20-79も0-0になる。
たとえ厳しい試合結果をつきつけられても、次戦はまっさらな状態で始められる。
気持ちを切り替えるこの思考法を、東京サントリーサンゴリアスの竹内柊平は学んでいた。指揮官の小野晃征に伝えられたのだ。
「0-0で始める。先制パンチをするだけだと思っています」
4月18日のジャパンラグビーリーグワン1部・第15節で、クボタスピアーズ船橋・東京ベイと対戦。12月27日の第3節で同カードを59点差で落としていたとあり、これまで約3か月半での積み上げをリベンジに昇華したい。
移籍したての右PRは、「プライド」と繰り返す。
「このチームにとって1番大事な試合と言っても過言じゃないと思います。ご存知の通り、前回は大差で負け。でも、(時間が経って)もうシーズンがラストブロックに来た。どれだけ成長したか(を表現したい)。スキル云々ではなく、プライドが問われます」
チームはレギュラーシーズン4試合を残して7勝7敗で勝ち点39を得て、12チーム中4位。プレーオフへ行ける6傑入りへ、4位から8位までが勝ち点10の差で詰まった激戦に挑む。
雪で流れた公式戦が休息週に実施された関係上、前節まで異例の8連戦を切り抜けたばかり。シーズンが佳境に突入するなか、ヘッドコーチの小野は今度のスピアーズ戦へ視線を向ける。
「プレーオフを確定させないとだめ。自分たちでコントロールできる状況にはある。前回(のスピアーズ戦)は自分たちのスピリッツが試されました。(直後は)ここをターニングポイントにしようと話していた。毎週、成長してきたのを(示して)結果を残したいです」
向こうは、相手走者を掴み上げる大型FWの守りが特徴だ。それに対してサンゴリアスは、平時の練習から低い姿勢でのコンタクトとサポートを意識する。
セレクションでは全体心理が考慮された。身体をぶつけ合うFW第3列へパトリック・ヴァカタら若手が先発。ニュージーランド代表104キャップのサム・ケイン主将、オーストラリア代表27キャップのショーン・マクマーンといったキャリア組はリザーブで待つ。
「自分たちの強みを出しながら、相手の強みを消すメンバーを選びました。元気なスターターがロースコアに持ち込み、経験のあるフィニッシャーを出す」
小野は、スピアーズの注目選手に新加入でFBのショーン・スティーブンソンを挙げる。その心は「(最後尾の)FBからゲームをコントロールできる」。かたやサンゴリアスの試合運びにおいては、連続攻撃を命綱にしながら適宜足技も使う。1本のキックを放つまでに費やしたパスの数は、よい試合をした時ほど少ない傾向にある。
「その(ランとキックの)バランスはどの試合も重要。今週も自分たちのラグビーをするためにどのタイミングで(ボールを)手放すか(を共有している)。選手たちと一緒の絵を見ている」
そのあたりのかじ取りを、SOのケイレブ・トラスクに期待する。トラスクとともに攻めを司るSH、流大副将も「僕たちはアタックしたい。ボールを大事にする」としながらこうも頷く。
「いまのリーグにはディフェンスの強いチームが多い。スピアーズもディフェンスが堅い。ただ意図なくアタックする考えでいると、ミスやターンオーバーなど、相手のいい形で終わることになります。どこでボールを手放すか、仕掛けていくか(の判断)は大事にしています」
会場は熊本のえがお健康スタジアムだ。福岡県出身も熊本・荒尾高へ通った33歳は、今度の一戦へ九州の少年少女100名を無料招待するなど特別な思いを抱くが…。
「僕としてはこの1週間意識しているゲームではあります。ただ、その私情は挟まないように。チームを勝たせるための準備、そのためのプレーにフォーカスします」
16日の公開練習後、竹内は前を向いていた。
「練習の雰囲気はいいです。SSS(トリプルS)と呼ばれるノンメンバーも凄いコリジョン(衝突)をしてくれた。皆がこのゲームに出たいなか、出られるメンバーは23名。僕たちが、サンゴリアスのプライドを証明しないといけない」
