内なるさざ波と向き合っている。
今年7月、ラグビー日本代表が新設ネーションズチャンピオンシップを戦う様子を、李承信は映像で見ていた。前年度まで代表の主軸を張っていたが、いまはスコッドに名を連ねていない。
「(自身に)置き換えながら見るようにしています。全てをネガティブには捉えないようにしています。ただ、多少、自分がその場に立っていないことへの不甲斐なさは感じます。この時期に代表に参加していないこと自体に、ちょっと違和感があるので」
身長176センチ、体重85キロの25歳。所属するコベルコ神戸スティーラーズの共同主将として国内リーグワン1部を制した6月、ずっと痛めていた箇所を手術していた。そのため大会中は競技復帰を目指し、リハビリに励んでいた。
予めそうすると決めていたとはいえ、いざその立場になると再確認する。
「最初のほうは『リフレッシュできていいかな』と思っていたのですけど、ラグビーから離れてみると、自分はラグビーをプレーするのが1番好きで、人生のなかで大きなものになっているんだと改めて感じました」
チームの戦いには進歩を見た。プレーの意図を想像したり、去年までとの変化の有無を感じ取ったりしながら戦況を注視すると、試合運びに関する「プランがより明確になっている」うえ、勢いづける際の「テンポ」にもよさを覚える。
自身が務めるSOの座には、明大4年の伊藤龍之介がついていた。
周りと息を合わせてイタリア代表との初戦を制する若者を見て、自分が21歳で代表デビューを果たした2022年のことを回顧した。
「彼自身が強みをはっきり持っている。ランがあり、スキルも高い。若いながらもキックのマネジメントでもうまくリードしていました。自分にとって、プレッシャーになっているなと」
普段は淡々と己の力を示しているだけに、ライバルの存在を「プレッシャー」と捉える様子は意外に映る。そう水を向けられると…。
「実際に戻ったらそうなる(自己にベクトルに向けられる)とは思うのですが、いまテレビで見ていると、『いま、このままでいいのかな』となっちゃうタイプなので」
指揮官のエディー・ジョーンズには、オペに先立ち連絡を取った。落ち着いたらリーグワンの振り返りをしようと告げられ、その時を待っている。
そう遠くないうちにフィールドに戻り、出られれば自身2度目となる’27年の大舞台を目指すつもりだ。そのためにも、両親の教えに倣う。
「人は謙虚じゃなくなったら成長が止まる。学び続ける」
仲間たちが対オーストラリア代表2連戦に臨む8月。もとの状態を取り戻しながら、少しずつ己を刷新している。
