6月28日、台風7号は通過したもののあいにくの雨模様のなか、2026年のトップイースト春季トーナメント決勝戦が開催された。決勝にコマを進めたのは東京ガスブルーフレイムス(以下東京ガス)と、トップウェストから特別参加の中部電力だ。この2チームは昨年の全国社会人大会準決勝でも対戦しており、その時は東京ガスが28-23で勝利している。
当然ながら中部電力としては昨年のお返しをしたい、一方の東京ガスとしてはトップイーストの大会で他のリーグからの参加チームに優勝を明け渡すわけにはいかない。
試合のほうは、雨天のセオリーに従ってキック主体の攻撃を選択し、中部電力SOの津田貫汰(中央大)と東京ガスのSO西仲隼(京都産業大)のキック合戦が展開される。大学時代から実績のある両選手、ともに精度の高いキックで互いに譲らない。
しかし徐々に中部電力が流れをつかみ始め、10分には敵陣スクラムからNO8奥平郁太郎(同志社大)がトライ。23分にはLO三枝優介(中央大)がゴール下に、さらに32分にはWTB林哲平(明治大)が左隅にと、3連続トライを奪う。一方東京ガスも36分にSO西仲がトライ。
ラグビーは時として「勢い」というものが試合を決めてしまうこともある。こうも立て続けに決められては、前回勝ったとはいえ東京ガスの空気も重くなってくる。この流れを中部電力が呼び込めたのはやはり津田の正確なキックがプレッシャーを与え続けた結果だろう。前半は結局12-24でビジターの中部電力のリードで折り返した。
しかし東京ガスベンチは冷静だった。
「この試合は23人全員で戦うプラン。後半にスクラム、モールの強い選手を投入する予定だった」(東京ガス・川邊大督HC)
その狙いが的中、後半に入ると今度は東京ガスがFW戦で反撃に転じる。モールで大きく押し込むシーンが目立ち始め、その度にスタンドがどよめく。開始5分にはHO中川魁(立命館大)がトライ。その後もある時はセットプレーからFWがペナルティーを取り、ある時はBKが縦に切り裂く。
ついに後半12分、SH貴島由良(京都産業大)のトライとその後のキックで26-24と逆転。完全に東京ガスが流れを取り返した。貴島は2年間リハビリで苦しい時期を過ごして来たが、このトライが東京ガスを大いに鼓舞したことは言うまでもない。
しかし中部電力もまだまだ力を残している。逆転を許したとはいえ、自陣に押し込まれてからのディフェンスは東京ガスにそれ以上の前進を許さない。後半20分、ほぼ中央でペナルティを得ると、なんとここでショットを選択。ハーフウエイラインからのPGをSO津田が決め、26-27と中部電力が再び勝ち越し。
だが、その10分後の後半31分、勢いを保った東京ガスが中部電力のディフェンスを突き破った。トライを確信したCTB岡本有生(東洋大)がガッツポーズをしてからポスト脇に飛び込んだ。これが決勝点となった。キックも決まり最終スコアは33-27、東京ガスが2026年トップイースト春季トーナメントのチャンピオンとなった。
こうして春季トーナメントは東京ガスの優勝で幕を下ろした。4月入社の新人選手も加わった新チームでの大会は、秋の本番にむけどのチームも収穫もあったようだ。
「アマチュア社会人ナンバーワン、という目標に向かってゆくにあたって、トップイーストの上位チームと体を当てられたというのは大きな収穫でした。まずは秋のトップウエスト、その先の全国社会人大会でまた当たる時のため、いい準備がこれからできそうです」
そうコメントしてくれた中部電力紀伊皓太HC、その目はすでに前を見据えているようだ。
この試合は東京ガスと中部電力という、エネルギーで社会のインフラを支える企業の社員同士の試合と見ることもできる。雨天ながらもペナルティも少なく、互いに堅いディフェンスで非常に引き締まった試合を見せてくれた。このような規律を守れる社員がいるという事実は、どんな宣伝広告でも伝えることのできない会社としてのメッセージである。市民のくらしを守る両社がともにラグビーという競技に力を入れているのは、決して偶然ではないだろう。
選手たちは80分間フルにぶつかり合った体で、翌日月曜には朝からビジネスマンの顔に切り替えて長い一週間がはじまる。そこにはラグビーをやって疲れている、体を休めたい、という甘えはない。
「(ケガをして会社にゆくと)大丈夫?と声をかけてもらうこともあり、同時に勝利おめでとう、と言ってもらえることが、私たちのモチベーションにもなっています」
と、試合後に足を引きずりながら取材に応えてくれたのは東京ガスゲームキャプテンのHO中川魁(立命館大)。おそらくモチベーションを与えてもらっているのは選手ばかりではなく、彼らの姿をいつも見守っている一般社員、そして仕事の関係者の方なのではないかと思う。
この日も雨の中、観客席には東京ガス、そしてはるばる愛知からかけつけたであろう中部電力を応援する職場の人たちの声が響いていた。社会人リーグの最も美しい風景だ。
