ラグビーリパブリック

スピアーズのスクラムは皆で組むものだ。紙森陽太が思う心地よい繋がり

2026.05.30

練習後の紙森陽太[S東京ベイ/PR](筆者撮影)

 持ち場では譲らない。

 ジャパンラグビーリーグワンプレーオフ準決勝を2日後に控えた5月29日。クボタスピアーズ船橋・東京ベイの紙森陽太は、対する埼玉パナソニックワイルドナイツとのスクラム合戦をこう展望した。

「大事なことは、自分たちのスクラムを組むこと。ひとりひとりにならず、(FWが)8人で組んでいく」

 27歳。最前列の左PRを務める。身長172センチ、体重105キロと一線級にあっては大柄とは言えないが、鋭いタックルと、何よりスクラムの安定感が光る。スピアーズではHOのマルコム・マークスと隣同士で組む。

 南アフリカ代表87キャップを誇る身長189センチ、体重117キロの大型選手は、相手と距離を取りながらのヒット、その後の馬力に強みがありそう。向こうの懐に潜り込んで粘り腰を発揮したい紙森とは、やや勝ち筋が異なるような。

 違う強みを持つ者同士でひとつの塊を作るにあたり、組む前に肩のラインを合わせるのを意識していると紙森は言う。両者間の隙間を埋めながら、空いた左半身で対面と駆け引きをする。

「最初のセットアップ(予備動作)でお尻の位置を合わせてしまうと、(自身が敵チームから見て)後ろになってしまう。それではこちらがアタックできず、うまく組めないので」

 この話をする直前には、全体練習とセットプレーの確認作業に時間を割いた。

 フィールドを去る前には、新任でスクラムを教える山村亮アシスタントコーチ、当日リザーブ待機するHOの江良颯、スターターの右PRとなる為房慶次朗と何やら打ち合わせをしていた。

 元日本代表で現役時代にスクラムの強いヤマハ発動機ジュビロ(現静岡ブルーレヴズ)にいた山村には「自分たちが気持ちよく組める形が何かを尊重し、そのうえでどうしたらもっとよくなるかを教えてくれます」と感謝する紙森。このほど自身より2学年年下の江良、為房を交えておこなった最終チェックについては、こう言葉を選ぶ。

「バインドバトル(向こうの最前列とのつかみ合い)で、自分たちが組みやすいようにする(方法を)話していました。そこが、スクラムの始まりなので」

 昨年7月に日本代表デビュー。初陣で最前列にあって珍しいフル出場を果たし、ウェールズ代表を24-19で下した。スクラムもタックルも光った。泥臭くとも華々しいデビューを飾ったことで、’27年のワールドカップオーストラリア大会出場に名乗りを上げた。

 その後の代表活動は、怪我の治療のため参加できなかった。完全復活を目指し、メスも入れた。昨年12月中旬にリーグワンが開幕してからも、しばらくリカバリーに時間を充てた。

 復帰後、雌伏の期間をこう振り返る。

「メンテナンス、という感じです。(治療中にあった代表戦には)出たかった気持ちもありますけど、コンディションがよくないまま代表の試合に出るのは、(ナショナルチームはもちろん)スピアーズにとってもよくない。それで決断しました」

 国内で応援することとなった秋の海外遠征では、故障者が続出。厳しい台所事情ながらジョージア代表との最終戦を制した様子を見て、「…日本の、誇りだと思います」。決意を新たにした。

「代表の皆さんの活躍を見て、そこに戻りたいと感じました。そのためにはスピアーズで活躍しなければいけないです」

 復調後はスピアーズのグラウンドで居残り練習を重ねながら、体調管理にも尽力する。

 週の前半から半ばのうちにサウナへ出かけて体内を浄化。汗を流す分だけ、水分摂取も怠らない。

 寝るのも重んじる。夜に「7~8時間」ほど眠るうえ、意図的に昼寝もする。

 おかげでリーグワンのゲームに出られる状態を保ち、主力格として渋く光った。スクラムと守りに進歩を感じる。

「タックルはしっかり決められ、ミスなくできていると感じます」

 今度ぶつかるワイルドナイツとは縁がある。学生ラグビー界きっての注目選手だった近大時代、自身をスカウトしてくれた複数のクラブのひとつがワイルドナイツだった。

 当時、採用に携わったのは、OBで現帝京大監督の相馬朋和氏である。その頃の拠点だった群馬県太田市に関する手作りのガイドマップを渡すなどし、北関東に馴染みの薄い選手へも思いを伝えた。

 結果的に採用には至らなかったが、代表選手となった紙森を今でも応援しているのだと相馬は強調する。

 スピアーズ入りを決めた紙森に決断のわけを聞いた際、自分達を傷つけない理由を伝えてくれたのが嬉しかったという。

 概ねこの内容だ。

<クボタの方にごちそうしてもらったステーキが、おいしかったのです>

 時を経て、紙森その人は「何か、そんな感じのことは、言いました」と否定せず。改めて、複数ある選択肢のうちスピアーズに惹かれた点を問われれば、他と比較するつもりはないとしてこのように伝える。

「(スピアーズは)ファミリー感があり、気持ちよくラグビーができると思った。そこが、決め手になったところです」

 仲間が一丸となれる環境のもと、異なる特徴の名手と一丸となってスクラムを作る。

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