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【連載】プロクラブのすすめ㉝ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] いまは危機的状況。ラグビー人口を本気で増やしたい!

2026.06.15

(撮影:舛元清香)

 日本ラグビー界初のプロクラブとしてスタートを切った、静岡ブルーレヴズの運営面、経営面の仕掛け、ひいてはリーグワンについて、山谷拓志社長に解説してもらう連載企画。

 33回目となる今回は、創設5シーズン目を終えたリーグワンや日本ラグビーの課題を語ってもらった(6月10日)。

◆過去の連載記事はこちら

――リーグワンが創設されてから5シーズンが終わりました。フェーズ3は2028-29シーズンから始まりますが、議論は始まっているのでしょうか。

 まだそうした話は具体的には進んでいないと思います。どうしても目先の議論が多く、かつ意思決定までの時間が結構かかっている印象です。一つの物事を決めるのに会議の回数がそれなりに多い感じがしています。

 細かいルールの変更に時間をかけてしまっているせいで、将来への議論、本質的な議論がほとんどできないんです。
 他競技のリーグでは、各クラブの代表者(社長)とリーグが参加する実行委員会をだいたい3か月に1回ほどの頻度なのにリーグワンはほぼ毎週やっています。

 毎週やっているのに物事がなかなか決まらない。正直、ガバナンスにまだ不具合があると思っています。

 なぜそうなってしまうのかというと、リーグに参入するための明確なライセンスを定めていないからなんです。
 本来であればリーグに加盟する際に、ライセンスで示されているリーグの方向性やルールの細かい部分も受け入れることになるわけなので、そこまで各クラブの考え方に相違が出ることはありません。

 リーグワンにはライセンスがなく、各チームの考え方や価値観がバラバラの状態のリーグです。なので、議論に時間がかかってしまうのは必然なんです。

 一つのリーグの中に、方向性や価値観が大きく異なるクラブが同居していることは、意思決定に時間がかかり、どうしても護送船団方式になってしまうので、本来望ましい状況ではありません。
 試合数を増やすべき、シーズンを長くするべき、クラブ運営を法人化すべきという考え方も、ライセンスで最初からスクリーニングされていれば何も異論がでることはないわけです。

 ホストエリアではない地方開催を拡大すべきだという議論も出るのですが、ホスト&ビジター制でその街に根差していくリーグの理念と矛盾していると自分は思います。
 その矛盾をチームのニーズとして議論するだけでは混乱を招いてしまいます。

 フェーズ3に向けた話が進んでいないのも、新秩父宮スタジアムの建設が当初よりも遅れていることを理由の一つにしているようなのですが、それはスタジアム確保に向けたひとつの要素にすぎず、そのことでリーグのあり様が依存することはありません。リーグの将来は、秩父宮ありきなのかと。

 今シーズンから導入されたプレーオフ準々決勝の(3位、4位チームによる)ホスト開催も最初はかなり反対意見が出ました。直前に決まると、短期間でチケットを売ることが難しい、スタジアムの確保やキャンセルが難しいのではないかと言うんです。

 でも、それはプロスポーツでは当たり前ですよね。むしろ最終戦までそうしたプレーオフ争いがもつれ込む方が盛り上がるわけで、それだけコンテツとしての価値が高くなる。

 チケットを売り出す期間は短くなったとしても、じゃあどうやって売るかを考えるべきです。ラグビー界はまだまだビジネスに対するアニマルスピリッツが不足していると感じます。

――話を聞いていると、ライセンスの策定はまだまだ先の話になりそうです。いま変えられることはありますか。

 リーグワンが物事を決めるには、実行委員会で案が示されて、それから各チームにアンケートを取り、さらに個別にヒアリングをして、また修正案を出して、それを議論し直して、ようやく実行委員会で決議して、それから理事会で承認を得る…という流れです。

