ラグビー日本代表のキャンプに参加する。クボタスピアーズ船橋・東京ベイから選出の木田晴斗は、高揚感を口にした。
「緊張感のある雰囲気というか。練習で皆の競争心が伝わります。お互いに高め合える環境はあるかなと」
小学生で極真空手の世界王者となった大阪出身の27歳はいま、身長176センチ、体重90キロで隆起した肉体でフィールドを力走する。
今年6月まで約半年間あった国内リーグワン1部では、もっともラインブレイクの数が多いベストラインブレイカーに輝いた。実質1年目で日本一となった2022年度以来の受賞だ。2シーズン連続の準優勝に終わるまで、端側のWTBとして左足のキック、ハイボールの捕球、走者を引き倒すタックルでも冴えた。
今回は6月19日までに宮崎入りし、約9年ぶりに現職に復帰し3年目となるエディー・ジョーンズヘッドコーチと個人面談をした。
議題は一貫性だった。
ゲームごとにパフォーマンスの波があるのはなぜだ。
そう指摘され、それはその時々の足の状態によると正直に申告した。個人タイトルを獲得した充実のシーズンのさなか、傷んだ状態で戦うタイミングもあったのだという。
「怪我を言い訳にするのはよくないとは思うんですけど、それはもう事実ですし、自分に嘘はつきたくない。正直な気持ちを、伝えました。しっかりコンディションを戻してプレーで見せれば、問題ないと思います」
現体制のジャパンに初めて参加したのは昨夏のことだ。過去に負傷していた箇所を治してすぐに招集に応じ、多少、無理を通してトレーニングに励みながらパシフィック・ネーションズカップのアメリカ代表戦で初キャップを獲得。同大会ではフィジー代表との決勝へも出場した。
秋のキャンペーンは途中離脱も、それまでの間にわずかながら信頼を積み上げたと言える。だから今度のキャンプでは、自己アピールをすると同時にコンディショニングも重視する。
万全でない時も集中して戦う心構えも構築したいとしながら、まずは「ラグビーを楽しめる状態に持っていきたい」。S&Cスタッフと対話し、身体の状態を見ながら己にかける負荷を調整する。悪い兆しがあれば、勇気を持って全体トレーニングを抜けて翌日に備える。ジョーンズとの対話を踏まえ、そう決意した。
この夏には、新設のネーションズチャンピオンシップに参加する。7月4日以降は大会前半戦に臨み、国内外でイタリア代表、アイルランド代表、フランス代表といった世界ランクで上回る相手と順にぶつかる。
持ち味を発揮して列強国を倒す最善手として、肉体の鮮度を保って当日を迎えたい。「コンディション」と繰り返す。
「ベストなコンディションにもっていけば、ナンバーワンのWTBになれる素質がある。まずは、そこなんじゃない? …こう(指揮官に)言ってもらえました。僕も、下半身のコンディションがいい時は決定力が違う。正直、自分でもわかります。できるということは。本当に、コンディションとの勝負です。ティア1(伝統的な強豪国)と呼ばれるチームとやるのは初めて。ここでフルのコンディションでどこまでやれるのかを知りたいです。そのうえで、日本代表としてプレーするならば勝つのが目標です」
話をしたのは6月21日午後。サッカーの日本代表がワールドカップ北中米大会のチュニジア代表戦に臨んでいる最中でもあった。
途中まで同部屋のイノケ・ブルア、同じスピアーズの廣瀬雄也らと中継を見ていた木田は、前半31分にゴールを決めた上田綺世に言及。後半38分にもネットを揺らす上田と、ジャパンのフィニッシャーを目指す自らとを照らし合わせる。
「スター性、ありますよね。得点するという意味では(よい)WTBとも重なるところがある。ああいう勝負強さ、大事です」
ここぞという時に力を出すのに日々の努力が必要なことは、これまでの競技人生で証明している。
進学校でありラグビーの「弱小校」と自認する関西大倉中、高時代には、教師たちに「ラグビーで生きていく。日本代表になる」と断言。そのたびに「勉強して国公立へ」とたしなめられながらも、たったひとりで階段ダッシュ、ランジジャンプを繰り返した。知人のつてで挑んだ立命大のセレクションに受かって1年も経たぬうちに、スピアーズで当時採用の前川泰慶・現ゼネラルマネージャーの目に留まっていた。
その後はリーグワンの新人賞を争ったり、代表戦を経験したりして多くのファンに認知され、いまはハードワークとピーキングというふたつの考え方のバランスを取りながら世界をにらむ。
「堅実なプレーも大事ですけど、ボールを持ったらわくわくするような、ランニングスキルで観客をわかせるような存在になれたら」
会話の流れで「自分で言うのもあれですけど、結構、繊細なんですよ」と微笑みながら、ナショナルチームの自身への配慮に「結果で返したい」と誓った。
