。

 瞳は黒真珠のように愛らしい。笑うとその口は連動して大きく開く。しわはまったくない。若さが弾ける。19歳。大学2年生だ。

 青いスタジアムはフットボールが共生する。静岡ブルーレヴズとジュビロ磐田。杏はラグビーとサッカーの両方を応援する。

 このホームスタジアムが好きだ。
「スタンドの傾斜も見やすくできていて、コンパクトなのもいい感じです」
 オフの初日はジュビロの開幕戦を見た。ブラウブリッツ秋田に1-1で引き分けた。

 オフは杏にとって8月8日からの3日間だった。ラグビーのアナリスト(分析担当)をしている。大学は筑波。サッカーに入っていればジュビロが長かったゴンこと中山雅史の後輩になっていた。サッカーは入学式当日、入部説明会への参加が必須だった。

 杏は疑問を抱く。
「入学式って出る必要はあるのかな」
 一瞬の里帰りを思いつく。昨年の4月5日、スタジアムに駆けつけた。略称<静岡BR>は相模原DBを破った。スコアは38-8。杏は勝利の女神である。

 ラグビーに引き寄せたのは家庭もある。父の隆之は前身のヤマハ発動機のHOだった。母の真季の仕事を西内勇人は説明する。
「外国人選手の生活のサポートなんかをしてもらっています」
 西内は静岡BRのチームディレクターだ。

 西内は杏のことを評する。
「むちゃくちゃいい子です」
 その表現には能力や人間性などすべてが含まれていると考えていい。西内の業務の軸は新人採用。杏がもし選手なら、大学2年生ながらすでに獲る算段をしているだろう。

 育った街と同色系のツクバ・ブルーにおける分析を選んだ理由はほかにもある。
「自分の強みを探しました」
 ルールがわかる。競技は経験済み。幼稚園から小3まで4年間、ヤマハラグビースクールにいた。今は静岡BRのアカデミーだ。

 ラグビーの分析は自チームや選手個人、そして相手チームをもすべてむき出しにして、その傾向と対策を練る。杏は解説する。
「撮影して、映像を見て、プレーを評価します。相手のスカウティングもあります」
 必然的にパソコンと首っ引きになる。

 学業もあるため、夜更かしもする。今年はひと息つける感じだ。
「新入生が3人、入ってきてくれました」
 筑波の分析は6人になった。1年生以外は各学年1人ずつだ。杏は紅一点。「やりにくさはありません」。居心地はいい。

 分析は自分の容量を広げる。
「やればやるほどスキルは上がります」
 そこにも意義を見出す。そして、喜びももちろんある。
「勝った時はうれしいです」
 チームの一員ということが再認識できる。

 筑波の学生として、杏は理工学群の社会工学類に籍を置く。学問も分析と同じだ。
「やればやるほどできるようになります。今は都市開発を勉強しています」
 街を一から作る。アフリカの大地に視線を送り、その先駆けたらんことに魅力を感じる。

 ニューデリーで小5から3年間、暮らしたことと無縁ではないだろう。父の転勤だった。インドの首都では歴史的建造物やビル、庶民の住居などの混然一体を目にした。帰国後、進んだ高校は磐田南。「ばんなん」と呼ばれ、旧制中学を祖に持つ。俊英が集まる。

 杏はその磐田南でも難関の理数科で3年を過ごした。そもそもの<リケジョ>である。分析は向いている。ラグビーの選手を小3でひいたあとは、高校卒業までバスケットボールを続けた。3年時には磐田南の主将をつとめる。リーダーシップもある。

 分析ではU20日本代表のアシスタントアナリストにもついた。昨秋、杏はOB監督の嶋﨑達也に相談の上、公募に応じた。
「同期と一緒にやりたいな、と思いました」
 筑波からはWTBの内田慎之甫やWTBやSHをこなす深田衣咲が候補から昇格する。

 杏は日本代表の下に位置するJAPAN XVに引き上げてもらえた。向学心を証明する。
「1週間ほどでしたけど、違った経験をさせてもらえて、楽しかったです」
 香港チャイナとの5月の2試合(80-0、29-33)に帯同。チーム名は日本選抜だった。

 その経験を踏まえ、筑波での目標を言う。
「日本一です」
 昨年度は関東対抗戦を明治に次ぐ2位で終える。その後の62回大学選手権では初戦の8強戦で帝京に0-36で敗北した。2か月ほど前の対抗戦では18-14で勝っていた。

 杏は敗因を探す。
「先を見過ぎた感じがします。アナリストとしても、本当に勝つ準備をしたのか、と問われれば、そうじゃなかったかもしれません」
 筑波ラグビーは伝統として部員の意志を尊重する。その意志が結果に直結する。

 部員たちは監督、助教でもある嶋﨑を「シマさん」と呼ぶ。嶋﨑もそれを許し、部員を尊重する。自分も昔そうされた。負けも社会に出た時の原動力になることを知る。
「もっと貢献したいです」
 杏のその内から湧き出る思いこそが筑波ラグビーの肝にほかならない。

 夏合宿は今月8月13から23日まで、例年通り長野の菅平で行われる。
「キラキラした学生生活は送っていませんが、今しかできないことをさせてもらっています。海外旅行は卒業してからでいいかな、と」
 大学王者を目指せるのは4年のみ。創部103年目の筑波はまだ日本一になっていない。

 杏は将来を思い描く。
「分析と都市開発、どっちもやりたいです」
 ラグビーにも学問にも真摯に向き合っていれば、道はおのずと示される。間違いないのはその未来は明るく、大きく開けているということだ。順風満帆である。

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