復帰後初先発の試合で、自分よりも17センチ、20キロも大きな相手に突き刺さった。
5月2日、東京・秩父宮ラグビー場。東芝ブレイブルーパス東京の眞野泰地は、目下2連覇中であるジャパンラグビーリーグワン1部のレギュラーシーズン第17節に先発していた。主戦場のインサイドCTBを託されていた。
後半22分のことだった。自陣ゴール前右中間で、対する静岡ブルーレヴズのセミ・ラドラドラを待ち構えた。足元へ絡みついた。フィジー代表21キャップのランナーを転ばせ、反則を誘った。
笛が鳴り、プレーが途切れたところで、身長173センチ、体重90キロの28歳は微笑んだ。心境はこうだ。
「楽しかったですね。まっすぐ来てくれるんや、スペースもうちょいあるのに…っていう。(ラドラドラは)その前に1回、タックルで止めていた。その後、意地になったのかわからないですけど、本気になってくれたような。嬉しかったです」
試合は35-29で勝った。一時は7連敗も、何とか上位6傑に入ってプレーオフ行きを決めた。もともとあった、フィジカリティへのこだわりを強めた。何より、長らく戦列を離れていた主力が躍動したことも大きかった。
果敢なファイトのみならず、絶妙なライン制御、空間をえぐるパスでも目立っている。渋く光る元東海大主将は、同じ大学出身のリーチ マイケル主将に復帰を喜ばれている。
「彼が復帰してからチームの調子が上がった。ワークレートの高さ、タフさ…。頼りになっています」
舞台に立てるようになるのに時間がかかった。今季開幕節で頭を打ち、第16節でリザーブ入りするまでフィールドを離れた。かねて脳震盪に悩んだ過去があり、復帰には慎重を期した。
「初期の1~2カ月は何もできなかった。ランニング6本まではいけるけど、7本にしたら症状が出るから『2歩』戻って…と難しかったです」
その間チームも苦しんでもいた。黒星を重ねる仲間を傍で見て、もどかしさを抱えていた。
「耐えるしかなかったです。どうすることもできない、と。早く復帰したい気持ちと、いま復帰してしまっては…という気持ちのせめぎ合いがあり、我慢していました」
プレーできないうちはラグビーの映像とも距離を置いたり、落ち込む自分を客観視することで「沼に入る」のを防いだり。葛藤と向き合ってきた。
「楽しいこと、ポジティブなことを考える。朝起きて日光を浴びるとか、ちょっと散歩するとか、そういうのが、大事でした。ちょっとずつ心と身体を元気にして、戻っていく」
第16節で問題なくプレーできたことで、「脳が、OKとなるんです」。そのスイッチを、ラドラドラへの一撃に繋げた。
「いまは、自信を持ってできます」
トッド・ブラックアダーヘッドコーチは、今度のゲームのCTB陣では眞野とロブ・トンプソンをスターターに立て、ベンチにはニュージーランド代表経験者のセタ・タマニバルを据えた。「火力のあるCTBが揃っている」とし、当日の12番にはこんな賛辞も送った。
「眞野はタフな選手でワークレートが高い。サイズは大きくないが、一番大きい選手であるかのように堂々とプレーする。スキルもある。負けず嫌いでもある」
