ラグビーリパブリック

【ラグリパWest】7人の侍。京都市立京都工学院高校ラグビー部

2026.06.09

伏見工の流れをくむ京都工学院は5回目の冬の全国大会優勝を目指している。その目標に向け、指導陣の充実が目立つ。前列左から髙橋健コーチ、大島淳史監督、木下寛司部長。この3人は伏見工の同期だ。後列左から細川明彦、嶋田直人、内田啓介、吉永怜史の各コーチ。その充実は先ごろ亡くなった山口良治総監督の置き土産と言っていい

 半世紀にわたる守護者は山口良治だった。

 伏見工から京都工学院に続くラグビー部である。その総監督の山口が彼岸に旅立った。

 ラグビー部は7人に託された。映画『七人の侍』を彷彿とさせる。監督は黒澤明。公開は1954年(昭和29)。傑作の誉れが高い。

 あらすじは侍7人が野武士の襲撃から村を守る。京都工学院は同じ7人でラグビーの守りを継ぐ。全員がこの市立高校の教員だ。

 創部は伏見工時代の1960年。今年67年目に入った。この深紅のジャージーは冬の全国大会出場21回、優勝は4回を誇る。

 7人は監督の大島淳史、部長の大下寛司、コーチは着任順に髙橋健、細川明彦、吉永怜史、内田啓介、嶋田直人である。

 専門教科は保健・体育が4人。大島、髙橋、内田、嶋田だ。工業系が大下、吉永の2人。細川は社会科である。吉永を除く6人は伏見工のOBだ。吉永は熊本工を出ている。

 京都工学院は2科制を採る。従来の工業系であるプロジェクト工学と大学進学に特化したフロンティア理数だ。10年前、伏見工と洛陽工が統合され、創設された。

 大島は43歳。日体大に進んだ。中学教員を経て、着任したのは2014年である。
「ありがたい限りです」
 このような人事を発令してくれた京都市の教育委員会や学校に感謝を表する。

 大島は高3時、FL主将として全国優勝を果たした。大下と髙橋は同期になる。80回大会(2000年度)の決勝は佐賀工に21-3。伏見工にとっては3回目の頂点だった。

 大下は当時、CTBだった。教員になった今、指導陣の集まりに感嘆する。
「すごいです」
 卒業後は大阪工大からその大学院に進んだ。修士号を持ち、土木を担当している。

 大下はまたSSHを主導する研究部の主任を任されている。Super Science Highschool(スーパー・サイエンス・ハイスクール)は、理数系や科学技術に重点を置き、世界に通用する人材育成校として文科省が指定する。京都工学院は3年前、指定を受けた。

 大下は学校の行く末を左右する大事なポジションにいる。同期の髙橋は話す。
「大下と僕は学校のことが中心ですね」
 髙橋は2年生の学年主任でもある。愛知工大を出て、赴任時は工業系を教えていたが、教科転換する。現役時代はFBだった。

 髙橋は7人体制のよさを表現する。
「生活とグラウンドの両方に目を向けられます。子供たちに届いているはずです」
 部員は女子マネ2人を含め102人になった。この大所帯でも7人の指導の網からこぼれ落ちることはない。

 大下は年下のコーチのことも言及する。
「吉永も京都府外の熊本から来てくれました。細川も戻って来てくれました。」
 吉永は日本文理大を出る。現役時代はSO中心。結婚を機に京都に来る。赴任6年目。専門は電気。1年生の担任もしている。

 吉永は31歳。京都工学院でコーチングができていることを端的に言葉で示す。
「光栄です」
 担当は1年生など下のチームだが、上を教えたいという欲望はない。
「人にはそれぞれ役割があります」
 練習はチームを2つに分けウエイトとグラウンドが交互になる。内容は同じだ。

 細川は沖縄で教員をしていたが、5年前に故郷のチームに戻ってきた。今は3年生の担任でもある。41歳。SOとして伏見工から早大にゆく。学生日本一最多16回の<ワセダのラグビー>を体得している。

 さらに、昨年は内田、今年は嶋田の同期2人が加わった。35になる年である。「フロンティア」と呼ばれる特別な市の教員採用試験に合格した。受験資格は世界大会出場など実績を残したアスリートにある。

 ともにリーグワンのディビジョン1(一部)出身だ。内田は埼玉WKのSHだった。日本代表キャップは22を得る。嶋田は横浜EのFL。日本代表候補だった。
「トップ選手が2人もいるのはすごい」
 吉永は年上の内田と嶋田に視線を向ける。

 この7人のほかに安岡忠和がいる。44歳の元HOはスクラム担当だ。勤務先は京都市内の山ノ内小学校。安岡もまた教員である。洛水から大体大を経て、休部したサニックスで競技を続けた。監督の大島は言う。
「スクラム教えられるOBは少ないのです」
 安岡が教育者であることもまた望ましい。

 同じ外部から理学療法士としてチームに帯同するのは竹本裕樹だ。淀川工(現・淀川工科)でラグビーをやった。42歳。「学校から歩いて10分ほど」と大島が話す高生会整形外科クリニックに勤務する。部員たちのケガ予防やリハビリを担当する。

 OB会も<FOX PRJECT>として支援する。FOXは狐。最寄りの伏見稲荷大社の神の使いとされる。RED FOXとして、その文字をジャージーと同じ深紅でキャップやトレーナーに入れる。野球のメジャーリーグ、レッドソックスをもじったセンスは悪くない。

 その人々の集まりとともに京都工学院は復活の足音を響かせている。冬の全国は104回大会(2024年度)に9年ぶりに出場する。3回戦で4強進出する國學院栃木に5-21で敗れた。選抜大会は今春、2年連続10回目の出場を決めた。この27回大会は8強敗退。準優勝する桐蔭学園に0-36だった。

 山口の逝去が報じられた2日後の5月31日、府総体、いわゆる春季大会の決勝で京都工学院は36-12で京都成章を破った。新人戦に続き、連続して府の頂点に立った。

 京都工学院のウエイトルームはリーグワンも顔負け。赤の大型ラックは15台ある。山口から監督を継いだ高崎利明が教えてくれた。
「ここはこだわらせてもらった」
 市は部史を評価して<重点強化指定クラブ>にした。7人の指導陣もその一環だ。

 同時にそれはまた、先達から今を生きる人々までが心を合わせて進んで来たことを示している。亡き人の魂を安んずるためにも、これから7人は奮闘してゆく。

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