 クラブの意見を踏まえた上で「この方向でいく!」と決めづらい状況なんです。これがさらに多くの時間を要する原因になっています。

 ライセンスという大前提がある中でリーグの代表者に決める権限を与えて、その人が「こうだ!」と決めたらそれに従う。その決定がおかしいと感じるのであれば、例えば数年に一度の投票で別の代表者を立てる。
 まずはライセンスに加えてそうした意思決定の構造にしないと、リーグワンのガバナンスはなかなか機能せず、物事が決まるまでかなり時間を要してしまうことになると思います。

――話は変わりますが、ブルーレヴズはプレーを希望する現役選手を対象とした「リクルート応募フォーム」を作成しました。いわゆる公募ですね。

 われわれは育成枠という考え方を持っていますし、機会すら与えられず可能性をなくしてしまうことは非常にもったいないと思っています。

 ラグビープレイヤーとして有能な選手は、大学や高校で活躍していることがスタンダードだと思いますが、たまたま強豪校に所属していないだけで、ポテンシャルのある選手もいます。
 就職しようと思っていたけど、4年生のシーズンが終わったら悔しくて続けたくなった選手もいるでしょう。

 身体的能力は22歳がピークでもありませんし、フィジカルは課題でも何か優れた足の速さや球技センスがあれば、30歳前後で花開く可能性はあります。

 自ら志願してくる選手のモチベーションは非常に健全です。われわれのチームでチャレンジしたいと思ってもらえるのであれば、それはありがたい話でもあります。

 そうした選手育成の環境整備といった本質的な議論も、リーグとは進めて行きたいんです。

 チャンスを与えた選手は、実戦で活躍することで成長していく。ですが、いまのリーグワンでは移籍の自由度があまり高くありません。
 レンタル移籍制度はありますが、シーズン中は一方通行で戻ってくることはできない。ブルーレヴズの選手がD2やD3のチームで活躍すれば、シーズン中に戻せるようにするなど、もっと選手登録の柔軟性を高くするべきと思っています。

――育成でいえば、静岡ブルーレヴズU18が4月に始まりました。

 ジュニア世代、高校生世代の普及や育成は、今後もいろんな取り組みを模索していきます。

 県内のラグビースクールをどんどん増やしたいですし、独自でラグビースクールの運営をされている方々が選手の勧誘のためにブルーレヴズのアセットを自由に使えるようにしていこうと思っています。例えばロゴを自由に使えたり、ブルーレヴズの観戦チケットを提供するとか。

 そこで基盤となるのは都道府県のラグビー協会です。僕らもいま静岡県ラグビーフットボール協会とより密に、一体化することでもっと効率よく様々な活動がおこなえるのではないか、という話をしています。

 以前もお話ししましたが、ラグビーの競技人口の減少は危機的状況です。減少幅を見ると20年後くらいには消滅しかねない。

 われわれはこれまで普及活動を重ねてきましたが、静岡ブルーレヴズのプロモーションのためだったり、社会貢献活動としてやっている側面も強かったかもしれません。ビジネスの観点で見ればあまり利益が出る活動ではないかもしれませんが、いまは使命感を持ってやっていかなければいけないと思っています。

 資金や人材といったリソースを持っているのは、やはりリーグワンのクラブですから。チームが活動しているのはほんの数時間に過ぎないので、練習施設を静岡県協会やアザレア・セブン(女子ラグビーチーム)と一緒に運営してラグビーの選手の育成の場にするべきだと思っています。

 なので、以前からお話ししている新しい練習場の計画も、われわれの練習場としてだけでなく、「静岡県ラグビーフットボールセンター」のような場所にしていきたい。
 ニュージーランドのように、各州協会の拠点にはNPCのチームがあり、アンダーカテゴリーや女子のチームがすべて集う、そこにクラブハウスも県協会の事務所もある。それが理想形だと考えています。

 練習場の件は、今年中にはどういう場所にどういうものを作るかはだいぶ見えてくると思うので、なにかしらの発表はできるかなと。ただうまく進んでも完成するのは4~5年後でしょう。

