暑い日が増えた。前髪が伸びてきて鬱陶しいが、それを整髪料でセットするのは面倒だ。編み込んで、後ろに束ねてしまおう。
最近、ヘアをアレンジしたのはそう思ったからだとテビタ・タタフは笑う。話をしたのは5月21日。在籍する東京サントリーサンゴリアスがジャパンラグビーリーグワンのプレーオフに参加する2日前のことだ。
23日に東京・秩父宮ラグビー場である準々決勝に、10代でトンガから来日の30歳はNO8で先発する。リコーブラックラムズ東京との80分へ意気込む。
「負けたら終わり。今週のフォーカスは次の試合。しっかり勝てるようにしたい。フィシカリティのところ、出していきたいと思います。特にボールキャリー(突進)、タックルで、頑張りたいです」
外見のみならず戦いざまも変わった。ひとつひとつのプレーのインパクトはそのままに、局面に加わる回数が変わったような。
レギュラーシーズンの第13節を最後にしばらく試合のメンバーから外れ、トリプルSと呼ばれる控え組に回った。
小野晃征ヘッドコーチは、公式で身長183センチ、体重119キロの突破役が本調子ではないと見た。その状態でもなおパワフルだったが、目先のゲインライン、目先のトライに囚われずに判断した。
周りの若手が伸びているのを踏まえ、多くのFW第3列のメンバーに実戦経験を与えて選手層を拡大。その間、フランスでのプレー経験があるハードヒッターがバージョンアップするのを指揮官は待った。タタフ自身の述懐。
「自分のキャリーのところが思っているよりも出てこない(と告げられた)。トリプルSに入った時は落ち込むんじゃなく、しっかり準備する(時間だと捉える)」
第17節でカムバックした。2日、愛知・パロマ瑞穂ラグビー場でスターターを担った。まだプレーオフ行きの可能性があったトヨタヴェルヴリッツに挑み、両軍2位となる18タックルを記録したうえ強烈さも示した。54-38で8勝目を掴んで6位以内を確定させ、最終節も制して今度の舞台に立つ。
’24年以来となる代表復帰への思いをたぎらせながら、まずはリーグワン創設後初の日本一をにらむ。
「ここでいいパフォーマンスを出したら、(代表に)呼ばれる。いまはいいプレーをして優勝できるよう、頑張りたいです」
取材対応の直前まで、都内のグラウンドで実戦練習に臨んでいた。
雨天下の試合形式セッションは激しく、トリプルSにいたNO8のパトリック・ヴァカタは攻めては何度も前に出た。守っても走者に圧をかけた。実質1年目にして第6節から計6試合に出た23歳は、身長189センチ、体重115キロの体躯でレギュラー組を苦しめた。
右PRで移籍1年目、竹内柊平の表現が興味深い。
「リーグワンなのに、留学生がいる。日本航空石川高のパトリック・ヴァカタが、天理大のパトリック・ヴァカタが、そのままいる。それは本当に凄いですし、頼もしいです」
ヴァカタが出身の高校、大学の舞台で周りの日本人学生を蹴散らしてきたように、各国代表の集うリーグワンのチームでも他者を凌駕していると言いたげだ。
その圧倒的な存在感を外部の人間に讃えられた当の本人は「いえ。そんなことないです」と謙遜し、軽装に着替えて電動自転車でグラウンドを後にした。
その後オンライン会見に出た小野は、この趣旨を話す。
「シーズンを通して色んな選手が手を挙げてきた。今回は、誰を(メンバーに)選ぶかより、誰を外すかのほうが難しかったです」
