ジャパンラグビーリーグワン1部で初年度以来の日本一を目指す埼玉パナソニックワイルドナイツにあって、実質1年目のランナーが頭角を現している。
モーリス・マークス。身長180センチ、体重90キロの25歳だ。
実質1年目の今季は国内リーグワン1部にあって開幕節でデビューを果たし、15戦でプレーした。端側のWTBのほかCTBも託され、時間を追うほどに持ち味の健脚を披露できるようになった。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイと32-30と接戦を演じた第11節では、ビハインドを負う終盤に好走。続く第12節では、リコーブラックラムズ東京から自身初を含む2トライを奪い31-7で勝った。
さらに第13節でも、東京サントリーサンゴリアスを相手に強みを発揮した。一時10点差をつけられながらも、31-34とにじり寄って迎えた後半37分。中盤の混とん状態を軽やかに通過した。その後の展開から向こうの反則を引き出し、36-34と劇的な勝利に喜んだ。
日ごとに存在感が増す。12チーム中2位で終えるレギュラーシーズンのさなか、こう笑みを浮かべた。
「ここまでいいシーズンを過ごせています。スピードには自信を持っています」
いつから足が速いかと聞かれれば、「若い頃」。若者が語る「若い頃」ではっきりと自覚があるのは7歳あたりか。ラグビーと同時並行で陸上競技も楽しみ、100メートル走、200メートル走、走り幅跳びを専門にした。
出身は南アフリカ。ケープタウンの北側にあるマームズベリーに育った。ラグビー大国の生まれと会って友人も、父で息子と似た名前のモーレスさんも競技に親しんでいた。楕円球と出会うのは必然だった。
転機は19歳で迎えた。プロ選手になるべく代理人と電話で話していたら、「日本にチャンスがある」と聞いた。大学に通いながらプレーし、目指す道を進む選択肢を知った。
ちょうど隣にいた母親に「勉強も一緒にできるのなら」と強く勧められた。4月に20日になる’21年に来日。ワイルドナイツが川越市を交えて連携提携を結ぶ、東洋大のラグビー部の門を叩いた。
親元を離れるのには慣れていた。もともと在籍のヌートヒアヴェル高で寮暮らしだったからだ。
初めて訪れた異国の学校では、「日本人がどれくらい勤勉なのかを学びました。そして、それはあまり多くの人に知られていないだろうとも」。部員が自主的に共用施設を掃除するので知られるクラブにあって、ひとりひとりの練習への意欲に触れた。
「私の故郷では何回かパス、キックをしたところで帰宅することも。ただ日本の選手は2時間でも3時間でもトレーニングをします。私もハードワークするようになりました。大学にいるうちに、プロになる準備ができました」
大学の寮を出ても規則正しい生活を送っているとし、そうできる理由は学生時代に培った資質を挙げるのである。
ワイルドナイツでは、同じWTBでオーストラリア代表63キャップのマリカ・コロインベテの世話になる。自主練習でアドバイスをもらううえ、拠点までの送り迎えまでしてくれる。
「常に僕を助けてくれる。トレーニング後も残ってくれ、僕と一緒に動いてくれます」
堅守速攻のワイルドナイツでは、複数のスピードスターが生まれている。旧トップリーグ時代にトライ王2度の北川智規、日本代表としてワールドカップ日本大会などで躍動の福岡堅樹ら、韋駄天のOBが歴史を彩る。
その系譜を継ぎうるマークスは「チームに元気をもたらす」。31日の準決勝より参加予定となるリーグワンのプレーオフを制し、留学前からの目標である日本代表入りもにらむ。