――ブルーレヴズは磐田市と連携した中学生年代のクラブチーム(ブルーレヴズSPO☆CULラグビークラブ)もラグビースクールとは別に運営しています。

 ラグビースクールのように本格的にラグビーに取り組むことを目指すのではなく、ラグビーを始めてみたい、経験してみたいという中学生に向けたきっかけづくりの場です。スポカルで続けていく中で、継続的にラグビーをやりたいと思ったらスクールにも通う、という流れを作れればと思っています。
 中学生に限らず、続けたい時、やりたい時にそれができる機会があり、上手くなりたい時にさらにチャレンジする場があることはすごく大事なことです。

 そうした競技人口を増やすための具体的な施策などを、日本ラグビー協会が手を打てているとはあまり思えません。
 ラグビー体験会を全国で開催していますが、それだけでは普及活動にはならないと思っています。

 ラグビーへの入り口としてそうしたイベントは必要ですが、最終的にはそこで興味を持った子たちがラグビースクールに通い、選手登録料を払って大会に出るところまで待っていかないといけない。
 そして、中学生や高校生になってもラグビーを続ける環境を作るにはどうすればいいのか、縦軸の一貫性を持って動かないと考えないと単発のイベントで終わってしまいます。

 とはいえ、日本協会にすべてを押し付けるのは酷で、本来はその機能を都道府県協会が戦略を持って果たさないといけないんです。

 サッカーは2002年のワールドカップの収益金で、各地に「フットボールセンター」を作り、その施設を運営、経営するマネージャーまで育成し、各都道府県協会を法人化したことで、県単位で高体連やJクラブと連携しながら選手を育成できています。

 一方で、静岡県ラグビー協会が年間で受け取っている日本協会からの分配金は70万から80万円程度にとどまっています。
 県の競技人口や登録者数によって変わるのだと思いますが、これでは何の活動もできません。

――ラグビーの場合、各都道府県協会の方々は仕事の合間を縫って携わっていたり、中高の先生が関わっています。

 なので、繰り返しになりますが、リソースを持っているリーグワンのクラブが使命感を持ってこの課題に取り組む必要があるんです。

 リーグワンのクラブがちゃんとおのおのの地域に根差していくしかないわけです。
 だから関東に集中していいのか、というそもそもの議論があるわけですし、今後、新たなクラブができた時や地方に移転する際はそうしたこともライセンスに組み込んでいくべきでしょう。

 リーグワンに所属する権利を与えるのであれば、自分たちの定めたエリアでこんな活動をしなければいけないという義務が生じるのは当たり前。そのことを明確にし、それができないクラブはこのリーグには入れませんということにしないと筋が通りません。

――結局、リーグワンが発足する前に定めたホストスタジアムなどの審査は創設時におこなわれただけで、以降一度もありません。

 形骸化してしまっています。新規参入チームを受け入れる際に、一定の基準では見ていますが、ホストスタジアムに関してはすごく曖昧になっていました。

 現状では、リーグワン参入時にホストエリアとホストスタジアムがまったく別の場所にあっても「良し」としています。本当にラグビーや地域のことを思うのであれば、それでいいのかという疑問は残ります。

 ただ、われわれとしてはライセンス制度がつくられることを待っている場合ではないので、自分たちでやれることをやらないといけない。
 ラグビーの存続が危機的状況であることは、われわれにとっても死活問題です。責任を持って取り組んでいきます。



PROFILE
やまや・たかし。1970年6月24日生まれ。東京都出身。日本選手権(ラグビー)で慶大がトヨタ自動車を破る試合を見て慶應高に進学も、アメフトを始める。慶大経済学部卒業後、リクルート入社(シーガルズ入部)。’07年にリンクスポーツエンターテイメント(宇都宮ブレックス運営会社)の代表取締役に就任。’13年にJBL専務理事を務め、’14年には経営難だった茨城ロボッツ・スポーツエンターテイメント(茨城ロボッツ運営会社)の代表取締役社長に就任。再建を託され、’21年にB1リーグ昇格を達成。同年7月、静岡ブルーレヴズ株式会社代表取締役社長に就任

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