いるべきところに、いる。
34歳のブロディ・レタリックは、コベルコ神戸スティーラーズの共同主将だ。今年度のジャパンラグビーリーグワン1部にあって、縁の下を支えるLOのポジションながら17度もフィニッシュ。トライ王になった。
ゲームの流れを読み、突破する味方へタイミングよく並走。ラストパスをもらい、無人の空間を走り切る。
敵陣ゴール前での密集戦では、身長204センチ、体重120キロの大きな身体で勢いよく突っ込む。穴場へ肩や腕をねじ込む。
ニュージーランド代表109キャップ(代表戦出場数)を積み上げるまでのキャリア、ポテンシャルを、幾度となく得点に変換してきた。
身体をぶつけ合うFWの選手がこのタイトルを獲ったのは、現行のリーグワンでは初。旧トップリーグ時代までさかのぼっても、2015年度の安藤泰洋(当時トヨタ自動車/6トライ)が最後である。
「最高の気持ちです。チームが勝つことのほうが大事ですが」
このほど栄誉を勝ち取ったレタリックは「今季のトライ数は、(母国にある前所属先の)チーフスでのキャリアを通しての全部よりも多い」と笑い、仕留める秘訣を簡潔に語った。
いるべきところに、いる。
「正しいタイミングでボールが回ってきて、いい状態でトライが獲れている」
いるべきところに、いる。
それは下働きにおいても然りだ。
5月10日に東京・スピアーズえどりくフィールドであったレギュラーシーズン最後の第18節では、パワフルなクボタスピアーズ船橋・東京ベイの攻めにタフに対抗した。
前半8分には自陣22メートル線付近左中間で、接点から中央方向へ折り返す攻めに対応。対するPRのオペティ・ヘルの突進へ鋭い出足で対抗し、背中と上腕の力で動きを止めた。9分にはトライラインを背に身長190センチ、体重127キロのヘルに刺さり、転ばせた。
10-14とリードされていた同29分にも、自陣のゴールポストの周りで抜け出そうとする走者へロータックル。その後に同僚が献身したのもあり、ピンチをしのいだ。
攻めてはオフロードパスに寄るチャンスメイク、接点での好援護によるペナルティーキック獲得で光った。
2点差を追う後半28分には、敵陣ゴール前左でラインアウトを確保。連続フェーズに繋げ、24-19と勝ち越した。
ノーサイド。シーズン16勝目を挙げ、プレイヤー・オブ・ザ・マッチにも輝いた。
イエローカードを2枚出すなど苦しんできた80分間を、こう総括する。
「我々がプレーの精度を欠いたことで腕相撲のような試合展開になってしまいました。特に最初の時間帯は、自分たちのせいでプレッシャー下に置かれました。ただ後半はずっとボールをキープでき、相手の崩れた瞬間にスコアできた。最後の最後まで我慢強くプレーして、勝ちを手繰り寄せられた。イエローカードが2枚出たことは理想的ではありませんが、そんななかでも相手を抑え込めた。チームメイトを誇りに思います」
攻守で図抜けた価値を示す戦士を、シーズン終了後からニュージーランド代表を率いるデイブ・レニーヘッドコーチはこう称賛する。
「毎週末の試合でのレタリックのパフォーマンスは、日々の練習でも見られます。行動で示す。素晴らしいアスリートで、優れたスキルセットを持っています。トライ王になったのは、彼が常に仕事をしてきたという努力による結果です」
12チーム中首位でリーグ戦を終えた。6傑が頂点を争うプレーオフへは、30日の東京・秩父宮ラグビー場での準決勝から参加する。4位の東京サントリーサンゴリアス、5位のリコーブラックラムズ東京による準々決勝の勝者を迎える。
‘18年度以来となる日本一を達成すればMVPの有力候補となりうる背番号4は、「自分たちの手でチャンピオンの座を掴みたい」と宣言した。
